ウェアラブルデバイス市場、2035年には約6兆ドル規模へ急成長!AIと医療が牽引する未来

ウェアラブルデバイス市場が描く未来:2035年には約6兆ドル規模へ

私たちの身近な存在となりつつある「ウェアラブルデバイス」(身体に装着して使う電子機器)。スマートウォッチや活動量計といったおなじみの製品から、最近ではスマートリングや医療用パッチといった新しい形のデバイスも登場しています。このウェアラブルデバイス市場は、現在も急速に成長を続けており、レポートオーシャン株式会社の調査によると、2025年には1兆760億米ドルだった市場規模が、2035年には5兆9791億米ドルに達すると予測されています。これは、2026年から2035年までの10年間で年平均成長率(CAGR)18.7%という、目覚ましい成長を意味します。

この大きな成長を支えるのは、AI(人工知能)の進化、医療分野での応用拡大、そしてデバイスそのものの多様化です。単に歩数を数えるだけでなく、私たちの健康状態や周囲の環境を継続的に把握し、よりパーソナルな情報を提供してくれる情報基盤へと進化しているのです。

AIが変えるウェアラブルの価値:記録から「予測」へ

ウェアラブルデバイスが提供する価値は、これまで単に心拍数や歩数などのデータを「記録」し「表示」することが中心でした。しかし、AI(人工知能:人間の知能を模倣し、データから学習して推論や判断を行うコンピューターシステム)の進化により、この状況は大きく変わろうとしています。

AIは、ウェアラブルデバイスが収集する心拍数、血中酸素濃度、睡眠の質、皮膚温度、呼吸、運動量、ストレスといった多岐にわたる生体データを統合し、個々の利用者に合わせた傾向を分析できるようになりました。これにより、次の世代のウェアラブルデバイスは、単なる測定結果の表示にとどまらず、日々のデータの変化から利用者に休養、運動、睡眠、体調管理に関する具体的な行動提案を行う「予測型」へと進化しています。例えば、「今夜は早めに休むと、明日のパフォーマンスが向上するでしょう」といった、より実践的なアドバイスが期待できるようになるでしょう。これは、受動的な測定から、病気の予防や健康的な生活を積極的に支援するシステムへの大きな転換点となります。

医療分野での応用拡大:私たちの健康をより身近に

ウェアラブルデバイスは、個人の健康維持を目的とした一般消費者向け機器と、診断や治療支援を目的とする医療機器との境界線を急速に埋めています。米国食品医薬品局(FDA)がスマートウォッチ、リング、パッチなどセンサーを利用したデジタルヘルス機器の認可を進めていることからも、ウェアラブル技術が医療システムに組み込まれる基盤が整備されつつあることがわかります。

例えば、2025年には、腕に装着するだけでカフ(腕に巻く帯)を使わずに血圧を測定できる機器が米国で一般向け販売の認可を取得し、2026年には市場に投入される計画です。これは、心電図、不整脈、睡眠障害、糖尿病管理など、さまざまな医療分野でウェアラブルデバイスが活用される可能性を広げます。将来的には、デバイスメーカー、医療機関、保険会社、製薬企業が連携し、より高度なヘルスケアサービスが提供されることが予想されます。

新しい装着スタイル:スマートリングと医療用パッチの台頭

これまでウェアラブルデバイスといえば腕時計型が主流でしたが、今後はスマートリングや医療用パッチといった新しい形態のデバイスが注目を集めています。

  • スマートリング: 画面を持たず小型で長時間装着できるスマートリングは、指に装着するため目立たず、睡眠、心拍、皮膚温度、回復状態などを継続的に測定するのに適しています。指は血管や神経が集まるため、高精度な生体情報測定が可能です。2025年には世界出荷台数が400万台を超えると予測されており、すでに実用化が進んでいます。手の動作認識や機器操作への応用も研究されており、今後の進化が期待されます。

  • 医療用パッチ: 身体に直接貼付するタイプの医療用パッチも、その存在感を高めています。特定の生体情報を継続的にモニタリングする用途で、すでに実用化されています。

今後は、腕時計、リング、パッチ、眼鏡型端末など、用途に合わせて複数のデバイスを使い分ける「複数端末型」の利用が広がるでしょう。

個人利用から法人利用へ:広がるウェアラブルの活躍の場

ウェアラブルデバイスの需要は、個人の健康管理に留まらず、製造、物流、建設、防衛、小売といった多様な産業分野にも広がっています。

  • 製造現場: 作業員の姿勢、疲労、体温、危険区域への接近を把握する装着型センサーが導入され、安全管理や効率向上に貢献しています。

  • 物流: 視線や音声によって作業を支援するスマートグラスが活用され、作業効率の向上に役立っています。

  • 建設現場: 転倒や熱中症の危険を検知する安全管理機器が導入されています。

  • 小売業: 在庫確認や遠隔接客にウェアラブルデバイスが利用されています。

  • 防衛・航空分野: 状況認識や訓練支援に活用されています。

  • スポーツ分野: 動作解析や負荷管理に役立てられています。

特にスマートグラスは、AI、拡張現実(AR:現実世界に仮想情報を重ねて表示する技術)、音声操作を組み合わせた「手を使わない情報端末」として注目されており、今後、法人市場でのさらなる普及が期待されます。

技術の進化が支える未来:小型化、長時間駆動、常時接続

ウェアラブルデバイスの快適な装着感と高精度な測定を支えるのは、センサーの小型化、低消費電力半導体、柔軟な電子回路、高密度電池、無線通信技術といった部品技術と通信基盤の進歩です。これにより、軽量性、長いバッテリー寿命、防水性能、そして装着時の違和感の少なさが実現され、ユーザー体験が大幅に向上しています。

また、デバイス内でAI処理を行う「エッジAI」技術の進展により、すべての生体情報を外部に送信することなく分析できるようになれば、応答速度の向上と個人情報保護の両面で大きなメリットが生まれます。

一方で、複数の機器やアプリ間でのデータ形式の不統一、電池交換や廃棄による環境負荷、低価格製品の測定品質、そして継続利用率の低下といった課題も存在します。メーカーには、単なる部品性能だけでなく、利用者が継続的に価値を感じられるようなサービス設計が求められています。

競争の焦点は端末販売からデータ、予防医療、継続サービスへ

2035年に約6兆米ドルという巨大市場へと成長が予測されるウェアラブルデバイス市場では、単に端末の販売台数を競うだけでは持続的な優位性を確保することが難しくなると考えられます。将来の市場では、測定データをどのように解析し、利用者、医療従事者、企業、保険会社へ実用的な価値として提供できるかが、企業の収益性を左右する重要な要素となるでしょう。

スマートリングやスマートグラスといった新しい形態のデバイス、AIによるパーソナルな健康助言、医療認可を取得した高精度な測定機能、法人向けの安全管理、そして定額制の健康支援サービスなどが、今後の主要な成長領域となる見通しです。競争の中心は、ハードウェアの販売から、データ解析、予防医療、そして継続的なサービス提供へと移行していくでしょう。

レポート詳細情報

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