JAXA宇宙戦略基金事業に採択!衛星データでアジアの「サステナブル調達」を革新する新基盤

宇宙と現場が連携!アジア発サステナブル調達の実現へ

Space Tech Accelerator株式会社(以下、STA)が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する宇宙戦略基金事業の技術開発テーマ「衛星データ利用システム実装加速化事業」において、「現場を結ぶアジア発サステナブル調達基盤構築」として採択されました。これは、2025年2月に採択された第一期事業に続く連続採択となり、宇宙技術を活用した持続可能な社会への貢献に期待が集まります。

JAXA宇宙戦略基金事業に採択されました。 衛星データを活用した、アジア発サステナブル調達基盤構築へ SPACE TECH ACCELERATOR

なぜ今、サステナブル調達が重要なのか

私たちが日々の生活で使うシャンプーやインスタント麺、チョコレートなど、多くの製品に使われるパーム油、カカオ、天然ゴムといった原料の多くは、東南アジアで生産されています。特にパーム油は年間約7,800万トンが生産され、その8割以上をインドネシアとマレーシアが占めています。日本も年間約67万トンを輸入し、食品からバイオ燃料まで幅広く利用しています。

しかし、これらの産地では、大規模農園が生産量の約6割を占める一方で、250万人以上の小規模農家が農園面積の4割以上を耕作しており、認証取得の難しさや森林減少、泥炭地(植物が完全に分解されずに堆積した土壌で、乾燥すると燃えやすく、大量の温室効果ガスを排出します)の劣化といった環境問題に直面しています。

さらに、EU森林破壊防止規則(EUDR、森林破壊に関わる製品のEU市場への流通を制限する国際的な規則)やScope3開示(自社だけでなく、サプライチェーン全体から排出される温室効果ガス(GHG)の情報を開示すること)の義務化など、国際的な規制も強化されており、調達企業にとって、製品が生産者から消費者に届くまでの全工程であるサプライチェーンの上流にあるリスクを把握することが喫緊の課題となっています。

現場の課題と既存手法の限界

産地は赤道直下に広がるため、現地を直接確認するには限界があります。欧州を中心に、認証取得を条件とする取引や衛星画像による監視は広がりつつありますが、これだけでは小規模農家レベルの実態まで把握することは困難でした。

青い空と白い雲の下に広がる、一面のヤシの木々が特徴的な熱帯の風景です。

広大なアブラヤシのプランテーションが広がる風景です。

宇宙と現場のデータを統合する新しい挑戦

STAは、この課題に対し、宇宙からの客観的なデータと現場で得られる一次情報を組み合わせ、産地の実態を可視化する新しい情報基盤の構築に挑みます。

この事業では、最長5年間の計画のもと、衛星データと現場データを統合し、アジアの農業・資源サプライチェーンにおけるサステナブル調達(環境や社会、経済に配慮した持続可能な方法での調達)を実現するモニタリング基盤を構築します。まずインドネシアのパーム油分野で基盤を確立し、ココナッツ、カカオ、コーヒー、天然ゴムなど主要農産物へ段階的に展開する予定です。

具体的な取り組み内容

衛星データから統合プラットフォームを通じて、農家向けアプリや業務デジタル化、収量予測、施肥管理、認証支援など、生産地におけるスマート農業を多角的に支援するシステム構成を示しています。

  1. サプライチェーン統合プラットフォームの開発
    衛星データ、現場の取引記録、認証関連データを一つに統合するクラウド基盤を構築します。これにより、農家は自身の農地の状態を確認でき、調達企業はサプライチェーンのリスクを把握し、認証機関は審査を効率化できるようになります。異なる立場の人々が同じデータ基盤上で意思決定を行える環境を目指します。

  2. 小規模農家・農協向けアプリの社会実装
    第一期事業で開発に着手し、既に一部ユーザーに活用されている農協向けアプリを発展させ、本格的な社会実装に取り組みます。紙帳票の電子化や自動計算といった業務効率化機能は既に稼働しており、今後は衛星データとの連携による収量予測や施肥最適化といった機能も拡充されます。まずインドネシアのパーム油分野で実用化レベルまで磨き上げ、その後他の作物や周辺国へ段階的に展開する計画です。

  3. 様々な衛星データを活用したソリューションの事業化
    SAR(合成開口レーダー)衛星(雲や天候に左右されず、地表の様子を詳しく観測できるレーダー衛星)、光学衛星(目に見える光や近赤外線を使って地表を撮影する衛星)、ハイパースペクトル衛星(非常に多くの細かい波長帯で情報を取得し、地表の物質の種類や状態を詳細に分析できる衛星)、熱赤外衛星(地表から放出される熱を捉えることで、温度分布を測定し、火災の予兆などを検知できる衛星)といった複数種の衛星データを統合的に活用し、農業・資源分野における分析精度の向上と新たなユースケース(利用事例)の開拓に取り組みます。

    • 作物の生産性・健全性解析:作付面積の把握、収量推定、早期の異常検知

    • 森林・土地利用のESGモニタリング:森林減少の検知やEUDR対応に向けたGHG(温室効果ガス)排出量の算定

    • 熱赤外衛星による泥炭地火災の予兆検知:「発生後の対応」から「発生前に兆候を捉える」予防型アプローチへの転換

これらの技術は、パーム油だけでなく、ゴムやカカオなど樹木作物全般のモニタリングにも応用可能であり、対象作物の拡大に伴い活用範囲を広げていく計画です。

協力体制と未来への展望

STAが代表機関として事業全体を主導し、統合プラットフォームの基盤構築と運用を担います。衛星データ解析の各分野では、スカパーJSAT、セーレン株式会社、三菱電機株式会社が技術協力を行います。インドネシア側では、国営検査・認証企業Surveyor Indonesia、国営プランテーション企業Palm Co(PTPN)、IJBNET、Brawijaya University等と協力体制を構築し、衛星データを認証制度や調達判断に反映させるための現場体制を強化しています。

Space Tech Accelerator株式会社の代表取締役である平賀 元気氏は、「サステナビリティの課題を本質的に解決するためには、小規模農家の貧困や情報格差の問題に取り組む必要がある」と語っています。宇宙からのデータと現場の営みを繋ぎ、農家の生活向上と環境保全を同時に実現する仕組みを通じて、持続可能な経済モデルを提示し、世界平和に挑むという強い意志が示されています。

この取り組みは、単なる技術開発に留まらず、地球規模の環境問題と経済活動、そしてそこに暮らす人々の生活を結びつけ、より良い未来を創造する可能性を秘めています。

Space Tech Accelerator株式会社について

「宇宙技術で、世界平和に挑む。」をミッションに掲げ、人工衛星による宇宙からの視点と、現場主義にもとづく地上の実行力を組み合わせ、農業・林業・エネルギー領域を中心に事業開発を行っています。

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