株式会社イオレは、WOODMAN株式会社と共同で、外部ネットワークとの接続を制限した「閉域エッジ基盤」の概念実証(PoC)を実施します。サイバー攻撃や外部サービスの障害が起きても、現場で重要な業務を続けられるようにするための備えです。WOODMANは、イオレが今年11月末に完全子会社化を予定している企業です。あわせて、PoCに参加する事業者とセキュリティパートナーの募集も始まりました。
「閉域エッジ基盤」とは、インターネットなどの外部ネットワークとの接続を制限し、許可した経路だけで通信する環境(閉域)に置かれる計算基盤です。利用する現場の近く(エッジ)で運用します。今回のPoCでは、重要な業務処理とデータを、閉域網の中で現場の近くに置いて運用する仕組みを検証します。対象は、病院、製造、物流など、業務が止まると社会に大きな影響が出る領域です。役割分担は、イオレが企画運営、WOODMANが液浸冷却ソリューション「IMMERSIA EDGE(イマーシア・エッジ)」とGPUサーバーの提供です。

「侵入されても止まらない」備えが求められる背景
生成AIの急速な普及は企業活動を高度化させています。その一方で、サイバー攻撃でもAIを使った手法の高度化や自動化が進むことが懸念されています。侵入口は、外部接続機器の脆弱性から委託先の保守用接続まで多岐にわたり、侵入を完全に防ぐことは難しくなっています。そのため、侵入を防ぐ基本的な対策に加えて、「侵入されても被害を広げず、必要な業務を止めにくくし、早く復旧できる備え」の重要性が高まっています。
その有効な手段の一つが、外部との接続を必要な経路に限る閉域の構成です。侵入経路を減らし、権限と通信に境界を設けることで、一つの侵害がシステム全体に及ぶ可能性を軽減できます。また、外部サービスや中核システムが停止した場合も、必要な処理とデータを現場で動かし続けられます。
イオレは、AI推論向けGPUサーバーの販売や、AIデータセンターの開発・開発支援・投資を行う「AIインフラストラクチャー事業」を中核としています。パートナー企業とともに、災害へのレジリエンス強化や電力負荷の分散を目的とした全国分散型AIデータセンターネットワークの構築も進めています。この考え方を災害対策だけでなくセキュリティ対策にも広げたのが、今回の「閉域エッジ基盤」です。機密情報や個人情報を外部に送らずにAIを使いたいという、自社専用GPU環境へのニーズに応えることを狙っています。
ただし、GPUサーバーは発熱が大きく、空調や設置スペースが必要です。そのため大規模なデータセンター以外には置きにくく、閉域で計算基盤を運用する際の課題となってきました。そこでイオレは、設置場所の制約を抑えられると期待されるWOODMANの「IMMERSIA EDGE」を活用します。液浸冷却は、電気を通さない液体にサーバーを浸して冷やす方式で、空調を使う従来の空冷方式より冷却効率が高く、発熱の大きいGPUサーバーの冷却に適しています。PoCでは、技術的な実現可能性に加えて、実際の導入に必要な構成、運用体制、コスト、導入期間なども整理します。さらに、認証・権限管理、脆弱性管理、監視、バックアップ・復旧などを組み合わせた多層的なソリューションについて、実用化に向けた標準モデルの確立を目指します。
4つの観点で検証、参加事業者とセキュリティパートナーを募集
PoCでは、参加事業者ごとに既存システムと業務のつながりを確認し、現場で続けるべき処理とデータを明確にします。そのうえで、次の観点から検証する予定です。
- 業務の遂行:閉域環境で完結できる業務とデータの範囲
- 業務継続と復旧:外部接続や中核システムの停止を想定した、業務継続・復旧の手順と所要時間
- 被害・障害の拡大防止:接続経路・認証・権限の設計による侵入経路の削減と、不正アクセス発生時の影響範囲の限定
- 現場への設置・運用条件:液浸冷却ソリューションを用いた設置環境、保守、運用コスト、AI処理に必要な処理能力
参加事業者の募集対象は、病院、製造、物流など、業務の停止が社会や事業に大きな影響を及ぼす領域の事業者です。準備が整った事業者から順次実施します。内容は、対象業務の選定、「閉域エッジ基盤」の構成設計、検証環境での運用・評価に関するソリューションの共同開発・提供です。対象業務・環境・期間は、個別に協議したうえで決まります。
セキュリティパートナーは、PoCの成果を業種や現場に合わせて導入できるソリューションに発展させるための協業先です。対象は、セキュリティ診断、脆弱性管理、認証・権限設計、監視・インシデント対応、バックアップ・復旧などに専門性を持つ企業です。協業内容には、これらの業務に加えて、AIを活用した異常検知や脆弱性情報の分析が挙げられています。参加事業者、セキュリティパートナーともに、イオレの問い合わせ窓口で相談を受け付けています。
現場に置ける液浸冷却「IMMERSIA EDGE」と今後の展開
「IMMERSIA(イマーシア)」は、年間1,000台以上のGPUサーバーを取り扱う実績を持つWOODMANが手がける次世代液浸冷却ブランドです。研究室・工場・病院などへの省スペース設置に対応するオールインワン筐体「IMMERSIA EDGE(4Uタイプ)」と、大規模データセンター向けの「IMMERSIA DC」をラインナップしています。冷凍機(チラー)が不要で、静音設計と省エネ性能を特長としています。GPUの動作保証や最大10年の保守体制に加え、パートナー企業とのオイル供給連携による運用環境も用意されています。
イオレは、PoCで得た知見をもとに、業種や利用環境に応じた「閉域エッジ基盤」の導入・運用モデルを確立するとしています。検証結果は、参加事業者の同意を得た範囲で公表する予定です。今後は全国分散型AIデータセンターに加え、現場に置くエッジ基盤まで含めて計算力を提供し、病院・工場・物流など社会を支える重要な業務が、侵入されても止まりにくく、早く復旧できる環境づくりに貢献する方針です。AIインフラが電気・ガス・水道と同じく社会に不可欠な基盤となる中で、持続可能で信頼性の高いAIインフラの提供を目指すとしています。
出典:株式会社イオレ



