NanoFrontier、宮城県補助金に採択!ナノ粒子連続製造プロセスで未来の素材産業を加速

ナノ粒子が拓く未来:医療から新素材まで

ナノ粒子とは、10億分の1メートル(ナノメートル)という非常に小さなサイズの粒子を指します。物質をこれほど微細にすることで、表面積が劇的に増え、反応性、分散性、そして生体内での吸収性といった特性が飛躍的に向上します。この特性は、水に溶けにくい医薬品の有効成分を高効率で体内に届ける技術や、高性能な機能性材料の開発において、非常に大きな価値を生み出します。

現在、ナノ材料の世界市場は急速な成長を遂げており、2025年の約185億USD(約2兆8000億円)から2033年には約546億USD(約8兆2000億円)へと、年平均成長率14.45%で拡大すると予測されています。ナノテクノロジー市場全体では、2024年の約912億USD(約13兆7000億円)から2032年には約3,327億USD(約50兆円)へと、年平均成長率17.6%で成長すると見込まれています。この市場の成長は、ナノ粒子がもたらす革新への期待の表れと言えるでしょう。

ナノ材料およびナノテクノロジーの市場規模予測を示すグラフ

従来の製造課題とNanoFrontierの独自技術

ナノ粒子への需要が高まる一方で、その製造基盤はまだ十分に整っていません。産業界で主流の「湿式粉砕法」は、液体中で材料を粉砕する一般的な方法ですが、「バッチ方式」(一定量の材料を一度に処理する方式)のため、大量生産には向かず、稼働率を上げにくいという課題がありました。また、粉砕媒体に由来する金属の摩耗粉などが混入するリスクもあり、高品質なナノ粒子を安定して供給することが難しい状況です。

NanoFrontierは、独自のナノ粒子生成技術を基盤としています。この技術は、粉砕による接触を伴わないため、異物混入のリスクが原理的に低く、幅広い化合物のナノ粒子化に対応できるという特長があります。これまでもラボスケール(実験室規模)での連続合成は実現していましたが、より高濃度で長時間の連続運転、そして多様な化合物への適用という点で、産業利用可能な水準にはまだ到達していませんでした。

量産化へ向けた3つの柱

今回の補助事業を通じて、NanoFrontierはナノ粒子の製造プロセスを産業利用可能な水準へと引き上げるための具体的な取り組みを推進します。実施期間は令和8年8月から令和10年3月までの最長2年間です。

1. 量産化・高生産性化

連続フロー製造機(材料を途切れることなく供給し、製品を連続的に生産する装置)の「スケールアップ」(ラボ規模から生産規模への拡大)設計・製作を行います。これにより処理量を段階的に引き上げ、長時間にわたり止まらずに動き続けるための工程設計を組み込むことで、産業利用に耐える連続運転を実現します。

2. 高濃度化

ナノ粒子は濃度が高くなるほど粒子同士が凝集しやすくなるという課題があります。この課題に対し、製造工程と濃縮・安定化工程を一体で設計し、顧客評価に必要な濃度水準で安定した「分散液」(固体粒子が液体中に均一に散らばった状態の液体)を製造する条件を確立します。また、粒径と粒度分布のばらつきを抑え、ロット間で再現できる品質基準も整備します。

3. 複数化合物への適用

これまで化合物ごとに経験則で個別最適化されてきた運転条件を、「溶解度パラメータ」(ある物質が他の物質にどれくらい溶けやすいかを示す指標)や分子量などの物性データから導き出す設計ルールとして体系化します。これにより、新たな化合物への展開に要する時間を短縮し、より多くの素材開発に貢献できるようになります。

ナノ粒子分散液の技術開発事業の全体像を示し、高生産性・高濃度安定分散技術を量産化、高濃度化、複数化合物への適用という3つの柱で進めることを説明する図

NanoFrontierの代表取締役である井上誠也氏は、「ナノ粒子化がもたらす価値は広く認識されていますが、それを安定した品質で継続的に供給できる製造基盤は、いまだ社会に十分に整っていません。本補助事業の採択により、実験室で確認された現象を、止まらずに動き続ける製造プロセスへ翻訳する取り組みを加速できることを大変喜ばしく思います。宮城から、新しい素材産業の供給基盤をつくってまいります」とコメントしています。

この取り組みは、医薬品や機能性材料といった分野において、これまで実現できなかった高品質・高効率なナノ材料の供給を可能にし、私たちの生活を豊かにする新たな製品の誕生につながるでしょう。

宮城県新規参入・新産業創出等支援事業費補助金(地域イノベーション創出型)について

本補助事業は、宮城県が実施するもので、産学官連携による新産業の創出および高度電子機械産業等への市場参入の推進を図るため、県内企業が大学等と連携して行う技術開発や商品開発に要する経費を補助します。補助率は補助対象経費の2分の1以内(小規模事業者は3分の2以内)、補助限度額は1件あたり年間500万円、補助事業期間は最長2年間です。

NanoFrontier株式会社について

NanoFrontier株式会社は、2025年4月7日に設立された東北大学発のスタートアップ企業です。有機ナノ粒子化技術を核に、試薬品・機能性材料の研究開発、製造および販売、製造受託、技術ライセンス供与、コンサルティングを手掛けています。