未来の電子機器を支える「貫通穴付ガラス基板」が急成長、2026年には2億ドル市場へ

貫通穴付ガラス基板(TGV)とは?

貫通穴付ガラス基板(TGV)とは、文字通りガラスの板に、髪の毛よりも細い「貫通穴」を無数に開け、その穴の中に銅などの金属を埋め込むことで、電気を通せるようにした最先端の材料です。これにより、ガラス基板の表と裏を電気的に接続できるようになります。

何がすごいのか?

従来の半導体パッケージでは、シリコンなどの素材が使われてきましたが、ガラスには以下のような優れた特性があります。

  • 電気信号のロスが少ない(低誘電損失):電気信号のエネルギーロスが少ないことを指し、高速なデータ通信が可能になります。

  • 電気が流れにくい(高絶縁性):電気が流れにくい性質を指し、部品同士の干渉を防ぎ、安定した動作を実現します。

  • 熱に強い(熱膨張係数(CTE)の調整性):温度変化による材料の伸び縮みの度合いを指し、これが調整できることで、他の部品との組み合わせにおいて信頼性が高まります。

  • 非常に平ら(優れた平坦性):ガラス表面が非常に平らであるため、より精密な部品の配置が可能になります。

これらの特性により、TGVは半導体チップをより高性能に、より小型に、そしてより安定して動作させるための「縁の下の力持ち」として期待されています。

成長著しいTGV市場:2026年には2億ドル規模へ

QYR(恒州博智)の予測によると、貫通穴付ガラス基板の世界市場は急速な拡大を見せています。2025年には1億58百万米ドルの売上高でしたが、2026年には2億2.38百万米ドルに達し、さらに2032年には5億98百万米ドルまで成長すると見込まれています。2026年から2032年までの年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は19.79%と予測されており、その成長は目覚ましいものがあります。

特に中国市場は、2025年の35.08百万米ドルから2032年には1億71百万米ドルへと拡大し、世界シェアも22.18%から24.86%に達する見通しです。北米、日本も消費市場として大きな割合を占めています。

TGVが変える未来:私たちの身近な製品からAIまで

TGVは、私たちの生活をより豊かにする様々な製品に応用が期待されています。

  • 消費電子機器:スマートフォンやウェアラブル機器など、小型化と高性能化が求められる製品において、TGVの低損失特性が威力を発揮します。

  • 車載電子機器:自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の進化に伴い、車載半導体の性能向上が不可欠です。

  • 高性能コンピューティング(HPC)やAI関連半導体:AI技術の発展には、膨大なデータを高速で処理する半導体が必要であり、TGVはその性能向上に貢献します。

これらの分野で、TGVは半導体チップ間の接続を効率化し、製品全体の性能と信頼性を高める役割を担います。例えば、最新のスマートフォンがより薄く、より多くの機能を搭載できるのは、このような先端パッケージ技術の進化があるからです。

技術開発の最前線と今後の展望

貫通穴付ガラス基板の量産化には、微細な穴を正確に開ける技術、ガラスを薄く加工する技術、穴の中に均一に銅を充填する技術、そして高い信頼性を確保する技術など、多くの課題があります。しかし、LPKFなどの主要メーカーは、すでに実用化を進めながら、最大300mmウェハ(半導体製造で使われる円盤状の基板)や大型パネル(より大きな板状の基板)への対応、最小5μm(1ミリの200分の1)級の加工寸法を実現するなど、さらなる技術開発を進めています。

現在、この技術はすでに実用化が進んでいますが、さらなる高性能化とコスト削減に向けた研究開発が活発に行われています。将来的には、「ガラス材料の製造」から「TGVの形成」、「銅の充填」、「配線(RDL:再配線層)」、「検査」までを一貫して行う量産プロセスの確立が、市場競争力を左右する重要な要素となると考えられます。

貫通穴付ガラス基板の進化は、私たちが想像する以上のスピードで、未来の電子機器の可能性を広げていくことでしょう。より速く、より小さく、よりスマートな世界が、この技術によって実現するかもしれません。

レポート詳細

本記事は、QY Research発行のレポート「貫通穴付ガラス基板―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」に基づいています。