東陽テクニカ、量子コンピューターを産総研「G-QuAT」に設置
2026年8月14日、株式会社東陽テクニカは、フィンランドのIQM Quantum Computers(以下、IQM社)から購入した超電導型量子コンピューター「IQM Radiance」を、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が運営する「量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(以下、G-QuAT)」に設置すると発表しました。
これは、民間企業が自社の投資で導入した量子コンピューターをG-QuATに設置する国内初の事例となります。この取り組みは、量子コンピューターの利用機会を広げ、新たなユースケース(利用事例)の創出や研究開発の促進、そして未来を担う人材の育成に貢献し、日本における量子技術の社会実装を加速させることを目指しています。

なぜ量子コンピューターが注目されるのか?
量子コンピューターは、量子力学の不思議な現象(重ね合わせやもつれなど)を利用して計算を行う、これまでのコンピューターとは全く異なる次世代の計算機です。従来のコンピューターでは膨大な時間がかかったり、そもそも計算が不可能だったりするような複雑な問題を、高速で解く能力を持つと期待されています。
具体的には、新素材の開発、創薬、自動運転の最適化、金融モデリング、さらには環境工学や暗号通信といった多岐にわたる分野で、革新的なブレークスルーをもたらす可能性を秘めています。まだ研究開発段階にありますが、その潜在能力の高さから、世界中で開発競争が繰り広げられています。
今回設置される「IQM Radiance20」は、20量子ビット(量子コンピューターの計算能力を示す単位)を持つハイエンドモデルの超電導型量子コンピューターです。超電導型量子コンピューターとは、電気抵抗がゼロになる極低温状態を利用して量子ビットを安定させ、計算を行う方式の量子コンピューターを指します。

G-QuATとの連携で加速する日本の量子戦略
G-QuATは、産総研が2023年7月に設立した、量子技術の産業化を見据えた世界有数の研究開発拠点です。ここでは、量子コンピューター、AI(人工知能)、HPC(High Performance Computing:高性能計算)を融合した研究開発や産業応用、そして人材育成が推進されています。G-QuATは、量子技術分野におけるグローバルなビジネスエコシステム(生態系)の中核となることを目指しています。
東陽テクニカは、このG-QuATが量子技術に関する多様な研究・開発が行われる最適な場所であると判断し、2026年8月6日付で産総研と賃貸借契約を締結しました。2026年末までにIQM社から納入され、2027年初頭からの稼働が予定されています。
稼働後は、研究機関、大学、企業といった国内の幅広い利用者に向けて、オンプレミス(施設内での直接利用)およびクラウド経由の両方で利用機会が提供され、共同研究やユースケースの創出が図られます。
日本が目指す「量子未来社会」
日本政府は、2030年までに「量子技術の国内利用者1,000万人」「量子技術による生産額50兆円」といった野心的な目標を掲げています(内閣府「量子未来社会ビジョン」2022年4月22日より)。
今回の東陽テクニカと産総研G-QuATの連携は、これらの目標達成に向けた重要な一歩となります。産総研の益一哉センター長は、「今回の設置は、国内における量子技術の実機活用と産業応用を加速する重要な一歩」とコメントし、G-QuATとして産業界の挑戦を支援し、日本発の量子技術の社会実装とエコシステム形成に貢献していく意向を示しています。
東陽テクニカは、今後も世界のパートナーと連携し、量子コンピューターや量子センシング(量子力学の原理を利用して、極めて高い精度で物理量などを検出する技術)のユースケース創出、新たなビジネスモデルの開発、そして量子人材の育成を推進し、日本における量子技術の社会実装を強力に推進していくとしています。
東陽テクニカの量子ソリューション事業
東陽テクニカは、IQM社との販売代理店契約を通じて超電導型量子コンピューターの販売を手掛けるほか、量子センシング分野では、ダイヤモンド量子センサーが発する微弱光を検出する高感度イメージングカメラを製造・販売する英国Raptor Photonics Limitedや、ダイヤモンドNVセンター(ダイヤモンド中の窒素原子と空孔が対になった欠陥で、量子センシングに応用される)を利用した量子教育キット「Quantum Edukit」を製造・販売するスイスQZabre AGとも販売代理店契約を締結し、事業を拡充しています。
また、日本量子コンピューティング協会が実施する検定試験の受験費用支援などを通じて、量子技術者の育成にも積極的に取り組んでいます。
関連情報
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東陽テクニカ ニュースリリース「東陽テクニカ、IQM社製 量子コンピューターの導入を決定」:
https://www.toyo.co.jp/news/detail/id=46477 -
産総研「G-QuAT」Webサイト:
https://unit.aist.go.jp/g-quat/ -
内閣府「量子未来社会ビジョン」:
https://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/ryoshi_gaiyo_print.pdf -
株式会社東陽テクニカ Webサイト:
https://www.toyo.co.jp/



