注射から解放される未来へ:摂南大学がバイオ医薬の新たな投与法を開発
医療の進歩とともに、私たちの生活を豊かにする「バイオ医薬」が注目を集めています。これは、生物の細胞や生体物質を利用して作られる薬のことで、糖尿病治療に使われるインスリンや、がんの治療に使われる抗体医薬などがその代表です。しかし、これらの薬の多くは、体内で分解されやすかったり、特定の場所にしか作用しなかったりするため、現状では患者さんが注射で投与を受けるケースが9割を占めています。
注射による投与は、痛みや通院の負担、自己注射の手間など、患者さんにとって少なからずストレスとなります。この課題を解決するため、摂南大学薬学部の八木晴也助教は、バイオ医薬を注射なしで投与できる革新的な技術の研究を進めています。
薬を狙った場所へ届ける「DDS」の力
八木助教の研究の中心にあるのは、「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」という技術です。DDSとは、薬を体内の必要な場所へ、必要な量だけ、必要なタイミングで届けるための技術のこと。薬が全身に広がることで起こる副作用を減らし、薬の効果を最大限に引き出すことを目指します。
薬が体内に吸収されにくい、あるいは意図しない組織に作用して副作用を引き起こすといった問題をDDSが解決することで、より安全で効果的な治療につながる可能性があります。
新たな吸収促進剤「膜透過ペプチド固定化高分子」とは
八木助教が開発したのは、「膜透過ペプチド固定化高分子」という独自の吸収促進剤です。これは、細胞の膜を通り抜けやすい性質を持つ特殊な「ペプチド」(小さなタンパク質のようなもの)と、私たちの体内にも存在するような安全性の高い「高分子」(たくさんの分子が結合した大きな分子)を組み合わせたものです。
この吸収促進剤をバイオ医薬と混ぜ合わせることで、鼻などの粘膜から体内への薬の吸収を飛躍的に促進できることが確認されました。これにより、今まで注射でしか投与できなかったバイオ医薬が、点鼻薬や点眼薬のように、より手軽に、そして患者さんの負担を少なく投与できるようになる可能性が見えてきました。

患者さんの負担を軽減し、医療の未来を拓く
この研究が進めば、患者さんは注射の痛みから解放され、自宅で簡単に薬を投与できるようになるかもしれません。これにより、通院の頻度が減り、日々の生活の質(QOL)が向上することが期待されます。また、医療従事者の負担軽減にもつながるでしょう。将来的には、より多くの人々が安全で効果的な治療を受けられる社会の実現に貢献する技術と言えるでしょう。
この研究は現在、開発段階にあり、2026年8月27日~28日に東京ビッグサイトで開催される「大学見本市2026~イノベーション・ジャパン」にて、「注射に代わる、負担の少ない治療を目指す新技術」(ブース番号:H-081)として出展される予定です。
摂南大学では、今回の研究を紹介するWEBマガジン「摂南タイムズ」を配信しています。高校生の進路選択にも役立つよう、専門的な内容をかみ砕いて表現されており、大学の教育・研究・学生支援について定期的に紹介されています。
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摂南タイムズ 八木晴也助教の研究紹介:https://www.setsunan.ac.jp/times/detail/46



