未利用熱で発電するelleThermo、シリーズAで8.3億円を調達し累計12億円に到達 – 中低温熱の電力変換で持続可能な社会へ

elleThermoがシリーズAで8.3億円を調達、未利用熱発電の社会実装を加速

東京科学大学発のスタートアップである株式会社elleThermo(エレサーモ)が、シリーズAラウンドで総額8.3億円の資金調達を実施したことを発表しました。これにより、同社の累計資金調達額は約12億円に達しました。

この資金調達は、半導体増感型熱利用発電(STC)という独自の技術を活用し、これまで利用が難しかった未利用熱エネルギーを電力に変換することを目指すものです。今回の資金は、STCセルの研究開発の加速、試作ラインの立ち上げ、および人材採用・組織機能の強化に充てられます。

資金調達の概要

未利用熱とは?なぜSTC技術が重要なのか

世界的に電力需要が増加し、脱炭素化が求められる中で、今まで十分に活用されてこなかった「未利用熱エネルギー」への注目が高まっています。特に、約30~60℃の「中低温域の熱」は、工場、データセンター、温泉・鉱山地熱、家電、太陽光熱、モビリティなど、社会のさまざまな場所に広く存在しています。

従来の発電技術では、このような中低温の熱から効率的に電力を生み出すことは困難でした。そこでelleThermoが開発を進めるのが、半導体増感型熱利用発電(STC:Semiconductor-Sensitized Thermal Cell)です。

STCは、化学系の太陽電池である色素増感型太陽電池の原理を応用し、太陽光の代わりに「半導体の熱励起」を利用して発電する熱エネルギー変換技術です。室温程度の低い温度帯の熱でも発電できる点が大きな特徴です。一定温度下で発電が終了しても、スイッチを切って電力を取り出さない状態に移行させることで、再度放電が可能になります。

この技術は、データセンターの排熱を利用したリチウムイオン電池の充電や、海底地熱によるLED点灯など、幅広い用途での可能性が報告されています。

資金調達の詳細と今後の展望

今回のシリーズAラウンドは、Spiral Innovation Partners株式会社をリード投資家として、総額8.3億円の第三者割当増資により実施されました。既存株主である株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ、ヒューリックスタートアップ株式会社、株式会社環境エネルギー投資、みずほキャピタル株式会社、KDDI Green Partners Fund、Sony Innovation Fundに加え、新規株主としてJICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社、株式会社タクマが参加しています。

調達された資金は主に以下の目的に使われます。

  1. 研究開発費: STCセルの要素技術向上、セルの積層化と大面積化による出力向上、商用化に向けたプロトタイプの開発。
  2. 試作ラインの立ち上げ: パイロット生産(試験的な少量生産)に向けた試作ラインの立ち上げ、および量産化に向けた製造設備投資と小型設備でのパイロット製造実証。
  3. 人材の採用・組織機能の強化: 研究開発、エンジニア、試作ライン運営、事業開発、管理体制の拡充。

elleThermoは、この資金調達により、2027年度までにパイロット生産に向けた試作ラインを立ち上げる計画です。現在、単セルあたりミリワット級(1000分の1ワット級)の発電出力を実現していますが、今後はワット級、さらには50W級の発電出力を有するサーモパネルの開発・商用化を目指しています。将来的には、未利用熱を活用した「分散型電源」(電力を消費地の近くで作り、送電ロスを減らすシステム)の社会実装を推進し、エネルギーの地産地消や電力需要の効率化を通じて、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献していくとしています。

elleThermoのチーム

出資者からの期待

リード投資家であるSpiral Innovation Partners株式会社の岡 洋氏と鎌田 和博氏は、「elleThermoのSTC技術は革新的であり、前回の資金調達から着実に開発を進捗させ、社会実装に向けて高い期待ができる」とコメントしています。

JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社の林 隼氏も、「未利用の低温熱を電力として利活用し、日本の脱炭素社会の実現に貢献しうる」と期待を寄せています。

また、既存株主からも、技術の進捗と社会実装への確信を示すコメントが寄せられています。特に、KDDI Green Partners Fund / KDDI株式会社の武田 裕子氏は、同社データセンターでの実証実験を通じてSTC技術の確立と進化を共に推進してきたことに触れ、今後も強固なインフラを実証フィールドとして提供し、社会実装を支援していくと述べています。

elleThermoについて

株式会社elleThermoは、東京科学大学(旧・東京工業大学)発のコア技術であるSTCを用いた未利用排熱の活用による電力供給システムの社会実装に取り組んでいます。安全・安心で、資源に依存しないエネルギー問題・資源問題の解決をミッションとしています。

会社概要

  • 会社名:株式会社elleThermo

  • 代表者:代表取締役 生方 祥子

  • 本社所在地:東京都港区芝浦三丁目3-6 東京科学大学キャンパス・イノベーションセンターINDEST

  • 設立:2023年2月

  • 事業内容:再生可能エネルギー発電及び電化製品・機器、その他の新エネルギーに係る製品・機器の製作・販売並びにそれらのメンテナンス・コンサルティング・知識の社会への普及業務

STC技術の原理に関する詳細情報は、以下の公開総説やYouTubeチャンネルで確認できます。

elleThermoは、共同研究開発や協業に関心のある企業、および熱発電の普及を通じて持続可能な社会の実現に貢献する仲間を募集しています。関心のある方は、同社のウェブサイトから問い合わせが可能です。