XR技術や3D空間データを手がける株式会社ホロラボ(本社:東京都品川区、代表取締役:中村 薫)は、神奈川県藤沢市の江島神社(宮司:相原圀彦)が所蔵する「八臂弁財天像」と「妙音弁財天像」の2体について、3Dスキャン計測を実施しました。計測では、クモノスコーポレーション株式会社(大阪府箕面市、代表取締役:中庭 和秀)のスキャン技術と、Artec 3D(Artec Europe S.à r.l. 本社:ルクセンブルク セナンゲルベル、CEO:アルチョム・ユーヒン)の機材・ソフトウェアを活用し、2体の御像を3Dデータとして残しています。

「まず記録することが大事」という宮司の思いから始動
取り組みのきっかけは、江島神社の宮司・相原圀彦氏の「まず記録することが大事」という意向でした。将来を見据え、像をデジタルで記録しておくこと自体に意味があるという考えに、ホロラボ、クモノス、Artec 3Dの3社が賛同し、計測が実現しました。
相原氏は、両像が鎌倉期の作で800年程が経過しており、数百年先を見据えると現在の保存状態を保つことは極めて困難だとしています。そのうえで、文化財専門の諸先生の意見をふまえ、3Dスキャンでデータ保存しておくことで、いかなる場合でも対処できるようになることは大変意義あることだとコメントしています。
今回のデータは、10月31日開催の『XRミートアップ文化財 #5 in伊勢』で展示される予定です。

2種類のスキャナーとミラーレス一眼を組み合わせて計測
計測に使われたのは、Artec製の3Dスキャナー2機種とミラーレス一眼です。クモノスとArtec 3Dの担当者が、ハンドヘルド型で中〜大型物向けの「Artec Leo」を使って2体それぞれの全体形状を計測。さらに高精細スキャン向けの「Artec Spider II」で細部の形状を追加で計測しました。一方、ホロラボの担当者はミラーレス一眼による撮影を担当しています。2機種を併用することで、台座や装飾品まで含めた詳細な3Dデータが記録されました。
- ホロラボ:プロジェクトの企画・調整、ミラーレス一眼による撮影、データ後処理
- クモノスコーポレーション:Artec Leo/Spider IIによるスキャン計測、技術的サポート
- Artec 3D:スキャナー機材、Artec Leo/Spider IIによるスキャン計測、技術的サポート

計測後のデータ処理は3つの工程で
位置合わせと統合、欠損箇所はあえて残す
Artec Leoで取得した全体形状と、Artec Spider IIで取得した細部の形状は、それぞれ別のデータとして存在します。これらを位置合わせし、1体の像としてひとつのメッシュに統合しました。今回は、現物そのものをデータ化するにあたって、加工を施さず、あえて穴を塞がない状態(非水密)のデータを扱っています。台座の裏側や衣の裾など、スキャナーの死角になって計測できなかった箇所をそのまま残すことで、文化財の記録としてどこが実測でどこが補完なのかを後から判別できるようにしています。Artec StudioとCloudCompareで点群とメッシュの両方を確認し、欠損箇所を一点ずつ洗い出したうえで、補完するか記録として残すかを判断しました。なお、Artec Studioの活用は、ホロラボがこれまで取り組んできた空間スキャンや文化財のデジタルアーカイブをさらに強化するものになるとしています。
写真を投影して色と質感を再現
形状データだけでは、彩色や金箔、木肌の風合いまでは残せません。そこで、計測当日にホロラボがミラーレス一眼で撮影した写真を形状データに投影するフォトテクスチャリングを行い、実物の色と質感を再現しました。
本体・台座・装飾品を分割して記録
像は本体、台座、装飾品に分けて記録されています。八臂弁財天像では、冠、光背、弓、戟、剣、宝輪、胸飾りなど13点の持物・装飾品を個別データとして扱い、妙音弁財天像では琵琶と撥を単体で切り出しました。全身のデータでは見えにくい部分も、単体にすることで手元で自由に観察できます。

専門家とともにデータの取り扱い方針を策定
デジタルデータの扱いについては、公立小松大学 特任准教授の野口淳氏、明治大学兼任講師の荒井秀規氏、神奈川県立歴史博物館 主任学芸員の神野祐太氏の3名の協力を得て、学術的な観点を含めた取り扱い方針が策定されました。
出典:ホロラボ



