日本国内で発見された「緑の宝石」
法政大学や大阪工業大学、東京大学大気海洋研究所などの研究グループは、日本国内の3ヶ所(埼玉県、大阪府、山口県)から、これまで日本での報告がなかった2mmを超える大型のボルボックスを採取しました。詳細な解析の結果、このボルボックスは未記載の新種であることが判明し、「ヒスイボルボックス(学名:Volvox chrysoprasus sp. nov.)」として新種記載されました。

ヒスイボルボックスとは?
ボルボックスは、多数の細胞が球状に集まって形成される「多細胞性」の緑藻類(りょくそうるい)の一種です。今回発見されたヒスイボルボックスは、成熟すると最大で約2.8mmという非常に大きなサイズに達します。その姿は、透明感のある緑色の球体をしており、まるで「緑の宝石」のようです。

一見すると、タイやインドなどの南アジアで報告されている近縁種「Volvox dissipatrix」と非常によく似ていますが、研究チームは以下の点から別種であることを突き止めました。
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接合子の構造の違い: 有性生殖(オスとメスの細胞が結合して増えること)の際に形成される「接合子(受精卵)」の壁の構造や、その周囲を包むゼラチン質の層の厚みに明瞭な違いがありました。
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分子系統学的解析: 葉緑体や核のDNAを解析した結果、既知種とは異なる系統であることが示されました。

なぜこの発見が重要なの?
ボルボックスは、細胞がどのように分化(特定の役割を持つ細胞に変化すること)するか、あるいは多細胞生物がどのように進化してきたかを研究するための「モデル生物」として古くから親しまれてきました。
今回の発見は、単に「新しい生物が見つかった」というだけでなく、現在のボルボックスの分類体系を再検討するきっかけとなります。現在「ボルボックス」と呼ばれているグループは、遺伝的に一つのまとまりではない可能性があり、今回のヒスイボルボックスの記載は、生物の多様性や進化の過程を理解するための新たな手がかりとなるでしょう。

研究のこれから
本研究の成果は、2026年9月16日付で国際的な藻類学会誌『Phycologia』に掲載されました。研究グループは、今回発見された美しいヒスイボルボックスを通じて、水中で命をつなぐ生物たちの営みに触れ、その進化の神秘に迫ろうとしています。

私たちが普段何気なく見過ごしている水辺にも、まだ名前のない美しい命が息づいているかもしれません。ヒスイボルボックスの発見は、身近な自然環境の中に眠る未知の生物の多様性を教えてくれています。
論文の詳細については、以下のURLをご参照ください。

