脱炭素と災害対策を両立するCCU技術の評価手法が誕生
地球温暖化による気候変動が深刻化し、自然災害が頻発する現代において、私たちは「脱炭素化」と「災害に強い社会づくり(レジリエンス向上)」という二つの大きな課題に直面しています。この課題解決に向け、三菱電機株式会社と国立大学法人東京大学は共同で、CO2を回収し資源として再利用するCCU(※1)技術の経済的価値を、平常時と災害時の両面から定量的に評価できる技術を開発しました。
この新技術は、再生可能エネルギーや蓄電池、水素といった既存のエネルギーシステムにCCUを組み込む際、どの種類のCCUをどれだけ導入すれば、最も経済的にCO2を削減し、災害時にエネルギーを自給できるかを導き出します。これにより、持続可能な社会の実現に向けたカーボンリサイクル事業の市場創出に貢献すると期待されています。
(※1)CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization):工場などから排出されたCO₂を回収して、燃料や化学品などの製造に利用すること。
平常時と災害時、両面からCCUの価値を評価
これまで、地域エネルギーシステムにおいてCO2削減効果とレジリエンス向上の両面から評価する取り組みは行われてきましたが、CCUを導入した場合の最適な構成を評価する方法は確立されていませんでした。今回の開発では、この課題を解決する二つの大きな特長があります。
1. 平常時・災害時のCCU導入効果に基づき最適な地域エネルギーシステムを算出
この技術では、地域社会が目指す「地域循環共生圏(※2)」へのCCU導入効果を、平常時のCO2削減量と災害時のレジリエンスという両面から評価します。カーボンプライシング(※3)の導入も視野に入れ、災害時に外部からの電気や燃料供給が停止した場合でも、燃料や化学品を自給して地域活動を継続できる期間を算出することが可能です。
東京大学の計算技術と、三菱電機がCCU装置を用いた実証試験で得た運用・制御の知見を組み合わせることで、地域の脱炭素化とレジリエンス向上を最小コストで両立する、最適なエネルギーシステムの構成とその経済的価値が算出されます。


(※2)地域循環共生圏:地域の多様な資源を最大限に活用し、環境・社会・経済の同時解決を目指す概念。
(※3)カーボンプライシング:CO2排出量に応じて税金をかける炭素税、排出量に上限を設け余剰分や不足分を売買する排出量取引、削減したCO2量を価格として認証・取引するクレジット制度など、CO2排出に価格をつける仕組み。
2. 災害時の膨大な数の組み合わせ計算を効率的に処理
自然災害発生時には、停電、断水、燃料供給停止など、様々な状況が複雑に絡み合います。これらの状態が時間とともに変化する確率をモデル化し、CCUを含む地域エネルギーシステムの最適な構成を求める問題を「最適化問題」として定式化しました。
例えば、「風水害」による停電や「大地震」による停電、断水、外部からの燃料供給停止が同時に発生するケースを想定した場合、わずか9日後には状態遷移数が1兆を超えるという指数関数的な増加が起こります。このような膨大な計算量を効率的に処理するため、「確率動的計画法(※4)」と「切除平面法(※5)」という高度な数学的アプローチが採用されました。これにより、計算に必要なメモリー量を抑えつつ、大規模な問題にも対応し、さらに「MPI(※6)」を用いた並列計算で大幅な高速化を実現しています。

(※4)確率動的計画法:不確実な未来を確率的な状態遷移で表現し、段階的に最適な意思決定を行うための手法。
(※5)切除平面法:最適解を効率よく探索するために、条件を満たさない部分を切り落とすような平面を順次追加しながら解を改善していく最適化手法。
(※6)MPI(Message Passing Interface):複数のコンピューターを連携させてひとつの巨大な計算を行う並列コンピューティングのための世界標準規格。
未来への貢献:カーボンリサイクル市場の創出へ
この技術は現在開発段階であり、今後、CCU導入を検討する自治体や企業へのコンサルティングサービスとして提供されることを目指しています。三菱電機は、東京大学とともにさまざまな地域循環共生圏モデルでのシミュレーションを進め、CCUの評価向上を通じて、2030年以降の地域レベルのカーボンリサイクル市場創出に貢献していく計画です。
この技術が実用化されれば、地域社会は平常時のCO2削減だけでなく、災害時にも安定したエネルギー供給を確保できるようになります。脱炭素とレジリエンスを両立する持続可能な社会の実現に向け、大きな一歩となるでしょう。
共同開発体制
本技術の開発は、以下の役割分担で行われています。
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三菱電機: システム全体の運用計画・エネルギーマネジメント技術の開発、CCUを用いた実証試験などを通じた運用最適化技術の開発
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東京大学: 不確実性を考慮した大規模最適化問題の定式化とその効率的な解法の開発
関連情報
三菱電機グループは、サステナビリティを経営の根幹に据え、社会課題解決と企業価値の向上を目指しています。詳細については、以下のオフィシャルウェブサイトをご覧ください。



