固形がん向け次世代免疫療法に革新を セルファイバとTidewave Bioが共同研究開発を開始

固形がん治療の新たな希望:オフ・ザ・シェルフ型免疫療法

がんは多くの人々にとって深刻な病気であり、特に治療が難しいとされる固形がんに対する新たな治療法の開発が求められています。近年、注目されているのが「免疫療法」です。これは、患者さんの体にもともと備わっている免疫システム(病原体やがん細胞を攻撃する体の防御機能)を活性化させて、がん細胞と戦わせる治療法です。

この共同研究開発で焦点を当てているのは、「オフ・ザ・シェルフ型」と呼ばれる免疫療法です。これは、他人の細胞(他家細胞)を用いてあらかじめ製造し、治療が必要となった際にすぐに使用できる既製品のような製品を指します。患者さん自身の細胞(自家細胞)を用いる従来の治療法と比べて、製造にかかる時間やコストといった課題の解決が期待されており、より多くの患者さんに治療を届けられる可能性を秘めています。

Tidewave Bioは、このようなオフ・ザ・シェルフ型の免疫療法プラットフォームの開発を進めており、患者由来の腫瘍組織を用いてリアルタイムで最適化する、同種細胞免疫療法(患者さん自身の細胞ではなく、健康なドナー(提供者)の細胞を加工して用いる免疫療法)アプローチを追求しています。

セルファイバ独自の「CellFiber®技術」とは

この次世代免疫療法の量産化において、重要な役割を果たすのが、セルファイバ独自の細胞培養プラットフォーム「CellFiber®技術」です。

CellFiber®技術は、アルギン酸ゲルという材料でチューブ状の構造を形成し、そのチューブ内部で細胞を保護しながら培養するカプセル化技術です。この技術で培養された細胞は、従来の平らな皿の上で培養する「2D細胞培養」と比較して、細胞機能の維持・向上、長期間の生存性、そして品質の均一性といった点で優れていると期待されています。まるで細胞にとって居心地の良い、立体的な「3D細胞培養」環境を提供することで、より高品質な細胞を効率的に製造することが可能になります。

量産化に向けた概念実証(PoC)

今回の共同研究開発では、Tidewave Bioの同種細胞免疫療法プラットフォームにおいて不可欠な免疫細胞の「増幅」(細胞の数を増やすこと)と「分化」(細胞が特定の機能を持つ細胞に変化すること、この場合はがん細胞を攻撃する能力を持つ細胞へと育てること)について、従来の2D細胞培養とCellFiber®技術を用いた3D細胞培養を比較するPoC(概念実証:新しいアイデアや技術が、実際に目的を達成できるかどうかを小規模に試して検証すること)が実施されます。

このPoCの目的は、CellFiber®技術がTidewave Bioの製造戦略をどのように支援できるか、また固形がん向けのオフ・ザ・シェルフ型免疫療法の細胞製造においてCellFiber®技術がどれほど有用であるかを実証することです。この研究は、東京都内にあるセルファイバの研究施設にて行われます。

Tidewave Bio CEOのFrancois Binette氏は、がんの種類や治療環境、地域を問わず、すべての固形がん患者さんが次世代のがん免疫療法にアクセスできるようにするというTidewave Bioのミッションを達成するためには、効率的で費用対効果の高い製造アプローチが不可欠であると述べています。CellFiber®技術が、そのプロセス開発戦略をどのように支援できるか評価できることを期待しています。

また、セルファイバ株式会社 代表取締役社長の古石和親氏は、CellFiber®技術がこれまで細胞治療の規模拡大を制約してきた製造上の課題を解決するために設計されたと説明しています。この共同研究開発は、セルファイバの閉鎖系・自動化3D細胞培養プラットフォームが次世代のがん免疫療法にもたらす価値を実証し、より多くの患者さんに治療を届けるという両社の共通のビジョンを前進させる機会であると語っています。

未来への期待

この共同研究開発は現在、研究段階にありますが、成功すれば、高品質な免疫細胞を効率的に大量生産できるようになり、固形がんに対するオフ・ザ・シェルフ型免疫療法の提供が加速する可能性があります。これにより、これまで治療が難しかった固形がん患者さんにとって、よりアクセスしやすく、迅速かつ拡張性の高い精密な免疫療法が実現する未来が期待されます。

株式会社セルファイバについて

セルファイバは、アルギン酸ゲルでチューブ状の構造を形成し、チューブ内部で細胞を保護するカプセル化技術「CellFiber®(細胞ファイバ)技術」をもとに、2015年に設立されたバイオテクノロジー企業です。細胞・遺伝子治療製品の効率的な開発、製造に貢献し、患者さんのQOL(生活の質)向上を目指しています。

公式サイト:

Tidewave Bioについて

Tidewave Bioは、患者由来の腫瘍組織を用いてリアルタイムで最適化することを想定した、同種、オフ・ザ・シェルフ型の遺伝子改変細胞免疫療法プラットフォームを開発している米国ロサンゼルスのバイオテクノロジー企業です。中央集中型で製造される細胞製品と、実用的な生検処理ワークフローを組み合わせることで、固形がん向けの、よりアクセスしやすく、迅速かつ拡張性の高い精密な免疫療法の実現を目指しています。Tidewave Bioは現在、前臨床開発段階にあります。