名城大学に新奨学金が誕生、未来を担う研究者を育成
名城大学は、同窓生である株式会社メイドー代表取締役名誉会長の長谷川士郎氏からの寄付を基に、新たな奨学金制度「長谷川士郎奨学金」を創設しました。この奨学金の主な目的は、名城大学の将来ビジョン「中部から世界へ 創造型実学の名城大学」の実現に向け、研究と国際化を強力に推進し、中部地域の産業界に貢献する人材を育成することです。
2026年7月23日には、天白キャンパスのタワー75レセプションホールで奨学金の授与式が開催され、長谷川顧問や野口光宣学長ら約50名が出席しました。

研究と国際化を支える具体的な支援
この奨学金は、長谷川顧問が2025年に寄贈したトヨタ自動車株式会社の株式50万株を運用して創設された「長谷川士郎基金」から成り立っています。
奨学金の具体的な支援内容は多岐にわたります。
-
研究推進目的: 博士課程に在籍する学生には、実質授業料が免除される授業料相当額が支給されます。これにより、学費の心配なく研究に専念できる環境が提供されます。
-
国際化推進目的:
-
交換留学を希望する学部生には一時金と留学期間中の毎月一定額が支給されます。
-
海外の大学研究室への留学を希望する大学院生には、週単位で支援金が支給されます。
-
授与式では、まず野口学長が長谷川顧問への感謝を述べるとともに、奨学金を受ける大学院生に向けて「長谷川様からの温かいご支援を励みとして研究をさらに深め、自らの専門性を磨き、地域産業と社会を支える人材に成長することを期待します」と激励しました。この日、研究推進を目的とした奨学生45人のうち、出席した38人に決定通知が手渡されました。


若き研究者たちの誓い
奨学生を代表して謝辞を述べたのは、都市情報学研究科の中川雅新さんと農学研究科の野本颯太さんです。
中川さんは、ポストAI時代の画像処理技術の研究を通じて中部地域の産業発展に貢献したいという抱負を語りました。野本さんは、植物が環境変化に応じて根の成長を調節するメカニズムの研究を進め、愛知から世界に発信できる独創的な成果を生み出すことを誓いました。


長谷川顧問からのメッセージも代読され、「本奨学金が皆さんの研究の推進を後押しし、その研究成果が中部地域の産業の発展につながることになれば、これに勝る喜びはありません。そして将来、社会のさまざまな分野で活躍されることを心より願っています」と、若き研究者たちへの温かい期待が伝えられました。

ノーベル化学賞受賞者が語る「オンリーワン」の精神
授与式の後には「博士育成セミナー」と題し、2001年にノーベル化学賞を受賞し、名城大学の客員教授も務める野依良治・日本学士院院長が「私が触媒研究から学んだこと」をテーマに記念講演を行いました。

野依学士院長は、自身の研究生活で得た教訓を交えながら、奨学生たちに熱いメッセージを送りました。神戸市の戦災の様子から世界の平和の重要性を説き、湯川秀樹氏に憧れて科学の道に進んだ経緯を振り返りました。
特に印象的だったのは、「特別な人間ではない私が、なぜノーベル賞を受けることができたのか?」という問いに対する答えです。それは「感謝すること」であり、両親の養育、先生の導き、自由な研究環境、渡米して触れた異文化からの刺激、多様な友人との出会いなどを挙げました。
そして、聴講する院生たちに向けて「サイエンスは無限に広がっており、ナンバーワンでなく、オンリーワンを目指そう。その方がサイエンスの進展に貢献できる」と強調しました。さらに、研究を進める上で「どれくらい多くの人と接触するかが重要。これから『独創』だけでなく『共創』が大事になる。いろいろな人が集まり、議論することが重要で、集団が大きいほど誰かがアイデアを思いつく可能性が高まる」と、連携の重要性を説きました。


野依学士院長は、奨学金の意義についても触れ、「学生を成長させるには教員の指導力の確保と教育研究環境の充実という『学術触媒』が必要で、この長谷川士郎奨学金もその教育研究環境の充実に役立つ」と述べました。
「触媒(しょくばい)」とは、化学反応を促進させる物質のことで、それ自身は変化せずに反応を助ける役割を果たします。野依学士院長はこれを比喩的に、社会の発展を促す存在として使っています。
最後に「たった1回の人生。オンリーワンを目指してほしい」と繰り返し、「専門家になったら、自分のためだけでなく、ぜひ『触媒』として善き社会をつくるために働いてほしい」と、若き研究者たちに社会貢献への期待を寄せました。

この「長谷川士郎奨学金」と野依学士院長の示唆に富んだ講演は、名城大学の学生たちが未来の研究を推進し、国際社会で活躍するための大きな力となることでしょう。



