九州工業大学、HPIを九工大発スタートアップとして支援
国立大学法人九州工業大学は2026年7月27日、人の身体活動を支援するロボットの研究開発を手掛けるHuman Physical Intelligence株式会社(以下、HPI)を「九工大発スタートアップ」として支援することを決定しました。この決定は、大学の研究成果を社会で役立つ形にする「社会実装」を加速させ、フィジカルAIとロボット分野における新たな価値創造と社会課題の解決を後押しするものです。

HPIは、九州工業大学が長年培ってきたロボティクス(ロボットの設計、製造、運用、応用に関する学際的な分野)や人の身体活動を支援する技術を基盤として設立された企業です。人の身体の特性や動き、さらにはその人の意図までを理解し、一人ひとりに合わせた支援を実現するロボットの研究開発と社会への導入に取り組んでいます。HPIのロゴは、社名「Human Physical Intelligence」の頭文字「H」を人の形に見立て、両腕を広げて人に優しい社会変革を後押しし、すべての人が生き生きと暮らせる社会の実現への思いが込められています。
「フィジカルAI」がもたらす新たな可能性
近年、AI(人工知能)技術はデジタル空間だけでなく、ロボットを通じて現実世界に働きかける「フィジカルAI」として注目を集めています。従来のAIがデータ処理や情報分析を得意とするのに対し、フィジカルAIは物理的な世界で人間と協調して動く点が特徴です。
特に、人の身体活動を支援するロボットには、周囲の環境を認識して自律的に動くだけでなく、利用者の身体特性や動き、力の入れ具合、そして「何をしたいのか」という意図までを理解し、その人に合わせて安全かつ自然に支援する能力が求められます。
HPIが提唱する「Human Physical Intelligence」という考え方は、人間が持つ身体的な知能と、ロボットが持つセンサー(感知装置)、制御技術、AI技術を結びつけ、人とロボットが身体を通じて協力するための新しい知能のあり方を意味します。HPIは、単に人をロボットに置き換えるのではなく、人が本来持っている能力を活かしつつ、必要な部分をロボットが支援することで、一人ひとりの可能性を広げることを目指しています。
研究成果を「使えるプロダクト」へ
大学の研究室で生まれた画期的な技術も、実際に社会で使われる製品やサービスになるまでには多くの課題があります。技術的な有効性の検証だけでなく、使いやすさ、安全性、製造コスト、そしてサービスとしての提供方法など、多岐にわたる側面をクリアしなければなりません。
HPIは、九州工業大学の研究成果を研究室に留めることなく、社会で実際に利用される製品やサービスへと発展させる重要な役割を担います。今回の九工大発スタートアップ支援を活用し、大学との技術・研究面での連携をさらに強化。プロトタイプ(試作品)の開発や改良、ユーザーによる検証、そして実際の使用環境での評価などを進め、人の身体活動を支援するロボットの製品開発を加速させていく計画です。

産学連携と共創で社会実装を推進
HPIは、九州工業大学との連携に加え、一般財団法人トヨタ・モビリティ基金の「Mobility for ALLプロジェクト」にも採択されており、人の移動や身体活動を支援する技術の社会実装に向けた取り組みを推進しています。社会実装を進める上で、実際の生活環境で利用者の声やデータを収集し、それを次の製品開発に反映する「共創型」の開発プロセスを重視しています。
九州工業大学で生まれた研究成果を起点に、大学、企業、財団、自治体、医療・福祉関係者、そして実際に製品を使う人々との連携を広げながら、研究から製品、そして社会実装へとつながるエコシステム(生態系)の構築を目指しています。
関係者コメント
Human Physical Intelligence株式会社 代表取締役CEO 樋口 藍氏

「九州工業大学発スタートアップとして支援対象に選定されたことを大変嬉しく思います。私たちの原点には、九州工業大学で培われてきたロボティクスや人の身体活動を支援する技術に関する研究があります。研究として優れた技術も、それだけでは社会で使われるものにはなりません。私たちは『すべての人々が生き生きとした社会』を実現するため、大学で生まれた研究成果を論文やプロトタイプで終わらせず、会社として挑戦することにしました。ユーザーの皆様とともに製品を深め、末永く愛される『製品』として社会にお届けし、あたかも前々から日常の一部であったかのように馴染む世界をつくりたいと考えております。人とロボットが手を取り、人が本来持つ能力を活かしながら必要な部分を支援する。そんな関係性を『Human Physical Intelligence』という考え方を通じて実現し、『人に優しい社会変革』を生み出したいと考えています。九州工業大学をはじめ、さまざまな企業・組織、そして実際にプロダクトを使っていただく方々と一緒に、人の身体活動を支援するロボットの全く新しい未来に向けて歩んでまいります。」
国立大学法人九州工業大学 教授 柴田 智広氏

「本研究室で培われた研究成果を社会へ届ける九工大発スタートアップとして、Human Physical Intelligence株式会社が新たな一歩を踏み出したことを嬉しく思います。人を支援するロボットの研究では、人の身体特性や行動、そして人とロボットの関係性を踏まえて技術を設計することが重要です。大学で生まれた研究成果が企業を通じて社会へ展開され、現場から得られた知見が再び研究へ還元されることで、研究そのものも発展していきます。HPIが多くの方々との共創を通じて、人とロボットが自然に協調できる社会の実現に挑戦していくことを期待しています。」
Human Physical Intelligence株式会社 会社概要
| 会社名 | Human Physical Intelligence株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役CEO 樋口 藍 |
| 所在地 | (本社)福岡県北九州市戸畑区仙水町1-1 九州工業大学 九工大未来テラス内 (研究所)福岡県遠賀郡水巻町高尾13-2 |
| 設立 | 2026年5月 |
| 事業内容 | 人の身体活動を支援するロボットおよびHuman Physical Intelligenceに関する研究開発・プロダクト開発 |
| URL | https://www.humanphysical.ai/ |
関連情報
HPIが事業化を進める技術は、九州工業大学で実施された研究成果を基盤としています。
主要関連論文
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“Designing of low-DoF robot system from low-dimensional latent space” DOI:https://doi.org/10.1186/s40648-026-00336-7
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“Effects of Gait Inducing Assist for Patients with Parkinson’s Disease on Double Support Phase During Gait” DOI:https://doi.org/10.20965/jrm.2020.p0798
関連特許
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特開2026-046939 「動作データ設計システム,ロボット設計システム,動作データ設計方法およびロボット設計方法」
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PCT/JP2026/011959 「歩行支援装置」
参考サイト
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九工大発スタートアップについて: https://www.ccr.kyutech.ac.jp/f_venture/startup.html
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2026年度Mobility for ALLプロジェクトの採択チームに関するニュースリリース: https://toyotamobilityfoundation.jp/news/0222
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「Human Physical Intelligence株式会社」を九工大発スタートアップとして支援することを決定しました: https://www.ccr.kyutech.ac.jp/themes/innovation/f_venture/notice/detail/2026-08-28.html



