未来のコネクテッド社会を支える!RFインダクタ市場、2035年には約17.2億ドル規模へ成長予測

未来のコネクテッド社会を支える!RFインダクタ市場、2035年には約17.2億ドル規模へ成長予測

スマートフォンから電気自動車、そしてスマート医療機器まで、私たちの身の回りにある多くの電子機器は、目に見えないところで「RFインダクタ」という小さな電子部品によって支えられています。このRFインダクタ市場が、今後大きく成長すると予測されています。

SDKI Analyticsが実施した調査によると、RFインダクタの世界市場規模は、2025年の約12.5億米ドルから、2035年には約17.2億米ドルにまで拡大すると見込まれています。この期間における年平均成長率(CAGR)は約3.3%と予測されており、その成長の背景には、さまざまな技術革新と社会の変化があります。

RFインダクタ市場の予測グラフ

RFインダクタとは?

RFインダクタ(高周波インダクタ)は、電波(高周波信号)を扱う電子回路で使われる重要な部品です。電気の「流れにくさ(インダクタンス)」を利用して、特定の周波数の信号だけを通したり、不要なノイズを取り除いたり、信号を効率よく伝送するために調整したりする役割を担っています。まさに、現代の通信技術やエレクトロニクスの「縁の下の力持ち」と言えるでしょう。

RFインダクタが未来を動かす理由

RFインダクタ市場の成長を牽引する主な要因は、以下の3つの大きなトレンドです。

5Gインフラの拡大とスマートデバイスの進化

第5世代移動通信システム、通称5Gの普及は、RFインダクタの需要を大きく押し上げています。5G対応のスマートフォンや無線基地局、その他の高周波通信機器では、RFインダクタが「インピーダンス整合」(信号が効率よく伝わるように回路の電気的な抵抗を調整すること)や「フィルタリング」(不要な周波数の信号を取り除き、必要な信号だけを通すこと)、アンテナチューニングといった重要な役割を担っています。

半導体市場全体を見ても、AIインフラ、クラウドコンピューティング、高性能家電製品などの需要に牽引され、2025年4月の世界半導体売上高は前年同月比22.7%増の570億米ドルに達したと報告されています。5G-Advancedネットワークや高周波無線システムの普及が進むにつれて、RFインダクタの重要性はさらに増していくことでしょう。

「走る通信プラットフォーム」へ変貌する自動車

現代の自動車は、単なる移動手段から「走る通信プラットフォーム」へと急速に進化しています。特に電気自動車(EV)の普及は目覚ましく、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2025年の世界EV販売台数は2,000万台を超え、世界の自動車販売台数全体の25%以上を占めるに至っています。

このような自動車には、V2X通信(車とあらゆるモノとの通信)、レーダーモジュール、テレマティクス(通信システム搭載情報サービス)、インフォテインメント・プラットフォーム(情報と娯楽システム)、バッテリー管理システム(BMS)、運転支援技術といった高度な機能が搭載されており、これらすべてがRF信号処理に依存しています。それぞれのシステムには専用のフィルタリングやチューニング用ハードウェアが必要となるため、RFインダクタの需要は今後も高まっていくと見られます。

医療DXとロボティクスが牽引する日本の市場

日本市場では、比較的緩やかながらも年平均成長率(CAGR)3.2%での成長が予測されています。この成長を支えるのは、コネクテッド医療機器、医療のデジタル化(DX)、そしてロボティクスに対する需要の高まりです。

高齢化が進む日本では、医療サービスの質向上や介護者の負担軽減が喫緊の課題となっています。政府は、クラウド型電子カルテ(EMR)の導入や医療データのポータビリティ(持ち運び・連携の容易さ)向上などを通じて、医療DXを推進しています。また、経済産業省と厚生労働省は、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用を促進し、介護の質の向上と高齢者の自立支援を図っています。

これらの動きは、コネクテッド・センサーや無線モジュール、その他のRF対応電子機器に対する新たな需要を生み出し、RFインダクタにとっての新たな市場機会を創出しています。

市場を牽引する技術と地域

RFインダクタ市場では、そのタイプの中でも「多層RFインダクタ」が、2035年には市場の約48%のシェアを占めて主導すると予測されています。多層RFインダクタは、その小型設計が特徴で、スマートフォンやIoTデバイス、小型家電製品など、限られたスペースに多くの機能を詰め込む必要がある高周波回路への搭載に適しています。小型でありながらも、インダクタンスの安定性、サイズ、価格、電気的特性のバランスが取れた性能を提供できる点が強みです。

地域別に見ると、アジア太平洋地域が市場シェアの64%以上を占め、年平均成長率(CAGR)も6.5%と最も高い伸びを示しています。この地域の優位性は、半導体製造、家電製品の組み立て、自動車分野の技術革新が集中していることに加え、インドの再生可能エネルギー導入容量が2025年3月時点で220.10GWに達するなど、再生可能エネルギー設備の拡充も需要を喚起しているためです。

主要企業の最新動向

RFインダクタ市場の主要企業は、技術革新を通じて市場の成長を支えています。例えば、以下のような製品がすでに実用化されています。

  • 2026年4月、太陽誘電(Taiyo Yuden Co., Ltd.)は、スマートフォンやウェアラブル機器の電源回路向けに、積層メタルパワーインダクタ「MCOIL LSCNシリーズ」9品種の量産を開始しました。

  • 2025年4月、Bourns, Inc.は、RF信号処理アプリケーションにおける電力変換向けに設計された、AEC-Q200準拠の車載グレード・チップインダクタ「CWF1610A」「CWF1612A」「CWF2012A」シリーズを発売しました。

これらの動きは、RFインダクタが多岐にわたる分野で不可欠な部品として、その進化を続けていることを示しています。

まとめ

RFインダクタは、私たちの生活をより便利で豊かにする5G通信、スマートカー、そしてスマートヘルスケアといった先端技術の発展に欠かせない、まさに「小さな巨人」です。目立たない存在かもしれませんが、その進化が未来のコネクテッド社会を形作っていくことは間違いありません。今後、この市場がどのように成長し、私たちの生活にどのような変化をもたらすのか、その動向に注目していきましょう。

RFインダクタ市場に関する詳細な情報はこちらからご覧いただけます。