AI創薬の未来を拓く大規模データエコシステム構築へ:SyntheticGestaltとEnamineが協業

創薬AIのデータ不足を解消する新たな挑戦

この協業は、AI創薬(人工知能を使って新しい薬の候補を見つけたり、開発プロセスを効率化したりすること)におけるデータ不足という根本的な問題に取り組むものです。両社は、産業上重要な100種類のタンパク質ターゲット(薬が作用する標的となる、体内の特定のタンパク質)に対して、数十万件ものin vitro実測データ(試験管内で行われた実験で得られた、実際の測定データ)を生成することを目指しています。

これにより、AIがより正確で信頼性の高い予測を行うための基盤が構築され、創薬のタイムラインを従来の数年から数ヶ月単位にまで短縮することを目指します。この取り組みは、経済産業省が推進する補助事業「GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)」および国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の戦略的支援のもとで推進されます。

両社の強みが融合するデータエコシステム

Enamineの合成・検証能力

Enamine社は、数兆種類に及ぶ合成可能な「REAL Compounds(短期間で高い成功率、低コストで合成できる化合物)」のデータベースを開発しています。さらに、化合物の合成から薬効試験、前臨床試験までを一貫して行える独自の「B-REALディスカバリープラットフォーム」を提供しています。このプラットフォームは、薬が体内でどのように吸収され、分布し、代謝され、排泄されるか(ADME)、そして毒性がないか(Tox)を調べるADME/Tox試験も統合しており、高速かつ低コストでのデータ生成を可能にしています。

SyntheticGestaltの最先端AI技術

SyntheticGestaltは、分子AI開発に特化したAI技術のパイオニアです。同社は、100億個の化合物データを学習した「世界最大の分子基盤モデルZAO」を開発しており、新しい分子の予測や設計においてその能力を発揮します。ZAOの「世界最大」という評価は、学習データ規模において2026年8月時点で公表されている他の分子基盤モデルとの比較に基づいています。

協業による相乗効果

今回の協業では、SyntheticGestaltのAIが産業上重要なタンパク質ターゲットを解析し、REAL Compoundsの中から最適なリガンド候補(タンパク質ターゲットに結合して作用を示す可能性のある分子の候補)を選出します。その後、EnamineのB-REALディスカバリープラットフォームが、選ばれた候補の並列合成、タンパク質生産、活性アッセイ、前臨床in vitro検証を一気通貫で実施します。これにより、AIの予測と実際の実験データが密接に連携し、創薬プロセスが大幅に加速されることになります。

未来を創造するデータセットの公開

この協業によって生成されるデータセットは、前例のない規模と範囲を持つものであり、2027年に公開が予定されています。このデータは、日本の製薬パートナーを含む世界の科学コミュニティに提供され、創薬とイノベーションを加速させる変革的なリソースとなるでしょう。これにより、これまで発見が困難だった新しい薬や、より効果的な治療法の開発が大きく進展することが期待されます。

SyntheticGestaltのCEOである島田幸輝氏は、「AIこそが新規分子の主たる発明者になる」という信念のもと、Enamineとの協業を通じて、AIの予測が実験的事実に裏付けられるデータエコシステムを構築すると述べています。

Enamineの事業開発ディレクター、Iaroslava Kos氏も、この協業がAIと実験科学の融合により創薬の新たなフロンティアを切り拓くものであると強調しています。

このデータエコシステムの構築は現在研究段階にありますが、その成果は、将来的に医療や農業分野における喫緊の課題に対するソリューションを提供し、世界の分子産業を再構築する可能性を秘めています。

関連情報

SyntheticGestaltについて

SyntheticGestalt株式会社は、東京を拠点とする分子AI企業です。製薬、化学、材料、農薬、化粧品、食品の各産業に向けて分子AIを開発・展開しており、2018年の創業以来、「AIによって発明を量産するシステムの構築」を目指しています。過去の研究プロジェクトでは、医薬品のリード化合物や環境負荷の低い材料を発見しており、一部のプロジェクトでは従来手法と比較して探索のコストと期間を最大90%削減した実績があります(削減幅は対象や条件により異なります)。
詳細は https://www.syntheticgestalt.com をご覧ください。

Enamine社について

Enamine社は、化学化合物の主要な供給企業であり、統合創薬(IDD:Integrated Drug Discovery)を対象とした科学志向の受託研究機関(CRO)です。自社製造のスクリーニング用化合物(在庫480万種)およびビルディングブロック(在庫37万5,000種)に加え、バイオインフォマティクス、生物学、化学の各領域における統合創薬サービスを組み合わせ、創薬プロジェクトの推進と加速を支援しています。
詳細は https://enamine.net/ をご覧ください。

Enamine REALについて

Enamine REAL(REadily AccessibLe)は、Enamine社において短期間(3〜4週間)に、高い成功率(80%超)で、かつ低コストで合成可能な、数兆規模の合成実現可能分子を収載しています。REAL Compoundsは、在庫20万3,000種のビルディングブロックを、十分に検証された169の並列合成プロトコルに従って組み合わせる並列化学によって作られます。これはEnamine社が掲げる「合成成功率を最大化するためのメイクオンデマンド設計」という方針の基盤となっています。
詳細: https://enamine.net/compound-collections/real-compounds

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