開発の背景:なぜ今、新しいパワーモジュールが必要なのか?
EVの普及に伴い、車両全体の軽量化や動力システムの省スペース化がますます重要になっています。特に、モータを動かすインバータなどのパワーエレクトロニクスは、高効率化と同時に、発熱量の増加という課題を抱えています。この課題を解決し、インバータをさらに小型・薄型化しながら、より大きな電力を扱えるようにするため、世界中で次世代パワーモジュールの研究開発が進められてきました。
開発の概要:小型化と高信頼性を両立
このたび開発されたパワーモジュールは、東北大学が目指す世界最高峰の高出力密度インバータの構想に対し、住友ベークライトが持つ独自の高機能樹脂製品群を組み合わせることで実現しました。
樹脂製の絶縁基板やエポキシ封止樹脂の材料特性を最適化することで、モジュールの反り(ゆがみ)を大幅に低減。さらに、銀セミシンタリング接合材(銀の微粒子を低温・低圧で固めて接合する技術)を採用することで、冷却器との接合信頼性を飛躍的に向上させました。これにより、インバータの出力密度300kVA/Lという高い性能と信頼性を備えたパワーモジュールが実現しています。
3つの技術的特長:何がすごいのか?
1. 樹脂絶縁基板による反り抑制
従来のパワーモジュールでは、セラミック製の絶縁基板が使われていました。しかし、セラミックと銅の熱膨張率(温度変化による伸び縮みの割合)の違いが大きく、モジュールに反りが発生しやすいという課題がありました。今回の開発では、樹脂製の絶縁基板を採用することで、銅との熱膨張率のミスマッチを大幅に低減し、モジュールの反りを20マイクロメートル以下に抑えることに成功しました。
2. 熱抵抗の低減と実装性向上
モジュールの反りが抑制されたことで、モジュールと冷却器を接合するサーマルインターフェイスマテリアル(TIM:熱伝導性の材料)を薄く塗ることが可能になりました。TIMが薄くなることで、熱抵抗(熱の伝わりにくさを示す指標。低いほど熱が伝わりやすい)が大幅に低減され、効率的な冷却が実現します。これにより、冷却器との高信頼性接合が確保され、モジュールの実装性(組み込みやすさ)も飛躍的に向上しました。
3. 低温・無加圧 銀セミシンタリング接合材
新しい銀セミシンタリング接合材は、従来の半田や焼結銀接合のように高温・高圧を必要とせず、低温・無加圧で接合できるのが大きな特長です。これにより、モジュールにかかる熱応力(熱によるストレス)が減り、信頼性が向上します。また、この接合材は高密着で弾性率(変形しにくさ)が低いという特性も持ち合わせており、冷却器との接合層が100マイクロメートル以下の薄さでも、高い信頼性と耐久性を発揮します。

未来への貢献:私たちの生活はどう変わる?
この革新的な技術により、パワーユニット(電力変換装置)の体積を業界標準と比較して約2分の1にすることが可能になります。これにより、EVの車内スペースをより有効活用できるようになり、居住空間や収納性の向上が期待されます。



この成果は、2026年6月にドイツで開催された世界最大級のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe 2026」にて発表されました。
PCIM Europe 2026公式サイト: https://pcim.mesago.com/nuernberg/en.html
住友ベークライトと東北大学は、2025年1月に「次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所」を設立し、材料開発から構造設計、プロセス開発、性能評価、さらには社会実装まで、幅広い領域で研究開発を進めています。この共同研究体制が、次世代の電動化社会を支える基盤技術の発展を加速させていくことでしょう。
関連情報
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住友ベークライト株式会社: https://www.sumibe.co.jp/topics/2026/it-materials/0804_01/index.html
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本件に関するお問い合わせフォーム: https://inquiry.sumibe.co.jp/m/j_pes



