ものづくりを革新するAIサロゲートモデル「ForgeNet」発表
2026年7月22日、ドイツ・ミュンヘンで開催された計算力学の国際会議「WCCM ECCOMAS Munich 2026」において、株式会社ゴーデルブロックとAccelerated Komputing社などの共同研究チームが、冷間鍛造シミュレーションのための画期的なAIサロゲートモデル「ForgeNet」に関する研究成果を発表しました。
「計算力学」とは、材料や構造物が力によってどのように変形したり壊れたりするかを、コンピュータで計算して予測する学問分野です。また「冷間鍛造」とは、金属を熱を加えず常温で強い力で押し固め、目的の形に加工する技術で、精密な部品製造に不可欠です。
「AIサロゲートモデル」とは、実際の複雑なシミュレーション(物理計算)の代わりに、AI(機械学習)を使って近似的な予測を行うモデルのことです。これにより、計算速度を大幅に向上させることが期待されます。

「ForgeNet」の画期的なアプローチ:従来の課題をどう乗り越えるのか
製品設計の現場では、複雑な形状の物体にかかる力や変形などをコンピュータで計算する「有限要素解析(FEM)」が広く用いられています。しかし、このシミュレーションは非常に時間がかかり、特に冷間鍛造のような大きく変形するプロセスでは、計算の精度を保つために「適応的リメッシュ」(変形に合わせて要素を作り直す処理)が必要となります。このリメッシュによって、シミュレーション結果をそのまま機械学習で扱うことが難しいという課題がありました。
「ForgeNet」は、この課題を解決するために独自のアプローチを採用しています。
- 結果の投影: まず、解析結果を「固定オイラー格子」(変形する物体に固定された座標系ではなく、空間に固定された基準グリッド)へ投影します。これにより、変形しても格子の位置が変わらないため、機械学習が結果を扱いやすくなります。
- 二段階予測: 次に、ノード(要素の頂点となる点)の「変位」(位置の変化)と「応力」(物体内部に生じる力)をそれぞれ予測する2つのディープラーニングモデル(AIの一種で、多層のニューラルネットワークを使ってデータから特徴を自動的に学習する技術)を用いることで、冷間鍛造プロセスの高速な予測を実現します。
この技術によって、従来の有限要素解析にかかる時間を大幅に短縮し、製品設計における試行錯誤のプロセスを劇的に効率化できるでしょう。
未来の製造業への貢献:設計の効率化とイノベーションの加速
「ForgeNet」のようなAIサロゲートモデルは、製造業に大きな変革をもたらす可能性があります。特に、自動車や航空宇宙といった分野では、部品の軽量化や高性能化が常に求められており、そのための設計には高度なシミュレーションが不可欠です。
この技術が実用化されれば、設計者はより多くの設計案を短時間で検証できるようになり、開発期間の短縮やコスト削減に大きく貢献するでしょう。また、これまでは難しかった複雑な形状や新しい素材の加工プロセスも、より効率的に検討できるようになるかもしれません。本研究はまだ研究段階ではありますが、将来的に製品開発のイノベーションを加速させる基盤となることが期待されます。
研究を支える体制と学会の意義
本研究は、株式会社ゴーデルブロック(東京)とAccelerated Komputing社をはじめとする共同研究チームによって実施されました。
WCCM ECCOMAS 2026は、計算力学分野における世界的な国際会議であり、材料成形、積層造形、溶接など幅広い製造プロセスを対象に、数値シミュレーションとディープラーニングの応用が世界中の研究者・技術者によって活発に議論されました。
株式会社ゴーデルブロックについて
株式会社ゴーデルブロックは、科学技術計算ソフトウェア開発を事業内容とする企業です。代表者は田中昭雄氏で、本社は東京都新宿区にあります。
- 会社URL: https://www.godelblock.com/



