最低賃金の引き上げと人件費高騰が中小企業に及ぼす影響|確認すべき3つの数字

中小企業にとって、人件費を取り巻く環境は以前より厳しくなっています。まずは最低賃金の引き上げが挙げられます。2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、前年から56円の引き上げです。都道府県別には秋以降、順次新しい最低賃金が適用されます。
最低賃金の対象者だけでなく、既存社員の給与バランスを維持するために賃上げを検討する企業も増えています。
もう一つの要因は、人件費の上昇に対し企業の収益力が追いついていないことです。東京商工リサーチの調査によれば、2026年度上半期の「人手不足」を要因とする倒産は240件で、上半期として過去最多となりました。そのうち「人件費高騰」が要因の倒産は130件で、前年同期比75.6%増加しています。資本金1,000万円未満の企業が全体の66.2%を占め、小規模事業者ほど影響を受けやすい状況です。
財務コンサルティングの稲田財務は「賃上げそのものを避けることではなく、人件費が上がったあとでも利益とキャッシュを残せる会社になっているかを数字で確認することが重要」と指摘します。
以下では、賃上げが続く局面で中小企業経営者がチェックすべき3つの数字を整理します。
1. 人件費は粗利のどれくらいを占めているか(労働分配率)
まず確認したいのは、人件費が自社の粗利に対してどの程度の割合を占めているかです。人件費が高いだけでは問題ではなく、粗利に対する人件費の負担が大きいと利益が圧迫されやすくなります。中小企業では付加価値の近似として粗利を用いると分かりやすいため、現状の労働分配率を把握してください。
2. 人件費増加分を粗利で吸収できるか(価格転嫁と粗利率)
次に見るべきは、人件費の増加分をどのように吸収するかです。販売価格を上げるのか、仕入れや外注費を見直すのか、生産性を高めるのか、販売数量を増やすのか――これらの選択肢を検討し、増加分を確実に吸収できるかを見極めます。前年と同じ売上でも、人件費だけが増加すれば利益は減少します。したがって、単なる売上高の比較ではなく、必要な粗利を確保できる価格設定・収益構造になっているかを確認してください。
もし価格転嫁が必要であれば、いくら値上げすれば人件費増加分を吸収できるのかを具体的な数値で落とし込みます。
3. 人件費が増えたあと、どれだけの利益とキャッシュが残るか
最後に確認するとよいのは、賃上げ後の利益と資金繰りです。最低賴金だけでなく、既存社員との給与バランス調整や社会保険料の事業主負担を含めると、想定より人件費は増える可能性があります。たとえば年間の人件費が300万円増えるケースで、現在の営業利益が400万円しかないと、他の条件が変わらなければ利益の大半が消える恐れがあります。
加えて、利益が出ていても借入金の返済や税金、設備投資などで現預金が減少する場合もあります。そのため、以下の3点を順序立てて確認することが推奨されます。
・年間で人件費はいくら増えるのか
・その後、営業利益はいくら残るのか
・借入返済後にも現預金が残るのか
稲田財務は、最低賃金の引き上げを単なる「人件費の増加」としてみるのではなく、次の流れで捉えるべきだと提案します。
人件費増加額 → 必要な粗利 → 必要な売上・価格 → 最終的に残る利益とキャッシュ
「賃上げそのものが悪いわけではありません。人材を確保し、社員の生活を守るためにも必要な場面は増えています。ただし、企業が継続できなければ、賃金を払い続けることもできません」と稲田代表は語ります。
また、「最低賃金や人手不足は自社でコントロールできません。一方で、自社の粗利・人件費・利益・キャッシュは把握できます。まず自社の現在地を数字で確認し、そのうえで価格・人員・生産性・販売方法などの打ち手を考えることが重要です」と締めくくります。
稲田代表は、数字を見る目的を「賃上げを避けること」ではなく「賃上げを続けられる会社をつくること」と説明します。
会社概要
株式会社稲田財務(東京都大田区/代表:稲田裕/事業:中小企業向け財務コンサルティング)。
決算書を使わず約3分で自社の財務状態を確認できる無料診断「3分財務チェック」:https://inada-finance-health-check.vercel.app/ 会社詳細:https://inadazaimu.jp/ お問い合わせ:info-ifl@inadazaimu.jp
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出典
- 2026年度地域別最低賃金:全国加重平均1,177円、前年度比56円引き上げ。厚生労働省「地域別最低賃金」関連資料
- 2026年度上半期「人手不足」倒産240件、うち「人件費高騰」130件・前年同期比75.6%増、資本金1,000万円未満66.2%。東京商工リサーチ「2026年度上半期『人手不足』倒産」2026年10月5日。
出典:【最低賃金、全国平均1,177円】人件費高騰による倒産が約1.7倍—中小企業が今、確認すべき「3つの数字」/株式会社稲田財務/2026年11月2日



