北海道スペースポートでロケット高頻度打上げへ:大樹町・SPACE COTAN・スペースデータがデジタルツインで実現性検討

高頻度打上げ実現への挑戦とデジタル技術の役割

ロケットの打上げを高い頻度で行うためには、単に技術的な準備だけでなく、打上げ需要の確保、射場(ロケットを発射する場所)を安定して稼働させるための技術や体制、さらには宇宙港がある地域の住民理解や環境への配慮が重要になります。これらの複雑な課題を解決するために、今回の基本合意書締結が大きな一歩となります。

特に注目されるのが、株式会社スペースデータが提供する先進的なデジタル技術です。

合意書締結式

デジタルツインが拓く未来の宇宙港

スペースデータは、「デジタルツイン」という技術を活用します。これは、衛星データや現実世界の建物、設備、都市などの情報を基に、現実の世界をそっくりそのままデジタル空間に再現する技術です。このデジタル空間内で、高精度なシミュレーションや予測を行うことができます。

この技術をHOSPOのロケット打上げに適用することで、たとえばロケット打上げが地域の環境や既存の産業にどのような影響を与えるか、あるいはどのようなリスクがあるかを、事前にデジタル上で「見える化」できるようになります。これにより、関係する多様な人々(ステークホルダー)が同じデータを見て議論し、スムーズな合意形成を図ることが期待されます。従来の計画策定では見えにくかった複雑な影響を、事前に詳細に検証できる点が画期的といえるでしょう。

基本合意書に盛り込まれた具体的な取り組み

今回の基本合意書に基づき、3者は以下のような具体的な項目を実施・検討していきます。

  • 大樹町

    • 北海道内の関係自治体との連携調整

    • ロケット打上げ事業が及ぶ地域の自然環境や既存産業との両立性の整理、住民説明や地域での合意形成プロセスの整理

    • 災害時・緊急時の自治体としての対応策の整理

    • HOSPO商業打上げ運用モデル検討に必要な財源の整理

    • HOSPO商業打上げ運用モデル検討に対する地域における協議体の検討

  • SPACE COTAN株式会社

    • HOSPO商業打上げ運用モデル検討に必要な実施内容と実施プロセスの整理

    • HOSPOにおける宇宙港ビジネスモデルの検討

    • HOSPO運用コンセプトおよびシステム検討

    • HOSPO運営体制の検討

    • HOSPOにおける安全を確保するための基準案の策定(例:HOSPO Range Safety Manualの策定)

    • 主に米国の海外先行事例の調査

  • 株式会社スペースデータ

    • デジタルツイン技術を活用した環境影響可視化手段の検討

    • デジタルツイン技術を活用した高頻度のロケット打上げに対するリスクの可視化手段の検討

    • デジタルツイン技術などを用いたステークホルダー間における合意形成手段の検討

関係者の期待

大樹町の黒川豊町長は、「先進的なデジタルツイン技術を有するスペースデータ様にお力添えいただくことで、町がかかえる様々な課題との両立に向け、より確かなかたちで実現可能性を検討できる」と期待を寄せています。SPACE COTAN株式会社の小田切義憲社長兼CEOは、「宇宙港ビジネスモデルや安全基準の策定などを着実に進め、打上げ事業者にとってより利用しやすく、さらには地域からも信頼される宇宙港の実現に向けて取り組みを加速していく」と語っています。また、株式会社スペースデータの佐藤航陽社長は、「宇宙輸送の高頻度化は、技術や需要だけでなく、地域社会との合意形成をどう積み上げていくかが鍵になる」とし、データに基づく対話を通じて地域から信頼される宇宙港の実現に貢献したいと述べています。

北海道スペースポート(HOSPO)の現在と未来

HOSPOは、大樹町に位置する民間に開かれた商業宇宙港で、2021年4月に本格稼働しました。東と南に海が広がる地理的条件と、広大な土地が射場の拡張を可能にするため、約40年前から航空宇宙産業の誘致が進められてきました。

未来の宇宙港の鳥瞰図

現在、HOSPOでは人工衛星の打上げに対応する新たなロケット発射場「Launch Complex 1(LC1)」の整備が進められています。将来的には、高頻度打上げが可能な「Launch Complex 2(LC2)」や、大型ロケット・有人ロケットに対応する「Launch Complex X(LCX)」の整備も検討されており、さらには高速2地点間輸送(P2P)を見据えた3,000m滑走路の新設も視野に入れています。

HOSPOは、宇宙関連産業が集積する「宇宙版シリコンバレー」を北海道に創出することを目指しており、宇宙港を核とした地域活性化にも積極的に取り組んでいます。これまでの活動は高く評価されており、2022年度には企業版ふるさと納税に係る大臣表彰を、2026年2月には第7回宇宙開発利用大賞で内閣府特命担当大臣(宇宙政策)賞を受賞しています。国際的な連携も進められており、2024年10月には世界5大陸の8商業宇宙港と国際協力に関する覚書を締結。2025年1月にはSPACE COTANが宇宙戦略基金に採択され、打上げ高頻度化に向けた射場基盤技術の研究・開発も進んでいます。また、2025年7月には台湾企業の日本法人「jtSPACE」が、海外資本としては国内初となるサブオービタルロケットの打上げをHOSPOで行うなど、着実に実績を積み重ねています。

これらの取り組みは、ロケット打上げの効率化と安全性の向上、そして地域経済の活性化に貢献し、私たちにとって宇宙旅行や宇宙でのビジネスがより身近になる未来を拓くことでしょう。

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