AI時代に問われる「知」と「組織」の未来:社会実験コミュニティDICTが新刊2冊を同時発売

組織の変革を問う『イノベーションの最適解』

一冊目の『イノベーションの最適解〜秩序ある無秩序が織り成す無駄のない無駄な世界』は、組織や働く場をどのように組み替えるべきかという問いに焦点を当てています。

2022年3月に東京・代々木で始まった社会実験コミュニティ「DICT」は、知人や友人に頼らずゼロから人を集め、4年間で140件のイベントやプロジェクト、18社の法人設立を達成しました。本書は、これらの成果が計画通りに生まれたわけではないという事実に光を当てています。

著者は「イノベーションの最適解」を、特定の成功法則ではなく、新しいイノベーションが絶え間なく生まれ続ける「土壌」と定義します。狙い通りのイノベーションを設計することが難しいからこそ、カオスの中から自然に秩序が生まれる「自己組織化」(外部からの指示なしに、システム内の要素が相互作用することで自然に秩序を形成する現象)を受け入れる場が必要であると提唱。これを「秩序ある無秩序が織り成す無駄のない無駄な世界」と表現しています。

この着想の原点には、著者が大学院で分子生物学を学び、生命が複雑な相互作用の中から秩序を立ち上げていく様子を観察した経験があります。一見「無駄」に見えるゆらぎや遊びこそが、システム全体のしなやかさを支えるという洞察を社会に応用したのが、DICTという実験だったのです。

本書は紙版(文庫)が990円(税込)、電子版が880円(税込)で本日発売されました。

Amazon商品ページ:
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AI時代の日本の戦略を提示する『語りえぬものの値打ち』

二冊目の『語りえぬものの値打ち〜AIには真似できない、日本という戦略』は、個人が持つ知の何が価値として残るのかという内側からの問いに向き合います。

AIが言葉にできることを限りなく安価にしていく現代において、哲学者マイケル・ポランニーが提唱した「暗黙知」(言葉や文章では表現しにくい、個人の経験に基づいた知識やスキル。職人の勘や熟練の技などがこれにあたる)の価値はますます高まると本書は説きます。お味噌汁の絶妙な塩加減や、職人の「なんとなく、こうなんだ」という感覚に宿るものが、AIには真似できない希少な価値として残るのです。

本書は、「匠の暗黙知 × Agentic AI(自律的に目標を設定し、行動を計画・実行できるAI) × プロデューサーの仕事 = 世界に届く新しい価値」という変換式を軸に構成されています。ここでいう「プロデューサー」は、匠の言葉にならない知に共鳴する「現場感受性」、Agentic AIを使いこなす「AIリテラシー」、そして現場の知を社会の価値へと翻訳する「社会構想力」の三つを備え、人とAI、そしてまだ存在しない価値を結びつける職能を指します。著者は、この職能が特別な才能ではなく、後天的に育成可能であると強調しています。

さらに、本書は「加工貿易2.0」という国家戦略構想を提案しています。戦後日本が資源を輸入し加工して世界に届けたように、これからは暗黙知という資源をAgentic AIで加工し、世界に届けるというものです。グローバル化の中で批判されてきた職人気質や現場力、品質への執着を、AI時代の新たな資源として捉え直す視点は、日本の未来を考える上で示唆に富んでいます。

本書はKindle版が本日より配信開始されており、価格は999円(税込)です。紙版(文庫)は9月に刊行予定で、予価は999円(税込)です。

Amazon商品ページ:
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二つの書籍に共通するメッセージ

方向性の異なる二冊ですが、実は『イノベーションの最適解』のわずか数行の記述が、『語りえぬものの値打ち』の一冊分の主題となりました。生成AIの進化が著しい現代において、言語化されていない暗黙知を持つ専門家や職人の価値が高まり、それらをつなぎ合わせるプロデューサーの存在意義が増すという予感が、もう一冊の核となっています。

そして、二つの書籍の結びも響き合っています。『イノベーションの最適解』は「まずは小さなワクワクから一歩を踏み出そう」と呼びかけ、会社を辞める必要も人生を一変させる必要もないと説きます。一方、『語りえぬものの値打ち』は「誰もがプロデューサーになれる」と論じ、匠の知とAIを結ぶ職能が育成可能であると示します。場を変えることと、自分の知を活かすこと。どちらも特別な誰かの話ではなく、誰もが実践できることだという共通のメッセージが込められています。

著者・山本晋也氏について

山本晋也氏のポートレート

著者である山本晋也氏は、株式会社Link & Innovationをはじめとする多数の法人で代表取締役や役員、顧問などを務め、これまでに国内外40社以上の立ち上げに参画してきました。また、ビジネスの傍ら、大阪大学や神戸大学、法政大学など複数の大学で招聘教授や客員教授として、イノベーション・マネジメント、技術経営、政策科学、認知科学、人工知能、デジタルヘルスに関する学術・臨床研究、教育活動にも従事しています。中央政府各省庁の政策検討委員会委員なども歴任しており、イノベーション・マネジメントの最前線で実践と研究を両立させている人物です。

山本晋也プロフィール:
https://www.virgo-all-creation.com/shinya-yamamoto

DICT Publishingの編集方針とDICTコミュニティ

DICT Publishingは、同一の主題を専門的な予備知識なしで読める一般書と、より厳密な理論的検討と実証的議論を展開した学術書の二層で世に問う編集方針をとっています。実際、『語りえぬものの値打ち』の姉妹書として、より専門的な『匠の暗黙知とAgentic AI ──プロデューサー論から加工貿易2.0へ』が今秋に刊行予定です。

TECHNOLOGY DESIGN INNOVATION CO-CREATIONのロゴ

「DICT」(Design, Innovation, Co-Creation, Technology)は、2022年に山本晋也氏によって創設されたコミュニティです。Web 3.0(ブロックチェーン技術などを基盤とし、中央集権的な管理者が存在しない分散型のインターネット)とDAO(分散型自律組織:特定の管理者が存在せず、参加者による投票などで運営される組織)を基盤とし、デザイン、イノベーション、共創、テクノロジーを融合させた社会実験を通じて、新しい価値創造の形を模索しています。国内外に多様な拠点を持ち、これまでに18社の法人を生み出しており、起業家や研究者、プロデューサー、アーティスト、クリエイターが集う国際的な共創の場として注目を集めています。

株式会社Virgoコーポレートサイト:
https://www.virgo-all-creation.com/

これらの書籍は、現代人が抱える漠然とした不安に対し、組織と個人の両面から具体的な行動変容と未来への希望を提示してくれるでしょう。私たちの働き方や社会のあり方を再考するきっかけとなる一冊となるはずです。