JFEテクノリサーチ、革新的「ナノ3DX線顕微鏡」で全固体電池・半導体パッケージの非破壊解析を本格化

JFEテクノリサーチ、ハイブリッド型ナノ3DX線顕微鏡「ApexHybrid-210TM」を活用した高精度解析サービスを提供開始

JFEテクノリサーチ株式会社は、キヤノンマーケティングジャパン株式会社が国内で独占販売するSigray(シグレイ)社製のハイブリッド型ナノ3DX線顕微鏡「ApexHybrid-210TM」を導入し、受託分析サービスでの提供を本格的に開始しました。この革新的な装置は、全固体電池や半導体パッケージといった複雑な構造を持つ先端材料の内部を、切断することなく詳細に解析できるため、研究開発の効率化と品質向上に大きく貢献すると期待されています。

先端材料開発における非破壊解析の重要性

近年、全固体電池や半導体パッケージなどの分野では、製品の高性能化、小型化、高容量化が進む中で、材料やデバイスの3次元構造化や多層化が加速しています。しかし、従来の解析方法では、これらの複雑な内部構造を確認するために材料を切断する必要がありました。この破壊的な解析プロセスは、試作から性能評価、破壊、そして解析という開発サイクルを長期化させる要因となっていました。また、切断された断面は局所的な観察にとどまり、材料全体の詳細な内部構造を把握することが困難でした。

このような背景から、材料を傷つけることなく内部構造を細部まで、しかも短時間で確認できる「非破壊3次元解析技術」へのニーズが急速に高まっています。

「ApexHybrid-210TM」の革新的な技術

「ApexHybrid-210TM」は、Sigray社が特許を持つ「精密角度ラミノグラフィ(Precision Angle Laminography, PAL)」という斜入射機構と、直交入射の2つの入射モードを搭載したハイブリッド型のナノ3DX線顕微鏡です。

  • 斜入射モード: このモードでは、最大直径300mm、厚さ20mmという大面積のサンプルを切断することなく、高コントラストかつ高解像度で内部を観察できます。斜入射とは、X線をサンプルに対して斜めから照射する方式で、厚みのあるサンプルの内部を効率よく観察するのに適しています。

  • 直交入射モード: こちらのモードでは、業界最高水準の空間分解能0.40μm以下(0.0004mm以下)を実現しています。空間分解能とは、どれだけ小さなものを見分けられるかを示す指標で、この数値が小さいほど微細な構造を鮮明に可視化できます。

この2つのモードを併用することで、さまざまな形状や大きさの材料に最適な撮像が可能となり、内部構造観察の効率が従来の10~100倍に向上するとされています。これにより、全固体電池や半導体パッケージの研究開発において、内部構造の可視化や欠陥解析を効率的に行い、開発期間の短縮と品質向上を支援します。

受託分析サービスで実現する未来

JFEテクノリサーチは、この「ApexHybrid-210TM」を活用した受託分析サービスを本格化しています。これにより、製造業における先端材料の開発現場は、以下のようなメリットを享受できるようになります。

  • 開発期間の短縮: 破壊検査が不要になることで、試作と解析を繰り返すサイクルが大幅に短縮されます。

  • 品質向上: 材料全体の内部構造や微細な欠陥を非破壊で迅速に特定できるため、製品の品質向上に貢献します。

  • 新たな発見: これまで見えなかった微細な構造や現象を可視化することで、新たな材料開発や機能改善のヒントが得られる可能性があります。

JFEテクノリサーチの電池技術センター副部長である大森氏も、「全固体電池の開発では、サブミクロンレベルの内部構造やその変化が直接性能に関わるため、本機の能力に期待している」とコメントしています。大型のニーズには斜入射CTを、小型のラミネート型電池には直交CTの高品質画像で詳細解析を提供していく考えを示しており、最先端の電子デバイスや複合材料の評価にも威力を発揮すると期待を寄せています。

解析事例

電池分野:全固体電池の内部欠陥検出

JFEテクノリサーチが試作した硫化物系全固体電池Alラミネート型セルにおいて、「ApexHybrid-210TM」の直交入射モードを使用し、電池内で発生したクラックを可視化しました。正極層から負極層に向かってクラックが進展している様子が確認でき、Voxelサイズ0.5μmの測定で、2μm程度以下の微細なクラックも明瞭に検出されています。

全固体電池の内部欠陥検出

電池分野:リチウムイオン電池向け黒鉛負極の高分解能観察

従来型リチウムイオン電池の黒鉛負極に対し、0.09μm/voxelという高分解能で観察を行い、0.3μm以下の微細構造を可視化することに成功しました。

リチウムイオン電池向け黒鉛負極の高分解能観察

電子デバイス分野:先端実装構造の非破壊評価

基板上のCPUを斜入射モードで測定し、試料内部のHybrid-bonding構造を非破壊で可視化しました。配線幅が2μm以下といわれる接合部の配線構造も明瞭に捉え、積層化技術が進展する中で数μmレベルの配線接合評価ニーズに対応できることを実証しています。

先端実装構造の非破壊評価

今後の展望

キヤノンマーケティングジャパンは、「ApexHybrid」シリーズをはじめとするX線顕微鏡・X線分析装置の提供を通じて、高度化する解析ニーズに応え、顧客の研究開発やものづくりの革新に貢献していくとしています。2030年までに「ApexHybrid-210TM」の累積販売台数30台以上を目指しており、この技術が日本のものづくりをさらに進化させる一助となるでしょう。

JFEテクノリサーチ株式会社の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
https://www.jfe-tec.co.jp/

Sigray社製X線分析装置に関する情報は、以下のキヤノンマーケティングジャパンのホームページで確認できます。
https://canon.jp/biz/product/indtech/sigray