「つなぐ力」が価値を生む時代
現代の市場では、単に新しい製品や技術を生み出すだけでなく、これまで別々に存在していた要素をいかに連携させるかが問われています。これは、ギフト、物流、エネルギー、溶接・接合、観光といった多岐にわたる産業で共通して見られる現象です。
例えば、ギフトの世界では伝統的な技術と現代のライフスタイル、さらには国内外の市場をつなぐことで新たな価値が創出されています。物流業界では、人、倉庫、車両、ロボット、在庫、データを連携させることで、部分的な最適化から全体的な効率化へと進化しようとしています。エネルギー分野では、発電技術だけでなく、「つくる・貯める・運ぶ・使う」という一連のプロセスをシステムとして統合する動きが加速。製造業の基盤技術である溶接では、熟練の技術とAI(人工知能)、ロボット、そして検査のデジタルトランスフォーメーション(DX)をつなぎ合わせることで、生産性の向上と品質の安定化を目指しています。また、観光業界では、地域と旅行者、文化と体験、健康や食と旅をつなぐことで、旅行の目的そのものが多様化しています。
これらの展示会を訪れることで、各産業がどのように連携を深め、未来の市場変化に対応しようとしているのかを具体的に知る機会となるでしょう。
専門家が語る「新しいつながり」の見どころ
展示会営業マーケティング代表の清永健一氏は、今回の5つの展示会について「『何が新しいのか』以上に、『何と何をつなごうとしているのか』を見てほしい」とコメントしています。
1. 第102回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2026
開催期間:2026年9月2日~4日
会場:東京ビッグサイト
公式サイト:tshow.co.jp/tigs/102tigs/
日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の見本市であるギフト・ショーのテーマは「伝統と革新」です。ここでは、伝統工芸品が現代の生活にどのように溶け込み、海外市場とつながっていくかが提案されます。単に昔ながらの技を守るだけでなく、職人の技術や地域の物語を現代のデザインや用途に「翻訳」することで、新しい価値を生み出す試みが注目されます。例えば、国産デニムで有名な岡山県倉敷市から出展する株式会社ハート・プランニング倉敷屋のように、地域の産地性と素材の物語を日常使いの雑貨へとつなげ、年間1万点もの販売実績を持つ事例は、地域のものづくりが現代の消費者に届く具体的な形を示しています。
2. 国際物流総合展2026
開催期間:2026年9月8日~11日
会場:東京ビッグサイト
公式サイト:https://www.logis-tech-tokyo.gr.jp/ltt/

物流・ロジスティクス分野の大型専門展示会では、「知恵と技術で、物流の未来を切り拓く」をテーマに、搬送ロボットや倉庫管理システム(WMS)、輸配送管理システム(TMS)など、ハードとソフトの両面から最新技術が集結します。ここでは、個別の自動化技術だけでなく、倉庫、在庫、搬送、ピッキング、輸配送、そして「人」をデータでいかに連携させ、物流全体の最適化を図るかが焦点です。AIを活用した物流システムやフィジカルAI(ロボットが物理世界で作業を行う技術)による自動化は、人手不足が深刻化する中で、物流を止めないための重要な解決策として実用化が進んでいます。来場者は、個々の機器の性能だけでなく、それらが前後工程や他のシステムとどのように連携し、全体の効率化につながるのかを具体的に見極めることが、この展示会の醍醐味と言えるでしょう。
3. 第26回 SMART ENERGY WEEK[秋]
開催期間:2026年9月9日~11日
会場:幕張メッセ
公式サイト:https://www.wsew.jp/hub/ja-jp.html

カーボンニュートラル社会の実現に向け、水素・燃料電池、太陽光発電、二次電池、スマートグリッド(次世代送電網)など、あらゆるエネルギー技術が集まる総合展です。この展示会では、個別の発電技術を見るだけでなく、「エネルギーがどう流れるか」という全体像を捉えることが重要です。発電、貯蔵、輸送、そして利用までの一連のシステムをいかに効率的につなぐかが、持続可能な社会の鍵となります。特に今回初開催となる「[国際]熱エネルギー展」は、これまで個別のテーマとして扱われてきた「熱」の利用技術が、一つの産業として認知され始めたサインと言えるでしょう。これは、新しい産業が「メジャーデビュー」する瞬間であり、これまで見過ごされがちだった廃熱の活用など、新たなエネルギーの設計に注目が集まります。
4. 2026国際ウエルディングショー
開催期間:2026年9月16日~19日
会場:東京ビッグサイト
公式サイト:https://weldingshow.jp/2026/

