新薬開発の現状と課題
新しい医薬品を世に送り出すには、一般的に10年から17年という長い開発期間と、約3,240億から4,860億円という莫大な投資が必要とされています。このような背景から、既存の医薬品や開発中の候補物質(アセット:創薬候補化合物や開発中・上市済みの医薬品など、事業価値を持つ医薬関連資産)の新たな用途、つまり「適応症(医薬品の治療対象となる疾患や症状)」を探し出す戦略が、コストを抑え、開発期間を短縮する上で非常に重要になっています。
しかし、これまでの適応症の検討では、科学的に有望な発見があっても、それが本当に患者に届く医薬品になるのか、市場性はあるのかといった事業性の観点での評価が十分でなく、意思決定が滞るケースが少なくありませんでした。科学的な探索結果と事業・開発の評価をいかに結びつけるかが、大きな課題となっていたのです。
AIと専門知見の融合で意思決定を加速
FRONTEOとシミックの協業は、この課題を解決するために、それぞれの強みを持ち寄るものです。
FRONTEOのAI創薬支援サービス「Drug Discovery AI Factory」
FRONTEOは、独自開発した「KIBIT(キビット)」という方程式駆動型AIを核とする「Drug Discovery AI Factory(DDAIF)」というAI創薬支援サービスを提供しています。DDAIFは、AIと創薬に精通したFRONTEOの専門家が、KIBITの自然言語処理技術と独自の解析手法を駆使し、標的分子・適応症探索やその裏付けとなる仮説を提供するサービスです。
このDDAIFでは、クライアントが指定するアセットに対し、既存の学術論文ではまだ報告されていない、新たな適応症を網羅的に探し出します。さらに、そのアセットがなぜその疾患に効果を発揮するのか、という治療メカニズムに関する仮説まで提示します。
KIBITは、データの中から人間が見落としがちなパターンや関連性を高速かつ高精度で発見できるFRONTEO独自開発のAIです。方程式を用いることで、非連続な発見、因果関係の把握、高い再現性を実現し、学習プロセスを軽量化することでCPUレベルで高速・高精度な解析を可能とします。この技術とFRONTEOの創薬エキスパートの知見が融合することで、研究者の意思決定を強力にサポートします。

このDDAIFはすでに複数の大手製薬企業で導入され、実績を重ねています。
シミックの医療・市場評価の専門性
一方、シミックのConsulting and Navigation Unitは、長年にわたり製薬・ヘルスケア領域で培ってきた医療データ、市場・競争環境の情報、そして臨床開発(実際に患者さんを対象に行う医薬品の試験)の実現可能性に関する豊富な知見を持っています。さらに、疾患領域の専門家の見識も活用し、FRONTEOが提示した適応症候補に対して、医療現場でまだ満たされていない医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ:まだ有効な治療法が確立されていない医療上の必要性)を踏まえた治療価値、市場での可能性、そして実際に開発が進められるかという実現性について、詳細な調査と情報提供を行います。
統合された意思決定支援
この協業により、製薬企業はFRONTEOからの科学的な新規性を持つ適応症候補と、シミックからの事業性評価情報を総合的に得られるようになります。これにより、適応症の比較・選択・優先順位付けをより根拠に基づいて行い、実現可能性の高い適応症戦略を策定できるようになります。
このサービスは、開発中の医薬品に追加の適応症を検討する際や、医薬品の価値を継続的に高めるための「ライフサイクルマネジメント(医薬品の開発中から承認・上市後まで、追加適応症の取得や新たな活用方法の検討などを通じて、医薬品の価値の継続的な拡大を図る取り組み)」、さらには外部から医薬品候補化合物などを導入(他社・他機関から医薬品候補化合物などの開発権や販売権を獲得すること)する際の評価など、幅広い場面での活用が想定されています。
新薬開発の未来を加速する協業
FRONTEOとシミックの協業は、AIが導き出す画期的な科学的仮説と、長年の経験に裏打ちされた事業性評価の知見を融合することで、新薬開発の成功確度を高めることを目指しています。これにより、時間とコストがかかる新薬開発のプロセスがより効率的になり、より早く、より多くの患者さんに新しい治療選択肢が提供される未来が期待されます。特に、まだ有効な治療法が見つかっていないアンメット・メディカル・ニーズへの対応が加速することは、多くの患者にとって大きな希望となるでしょう。
シミックホールディングス株式会社の上席執行役員/CRO & Consulting事業ユニット担当である奥田 晃義氏は、「科学的な可能性を、より実現可能性の高い開発戦略へとつなげることができる」とコメントしています。また、株式会社FRONTEOの取締役/CSO(Chief Science Officer)である豊柴 博義氏も、「新規性と開発の実行しやすさを兼ね備えた創薬を推進し、製薬企業の適応症戦略の成功確度を高め、アンメット・メディカル・ニーズの解消につなげていく」と、この協業への強い期待を表明しています。
FRONTEOのAI技術の詳細については、以下のウェブサイトで確認できます。
シミックグループの事業については、以下のウェブサイトをご覧ください。
FRONTEOのKIBIT技術は、創薬だけでなく、経済安全保障やリーガルテックなど多岐にわたる分野で社会課題解決に貢献しています。

FRONTEOに関する詳細は、以下のウェブサイトで確認できます。
今回の協業が、医薬品開発の新たな時代を切り拓き、より多くの人々の健康に貢献することを期待しましょう。
参考:Camps I. et al., “Editorial:Opportunities and challenges in drug repurposing”, Frontiers in Pharmacology, Vol.16, 2025, https://www.frontiersin.org/journals/pharmacology/articles/10.3389/fphar.2025.1709217/full


