半導体製造を支える「光の彫刻家」たち
リソグラフィ装置には、使用する光の波長や方式によっていくつかの種類があります。主なものとしては、i線(365nm)、KrF(248nm)、ArF(193nm)といった紫外線を用いるものや、さらに短い波長の極端紫外線「EUV(Extreme Ultraviolet)」を用いる最先端のシステムがあります。
EUVリソグラフィ:微細化の最前線
現在、半導体の微細化を牽引しているのがEUVリソグラフィシステムです。EUVは非常に短い波長(13.5nm)の光を使うことで、従来の技術では難しかった10ナノメートル(nm)以下の極めて微細な回路パターンを形成できます。これにより、より高性能で省電力な半導体チップの製造が可能になります。
EUV技術は、回路を複数回露光する「マルチパターニング」の負担を軽減し、製造プロセスを簡素化する効果も期待されています。ASML社は、このEUVシステムの主要なサプライヤーとして市場をリードしており、さらに解像度を高める「高NA(Numerical Aperture、開口数:レンズの集光能力を示す数値)EUV」システムの産業化も進めています。高NA EUVは、次世代の最先端半導体製造における主要なプラットフォームになると考えられています。
多様なニーズに応える技術群
EUVが最先端を走る一方で、i線、KrF、ArFといった従来の技術も依然として重要です。これらの技術は、成熟したプロセスや特定の用途向けの半導体製造において、コスト効率の良い生産能力を支えています。例えば、ニコンはi線およびKrFの生産装置への活発な需要があると指摘しています。
また、キヤノンは、物理的な型を押し付けてパターンを転写する「ナノインプリントリソグラフィ(NIL)」の商用化を進めています。この技術は、比較的低コストで高解像度なパターン形成が可能であり、新たな選択肢として注目されています。
ディスプレイと先進パッケージングへの広がり
リソグラフィ技術は、半導体チップ製造だけでなく、スマートフォンやテレビに使われる「FPD(Flat Panel Display:フラットパネルディスプレイ)」の製造にも不可欠です。LCDやOLEDディスプレイの大型ガラス基板に回路パターンを形成するFPDリソグラフィシステムは、Gen 10.5世代の大型マザーガラスや4K/8Kディスプレイ生産のニーズに応える形で進化を続けています。
さらに、近年急速に発展しているのが「アドバンスト・パッケージング」分野です。これは、複数の半導体チップを効率的に接続・集積するための技術で、リソグラフィが「RDL(再配線層)」や「PLP(パネルレベル・パッケージング)」といった工程で活用されています。キヤノンのFPA-8000iWやニコンのDSP-100といった大型パネル対応のリソグラフィプラットフォームは、この分野での戦略的価値を高めています。
AIとHPCが牽引する未来
リソグラフィ装置市場の成長を牽引する最大の要因は、AI(人工知能)やHPC(High Performance Computing:高性能計算)の需要急増です。これらの技術は、膨大なデータを高速で処理するために、より高性能で集積度の高い半導体チップを必要とします。リソグラフィ技術の進化は、AIのさらなる発展や、自動運転、IoT(モノのインターネット)といった未来の技術革新を支える基盤となります。
また、半導体技術は地政学的な戦略的資産としての重要性も増しており、輸出規制なども市場の動向に影響を与えています。
まとめ
リソグラフィ装置は、私たちのデジタル社会の進化に欠かせない「縁の下の力持ち」です。最先端のEUV技術から、ディスプレイや先進パッケージング向けの技術まで、その進化は今後も止まることなく、より豊かで便利な未来を創造していくでしょう。この市場の成長は、AIやHPCといった次世代技術の発展と密接に結びついており、その動向から目が離せません。
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