溶接・接合技術の国内最大級の専門展示会である国際ウエルディングショーは、まさに「つなぐ技術」そのものをテーマとしています。今回のテーマは「未来をつむぐウエルディング・トランスフォーメーション-SMART CRAFT×DEEP TECHNOLOGY-」。ここでは、金属同士の接合だけでなく、人の熟練技能とAI、ロボット、そして加工から検査までのデジタルトランスフォーメーション(DX)をいかに連携させるかが焦点となります。「ウエルディング コミュニケーション・ゾーン」では、AIやロボットが職人の仕事を完全に置き換えるのではなく、人間だからこそできる作業と機械に任せる作業をどのように組み合わせるか、という製造現場の具体的な課題解決策が提示されるでしょう。これは、日本のものづくりが直面する「人と機械の協調」という未来の方向性を示すものです。新企画の非破壊検査・計測フォーラムにも注目が集まり、製品の安全性確保における基盤技術の広がりが示されます。
5. ツーリズムEXPOジャパン2026
開催期間:2026年9月24日~27日
会場:東京ビッグサイト
公式サイト:https://www.t-expo.jp/
日本最大級の総合観光イベントであるツーリズムEXPOジャパンは、「進化する旅のカタチ」をテーマに開催されます。従来の「有名観光地への移動」だけでなく、食、健康、スポーツ、学び、地域文化など、多様な要素と「旅」をつなぎ合わせることで、旅行の目的そのものが変化していることが示されます。新たに設けられた「ウェルネスツーリズム」(心身の健康や癒しを目的とした旅行)や「ガストロノミーツーリズム」(地域の食文化を深く体験する旅行)といったテーマは、この変化を象徴しています。会場では、「温泉×健康」「地域食×体験」「自然×教育」といった、旅と他の要素を掛け合わせた新しい旅行スタイルが多数提案されるでしょう。これは、地域の持つ資源と旅行者の多様なニーズを「つなぐ」ことで、新たな観光市場が生まれつつあることを示唆しています。
展示会から読み解く3つの市場変化トレンド
今回の展示会からは、共通して以下の3つの市場変化トレンドが見えてきます。
1. 「単品の性能」から「つないだときの価値」へ
現代の市場では、個々の製品や技術が持つ単独の性能だけでは価値を語りにくくなっています。例えば、物流の搬送ロボットも、在庫管理や受発注、輸配送と連携して初めて全体の効率化に貢献します。エネルギー分野も、発電量だけでなく、蓄電、送配電、需給調整、利用までを含めた仕組み全体が重要です。展示会では、製品単体で何ができるかだけでなく、それが「前後の工程や別のシステムと何をつなげようとしているのか」という視点で見ると、市場の変化がより明確に理解できるでしょう。
2. 「古いか、新しいか」ではなく、どう組み合わせるか
新しい技術が登場すると、古い技術や仕事が淘汰されるという議論が起こりがちです。しかし、2026年9月の展示会からは、伝統的な価値を新しい技術や市場と「つなぎ直す」という発想が強く見られます。ギフトショーの「伝統と革新」や、国際ウエルディングショーにおける熟練技能とAI・ロボットの組み合わせは、まさにその具体例です。古いものを単に置き換えるのではなく、長年培われてきた価値を新しい技術や現代のニーズと結びつけることで、新たな魅力を生み出す動きが加速しています。
3. これまで別の市場だったものが、隣り合い始めている
新しい市場が生まれる前には、これまで独立していた産業やテーマが互いに接近し始める兆候が見られます。SMART ENERGY WEEKに「熱」が独立した展示会として加わること、ツーリズムEXPOジャパンにウェルネスやガストロノミーといったテーマが設けられること、そして溶接の専門展示会でAIやロボティクスが大きく扱われることなどがその例です。これらの新設展や新ゾーン、特別企画は、市場の境界線が流動的になり、これまでニッチだったテーマが新たな産業として認知され始める「メジャーデビュー」のサインと捉えることができます。
まとめ:展示会は未来の「つながり」を示す地図

株式会社展示会営業マーケティングが実施した調査では、「AI時代に対面展示会の重要性が高まる」と回答した出展者が69.6%、来場者が67.9%に上ることが示されています。また、来場者の93.4%が今後も展示会に参加したいと回答しており、これは検索やAIで情報を得られる時代だからこそ、現場でしか得られない一次情報へのニーズが高まっていることを示唆しています。
展示会は、単に製品や技術を見るだけでなく、その背後にある「つながり」を現物で確認できる貴重な場です。ブース単体だけでなく、隣接するブースや異業種の企業がなぜ出展しているのか、という視点で会場を歩くことで、これから産業同士がどのように連携し、進化していくのかという「未来地図」を読み解くことができるでしょう。
2026年9月の展示会は、商品や技術そのものに加えて、その間に生まれる「新しいつながり」に注目することで、一歩先の市場変化を読み取る絶好の機会となるに違いありません。
関連リンク
- 株式会社展示会営業マーケティング: https://tenjikaieigyo.com/



