海外産バイオメタン利用の「見えない壁」を突破
2026年8月、株式会社日立製作所と東京ガス株式会社は、国内で初めて海外産バイオメタンの利用実績を設備単位でデジタル証明するソリューション「Powered by Carbon Neutral Gas」の実証を開始しました。この取り組みは、ガスの熱需要におけるカーボンニュートラル化を大きく前進させる可能性を秘めています。
これまで、工場やオフィスで使われる温水や蒸気といった熱エネルギーの分野では、電力のように再生可能エネルギーへの転換が進んでいませんでした。石炭やガス燃焼によるCO2排出量を削減するためには、環境クレジットの購入など、帳簿上での対応にとどまることが多く、実際のガス利用状況を詳細に追跡・証明することは困難でした。
「Powered by Carbon Neutral Gas」は、この課題を解決するために開発されたデジタルプラットフォームです。海外から輸入されたバイオメタン(生物由来の有機物を発酵させて精製し、天然ガスと同程度のメタン濃度まで高めたガス)が、どの設備で、どれだけ消費されたかをデジタルデータで正確にトラッキング(追跡)し、可視化・証明します。これにより、企業は自社の熱需要が実質的にCO2排出量ゼロであるという、客観的なエビデンス(証拠)を得られるようになります。

電力分野の成功をガス分野へ応用
このソリューションの核となるのは、日立が電力の環境価値認証で培ってきた独自の需要トラッキング技術です。再生可能エネルギー由来の電力が「誰が」「どこで」「どれだけ」使用されたかを可視化するサービス「Powered by RE」の情報基盤を、ガス分野にも横展開しました。ガスメーターなどの利用データから、特定の設備でのバイオメタン消費量を正確に把握し、環境関連情報を一元管理できるデジタルプラットフォームを構築しています。
このデジタルプラットフォームを通じて、購入したバイオメタンが実際に環境価値としてどのように貢献しているかを明確に示せるようになります。本実証では、日立の企業ミュージアム「日立オリジンパーク」のガス空調設備に本ソリューションを適用し、検証が進められています。これにより、対象設備における都市ガス由来の二酸化炭素排出量が実質ゼロであることが証明され、第三者認証機関である一般社団法人パワード・バイ・アールイー認定委員会から「カーボンニュートラルガス利用証明書」も取得しています。
未来のエネルギー基盤への拡張
日立と東京ガスは、この「Powered by Carbon Neutral Gas」を将来的にe-メタン(水素と二酸化炭素を合成して製造される合成メタン)や水素、アンモニアといった次世代のカーボンニュートラルガスにも拡張していくことを検討しています。これにより、脱炭素社会を支えるエネルギー基盤としての役割を担うことを目指します。
日立は、この取り組みを「HMAX Industry」という次世代ソリューション群の一部として国内外への販売を目指しており、電力とガスの再生可能エネルギー価値トラッキング機能にAIによる発電量・需要予測などを組み合わせることで、環境価値と経済価値の双方を最適化する運用を実現するとしています。
東京ガスグループは、2050年カーボンニュートラル社会の実現を目指し、「Compass2030」ビジョンを掲げています。バイオメタンやe-メタンの導入を加速することで、熱分野の脱炭素化に貢献していく方針です。
このような技術の進化は、企業が環境目標を達成するための強力なツールとなり、持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。



