次世代半導体の鍵を握るEUVリソグラフィ向け計測・検査装置市場、2032年には98億ドル規模へ成長予測

未来の半導体製造を支えるEUVリソグラフィ向け計測・検査装置の市場が急拡大

スマートフォンやAI(人工知能)技術の進化を支える高性能な半導体は、私たちの生活に欠かせない存在です。その半導体製造の最先端技術である「EUVリソグラフィ」を支える「計測・検査装置」の市場が、今後大きく成長すると予測されています。

LP Informationが発行した最新の産業調査レポート『世界EUVリソグラフィ向け計測・検査装置市場の成長予測2026~2032』によると、この市場は2025年の約48億6,000万米ドル(約7,500億円※)から、2026年には約54億2,000万米ドル、そして2032年には約98億9,354万米ドル(約1兆5,000億円※)に達する見込みです。

※1米ドル=155円換算(2024年5月時点)

世界EUVリソグラフィ向け計測・検査装置市場の成長予測を示すグラフ

EUVリソグラフィとは?なぜ計測・検査が重要なのか

EUVリソグラフィとは、「極端紫外線(Extreme Ultraviolet)」という非常に短い波長の光を使って、半導体の基板である「ウェーハ」にごく微細な回路パターンを焼き付ける技術です。この技術により、より小さく、より高性能な半導体チップが作れるようになります。

しかし、髪の毛の太さの数千分の1以下というナノメートル単位の回路を作るため、少しでもズレたり、小さなゴミが付着したりするだけで製品の性能に大きな影響が出ます。そこで必要となるのが、「EUVリソグラフィ向け計測・検査装置」です。これらの装置は、以下の重要な役割を担っています。

  • EUVパターン欠陥の検出: 回路に傷や異常がないかを高精度でチェックします。

  • クリティカルディメンション(CD)計測: 回路の最も重要な部分の寸法が設計通りか厳密に測ります。

  • オーバーレイ制御: 複数の層を重ねて回路を作る際に、各層の位置が正確に重なるように調整します。

  • マスク欠陥の転写影響評価: 回路の原版となる「EUVマスク」に欠陥がないか、またその欠陥がウェーハにどう影響するかを評価します。

これらの装置は、電子線イメージングや光学計測、AI(人工知能)によるデータ解析などを統合し、高分解能、高安定性、高再現性といった特徴を持ちます。半導体製造において、歩留まり(良品が作られる割合)を向上させ、安定した量産を支えるための「司令塔」のような存在と言えるでしょう。

市場成長の背景にある技術革新と需要拡大

市場成長を牽引している主な要因は以下の通りです。

  1. 先端ロジックノードの継続的な微細化: スマートフォンやPCの頭脳となるCPUなどの高性能半導体(先端ロジック)は、より小さく、より多くの機能を詰め込むために回路の微細化が止まりません。2nm(ナノメートル)以下の次世代プロセスへの移行が、計測・検査装置の需要を押し上げています。
  2. 先端DRAMおよびHBM工程の高度化: データの一時保存に使われるDRAMや、AIチップなどで使われる高性能なHBM(High Bandwidth Memory)といった記憶素子の製造も高度化しており、EUVリソグラフィの適用範囲が広がっています。
  3. EUVマスク品質管理要求の上昇: EUVマスクは回路の原版であり、その品質が半導体の性能を直接左右するため、非常に厳格な検査が求められます。
  4. High-NA EUVの導入: EUVリソグラフィをさらに進化させ、より微細なパターンを形成できる次世代技術「High-NA EUV」の導入が始まっており、これに対応する計測・検査装置の需要が高まっています。

世界EUVリソグラフィ向け計測・検査装置の製品タイプと主要用途

市場を牽引する主要プレイヤーと競争環境

このEUVリソグラフィ向け計測・検査装置市場は、高い技術的障壁と長い顧客認定期間が特徴で、市場集中度が高い傾向にあります。主要な企業としては、KLA、ASML/HMI、Lasertec、Applied Materials、Hitachi High-Tech、ZEISS SMT、Onto Innovation、Nova、Brukerなどが挙げられます。

  • KLA: ウェーハ検査や欠陥レビュー、プロセス制御で強みを発揮しています。

  • ASML/HMI: EUVリソグラフィ装置を独占的に供給するASMLグループの一員で、電子線検査技術を強化しています。

  • Lasertec: EUVマスクの検査装置において高い評価を得ており、次世代のHigh-NA EUVマスク検査にも対応しています。

  • ZEISS SMT: EUV光学系やマスク計測において重要な役割を担っています。

世界EUVリソグラフィ向け計測・検査装置の競争構造の概要と主要企業ロゴ

競争の焦点は、単一装置の性能だけでなく、分解能、スループット(処理能力)、誤検出率の低減、データ連携によるプロセス制御、そして顧客との共同開発能力といった総合的な力に移っています。今後は、複数の電子線を使って同時に検査する「マルチビーム電子線検査」や、AIを活用した欠陥分類などが普及し、装置と製造プロセス全体のデータ連携がさらに進むと見られています。

サプライチェーンと未来への展望

EUVリソグラフィ向け計測・検査装置の製造は、非常に複雑なサプライチェーンで成り立っています。上流には高安定光源、電子銃、精密ステージなどの高度な部品があり、中流でそれらが統合されて計測・検査装置となり、下流では先端ロジックファブやメモリメーカー、EUVマスク工場などで活用されます。

世界EUVリソグラフィ向け計測・検査装置のサプライチェーン

この分野の技術的障壁は非常に高く、ナノスケールでの超高精度な計測・検査、高度な欠陥分類アルゴリズム、そして長期的な信頼性の検証が求められます。また、各国政府による半導体産業政策や輸出管理も、サプライチェーンに大きな影響を与えています。

今後、EUVリソグラフィ向け計測・検査装置産業は、2nm以下のロジック工程、AIアクセラレータ、HBMなどの先端メモリ、そしてHigh-NA EUVの導入によって、さらなる成長が続くでしょう。より高分解能な電子線技術、AIによる欠陥認識、そして製造プロセス全体を最適化するデータ連携が、未来の半導体製造を力強く支えていくはずです。

レポートの詳細について

本稿で紹介した市場レポートの詳細については、以下のリンクからご確認いただけます。