自動運転を支えるAI通信技術:安定した地域交通の未来を拓く実証実験

自動運転を支えるAI通信技術:安定した地域交通の未来を拓く実証実験

運転手不足や交通空白地域の拡大が社会問題となる中、自動運転技術は持続可能な地域交通を実現する鍵として注目を集めています。特に、遠隔地から自動運転車両を監視・操作する「特定自動運行」(遠隔監視型レベル4自動運転)では、途切れることのない安定的な通信環境が不可欠です。

株式会社みちのりホールディングスとKDDI株式会社は、この課題を解決するため、AIが通信品質を自律的に最適化する先進技術を用いた通信技術実証を茨城県日立市で開始します。2026年9月1日から実施されるこの実証は、遠隔監視業務の効率化を通じて、より安全で効率的な自動運転サービスの実現を目指します。

AIが通信品質を「自律的に最適化」する画期的な技術

これまでの通信インフラ整備は、費用と時間がかかることが課題でした。しかし、本実証で活用される技術は、複数のAIが連携し、基地局の動作に影響する様々なパラメーター(設定項目)を自律的に最適化します。これにより、5G接続性や電波品質といった通信品質の向上が図られます。

このAIを活用したネットワーク高度化技術は、KDDIとKDDI総合研究所が2026年2月からすでに全国の基地局に順次導入を進めており、通信品質の安定性を25%改善し、最適化にかかる作業期間を95%以上短縮するという成果を上げています。今回の実証は、この実用化済みの技術を自動運転という特定の環境に適用し、その効果を検証するものです。

遠隔監視型自動運転の未来を確かなものに

遠隔監視型レベル4自動運転では、遠隔に配置された「特定自動運行主任者」(遠隔で自動運転車両を監視・操作する担当者)が、遠隔監視システムの作動状態を常時監視することが義務付けられています。そのため、通信が途切れることなく安定していることが極めて重要です。

本実証では、AIによる「RANパラメーター最適化」(基地局の無線アクセスネットワーク設定を調整し、対象エリアの通信品質や接続性を改善する取り組み)が、自動運転車両が走行する通信環境にどのような改善をもたらすかを検証します。具体的には、通信ネットワークの設計・調整にかかる工数の削減効果、5G接続性や電波品質の改善効果、そして通信品質と映像品質の関係を評価し、特定の遠隔監視業務における改善可能性を探ります。

先進的な自動運転に取り組む日立市での実証

今回の実証は、総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業(自動運転レベル4検証タイプ)」の一環として、日立市の協力のもと実施されます。

日立市は、2017年から「ひたちBRT」において自動運転走行実証を先行して実施しており、2026年3月からは国内最長距離の約6.1km区間を国内初の中型バスでレベル4(特定の条件下でシステムが全ての運転操作を行い、運転者の介入が不要な自動運転の段階)の商用運行実績を持つ、自動運転の先進地域です。また、政府が推進する「自動運転社会実装先行的事業化地域」にも採択されています。

実証は、ひたちBRTルートと大甕駅周回ルートの2つの自動運転ルートで行われます。

ひたちBRTルート

ひたちBRTルート

2025年2月より、国内最長6.1km区間をレベル4自動運転で営業運行しているルートです。BRT専用道区間にはバス停14箇所、一般道との交差部11箇所、横断指導線15箇所が存在します。車両には、中型車両(いすゞ エルガミオ)をベースに、LiDAR、カメラ、ミリ波レーダ、ジャイロセンサ、GPS受信装置などが搭載されています。

大甕駅周回ルート

大甕駅周回ルート

大甕駅東口から臨海工場前、大甕工場前を結ぶ約3.0kmの周回ルートで、2025年1月からレベル2での自動運転実証が行われています。小型バス車両(ティアフォー Minibus)を使用し、ひたちBRTと同様に、LiDAR、カメラ、ミリ波レーダ、ジャイロセンサ、GPS受信装置などを搭載しています。

持続可能な地域交通の実現へ

みちのりホールディングスとKDDIは、この協業を通じて、自動運転サービスの事業性、運用性、安全性を高めることを目指しています。AIによる通信最適化技術が確立されれば、通信インフラ整備のコストを抑えつつ、安定した自動運転サービスを展開できるようになるでしょう。これは、運転手不足や交通空白地域の拡大といった課題の解決に大きく貢献し、誰もが安心して移動できる持続可能な地域交通の実現につながるはずです。

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