OptQCとNTT、誤り耐性を持つ100万量子ビット級光量子コンピュータの実用化へ向け資本業務提携を締結

なぜ今、光量子コンピュータが注目されるのか

近年、金融分野でのリスク分析、製造分野での生産・物流の高度化、新薬や新材料の開発、エネルギー利用の最適化など、従来のコンピュータでは膨大な時間を要する複雑な課題に対応するため、量子コンピュータ(量子力学の原理を利用した、現在のコンピュータとは異なる新しい計算方式のコンピュータ)への期待が世界的に高まっています。

特に光量子コンピュータ(光を情報の担い手とする量子コンピュータ)は、光通信技術との相性が良く、将来的な大規模化や省電力化が見込めることから、次世代の計算基盤として注目を集めています。

OptQCとNTTは、2025年11月に連携協定を締結して以来、スケーラブルで信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた検討を進めてきました。この連携協定後、NTTは厚木研究開発センタに光量子コンピュータの研究開発拠点を立ち上げ、OptQCは産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)で、光量子コンピュータ1号機「MoQuren(モクレン)」の稼働を開始しています。

さらに、両社が参画する研究チームは、光量子コンピュータの性能向上に不可欠な「世界最高品質の量子光源」の実現にも成功しています。これは、信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた重要な基盤技術の一つです。

しかし、社会課題の解決に貢献できる量子コンピュータを実用化するためには、以下の技術課題の解決が求められています。

  • 誤り耐性の実現(FTQC: Fault-Tolerant Quantum Computing):量子コンピュータは非常に繊細で、わずかなノイズでも計算結果が乱れる可能性があるため、計算中に生じる誤りを検出・訂正し、信頼性の高い計算を可能にする技術が不可欠です。

  • 100万量子ビット級への大規模化量子ビット(量子コンピュータで情報を表す基本単位。本リリースでは、実際の装置上で実現される「物理量子ビット」の数を示しています)の数を大幅に増やす必要があります。

  • 実用的なソフトウェア基盤の構築

  • 社会実装に向けたシステム化

提携による具体的な取り組み

OptQCとNTTは、今回の資本業務提携契約の締結に加え、これまでの連携協定に基づく共同検討をさらに発展させた共同研究を開始しました。これにより、光量子コンピュータの研究開発から事業化、社会実装までを一体的に推進する取り組みを加速させます。

資本業務提携契約の締結

NTTはOptQCへの出資を予定しており、両社は研究開発に加え、事業化、ユーザー企業を交えたユースケース開拓、サプライチェーン構築、そして社会実装までを見据えた連携体制を強化します。

OptQCが持つ光量子コンピューティング技術と、NTTが持つ光通信技術、ネットワーク、データセンタ、量子情報処理技術、そしてIOWN分野の知見を融合させることで、光量子コンピュータの実用化と産業化の加速を目指します。

また、国内外のユーザー企業や研究機関との連携を推進し、光量子コンピュータを活用したユースケースの創出、将来の市場形成、社会実装に向けた取り組みを進める方針です。

共同研究契約の締結

両社は、第一弾として2027年度までの共同研究契約を締結し、誤り耐性を持つ100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に向けた研究開発を開始しました。この共同研究では、システムの実現に必要となるアーキテクチャ(設計思想)と主要な要素技術の設計完了を目標としています。

具体的な研究テーマは以下の通りです。

  • 波長多重技術(複数の光信号を異なる波長の光に割り当て、一つの伝送路で同時に送信する技術)を活用した量子ビット数の拡大

  • 誤り耐性を備えた光量子コンピュータの設計

  • 100万量子ビット級システムアーキテクチャの設計

共同研究終了後は、設計成果をもとに実機実装フェーズに向けた新たな共同研究を進める予定です。

2030年までのロードマップと未来像

OptQCとNTTは、研究開発と社会実装に向けた取り組みを推進し、2030年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現を目指します。

光量子コンピュータのビジネスと技術ロードマップ

ビジネスロードマップとしては、2026年度から光量子コンピュータのユースケース創出に賛同するユーザー企業や研究機関との共創を開始します。2027年度には、将来の実用化を見据えたサプライチェーン構築に着手し、2028年度には1万量子ビット級光量子コンピュータの実機を用いたPoC(概念実証)を開始する計画です。さらに、2029年度にはアプリケーション開発や実証を拡大し、社会実装に向けた取り組みを進めます。

技術ロードマップとしては、2027年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に必要となるシステムアーキテクチャおよび主要要素技術の設計完了を目指します。並行して、2027年度までに実用的な1万量子ビット級光量子コンピュータを実現し、2028年度に実機検証を開始。2029年度には光量子コンピュータと従来のコンピュータを統合的に活用するためのソフトウェア基盤を開発するとともに、実アプリケーションを用いた検証を進めます。このように、誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現に向けた研究開発を段階的に進めていく方針です。

これらの取り組みを通じて、2030年度までに誤り耐性を備えた100万量子ビット級光量子コンピュータの実現を目指すとともに、金融分野でのリスク分析や最適化計算、製造分野での生産・物流の高度化、創薬、新材料開発、エネルギー利用の最適化など、幅広い分野における代表的なユースケースの社会実装を推進していくとのことです。

NTT株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田 明氏は、量子コンピュータが様々な社会課題の解決に貢献し得る次世代の計算基盤であるとし、OptQCとの連携を通じて日本発の光量子コンピュータ技術を世界に展開し、新たな価値の創出に貢献していくと述べています。

NTT株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田 明

OptQC株式会社 代表取締役 CEO 高瀬 寛氏は、東京大学における25年間の研究を基盤にOptQCが築いてきた光量子コンピューティング技術と、NTTが光通信分野で培ってきた光増幅技術(光信号を強める技術)や光多重化技術などの知見を融合することで、誤り耐性を備えた100万量子ビット級の光量子コンピュータの実現を大きく前進させられると確信しているとコメントしています。

OptQC株式会社 代表取締役 CEO 高瀬 寛

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