TIGEREYE、未来の状態と次の一手を予測する独自AIモデル「HSI」を開発 中核技術の特許を出願

TIGEREYE、未来の状態と次の一手を予測する独自AIモデル「HSI」を開発 中核技術の特許を出願

マーチャント・バンカーズ株式会社の関連会社である株式会社TIGEREYEは、独自のAIモデル「Hierarchical State Intelligence(HSI:階層型状態知能)」を開発し、その中核技術について特許を出願しました。HSIは、現在の状況、過去の経験、目標、行動履歴などをもとに、将来の状態がどう変化するか、そして次にどの行動を取るべきかを予測するモデルです。今回の特許出願により、同社が独自に研究開発を進めるAIモデルの中核技術を知的財産として保護し、将来の事業展開に向けた技術基盤を強化します。

TIGEREYE、未来の状態と次の一手を予測する独自AIモデル「HSI」を開発 中核技術の特許を出願

「言葉の予測」ではなく「状態の変化」を学ぶAI

大規模言語モデル(LLM)は、主に次に続く単語や文章を予測する学習によって発展してきました。HSIはこれとは異なるアプローチを採用しています。「状態(State)」「行動(Action)」「次状態(Next State)」の関係を学習の中心に置き、状況の変化や行動の結果を予測しながら、目標に沿った意思決定を支援することを目指すAIアーキテクチャです。

開発の背景には、現実の社会や企業活動では、情報を生成するだけでなく、変化し続ける状況を把握し、過去の経験を踏まえて未来を予測し、適切な行動を選ぶことが求められるという課題があります。たとえば企業のプロジェクトで遅延が発生した場合、原因を分析・説明するだけでは解決にはつながりません。現在の進捗、担当者の配置、期限、過去の対応履歴、組織全体の目標などを総合的に捉え、どの行動を選べば状況が改善する可能性が高いのかを判断する必要があります。また、短期的には合理的な行動でも、長期的には新たなリスクを生んだり、組織全体の目標と矛盾したりする場合もあります。

なお、HSIはLLMを単純に置き換えることを目的としたものではありません。言語生成とは異なる学習目的を持つAIモデルとして、将来的には既存のAI技術との連携も視野に入れ、状況に応じて予測・判断を支援するAIシステムの高度化を目指しています。

HSIを支える3つの中核技術と「経験学習」

状態・行動・目標を多層的に扱う仕組み

HSIは、次の3つの技術を中核として構成されています。

  • State Learning:現在の状態を構成する複数の情報を内部表現に変換し、情報同士の関係性を学習する技術。業務の進捗、優先度、担当者、期限、過去の対応回数などが将来の状態にどう影響するかを、行動と次状態の予測誤差を利用して学習します。情報間の結合関係を人間が正解として直接指定しなくても、予測に有用な関係性をモデル内部に形成できる点が特徴です。
  • State Transition Prediction:現在の状態から次に取られる行動と、それに伴って生じる次の状態を予測する技術。複数の行動候補について将来の状態変化をシミュレーションし、報酬、リスク、制約条件、将来価値などを評価する構成を備えています。業務の優先順位を変更する場合に、直後の作業効率だけでなく、他の工程への影響や将来的なリスクなども考慮した行動選択を支援することを想定しています。
  • Hierarchical Intelligence:抽象度の異なる目標、状態、行動を階層的に扱う技術。企業の経営目標、プロジェクトの目標、個別タスク、実際の行動をそれぞれ別の階層として表現し、階層間の整合性を評価します。整合度の変化を分析することで、目標からの逸脱、業務の停滞、失敗の兆候などを捉え、必要に応じて警告や行動変更につなげることが可能な設計です。

「似ているか」だけでなく「役立つか」で過去を選ぶ

HSIには、状態遷移予測や階層型意思決定に加え、過去の経験を将来の予測に活用する仕組みも取り入れられています。従来の情報検索では、現在の状況と過去の情報との類似性が重視される場合があります。しかし現実の意思決定では、似た状況が過去にあったとしても、そのとき取った行動や結果、発生した時期、周囲の条件などによって参考にすべき経験は異なります。HSIでは、経験の内容だけでなく、因果的な関連度、時間的な近接度、過去の行動結果などを考慮し、現在の状態に対して有用な経験を活用することを目指しています。

現在は研究開発段階、幅広い産業への応用を目指す

TIGEREYEは、HSIの中核技術について、合成データおよび実際のソフトウェア開発履歴を活用した基礎検証を進めています。これまでに、状態情報間の関係性の学習、行動と次状態の予測、過去の経験を活用した予測、異なる階層間の整合性評価など、主要な機能の検証を実施してきました。一方で、HSIは現在研究開発段階にあり、実際の産業環境における性能や汎用性についてはさらなる検証が必要とされています。今後は、多様な実データを用いた検証、学習能力や予測性能の向上、異なる業務環境への適応などを進め、実用化に向けた研究開発を続ける方針です。

同社はHSIを、特定用途に限定したAIアプリケーションではなく、さまざまな産業分野に応用できる共通のAIモデル技術として発展させることを目指しています。想定している応用領域は次のとおりです。

  • 自律型AIエージェント:状況の変化や過去の経験を踏まえ、目標に沿った行動選択を支援するAI
  • 企業の業務自動化:進捗、リスク、組織全体の目標を考慮した業務判断の高度化
  • 製造分野:設備や工程の状態変化を予測し、生産管理や運用判断を支援する技術
  • 医療分野:状態の変化や履歴情報を活用した医療従事者の判断支援技術
  • セキュリティ分野:状況変化や異常兆候を踏まえたリスク評価と対応判断の支援
  • ロボティクス分野:環境状態と行動結果の予測に基づく動作計画や行動選択への応用

社会実装に向けては、独自AIプラットフォーム「NERVA」との連携や、顧客の現場に入り込み課題発見から開発、導入、定着までを一貫して支援する「Forward Deployed Engineering(FDE)」による企業への導入支援を通じて、研究成果の産業実装を進めるとしています。さらに、独自AIモデルのライセンス提供、API提供、産業別モデルへの展開など、AIモデルを中核とした新たな事業モデルの構築も検討していくとのことです。

出典:マーチャントバンカーズ株式会社