超音波で病変組織を狙い撃ち!「ヒストトリプシー」が拓く新しいがん治療
医療技術の進化は目覚ましく、がん治療においても患者さんの負担を減らしながら効果を高める新たなアプローチが次々と登場しています。その一つが、超音波を使った「ヒストトリプシー」という画期的な治療法です。この技術は、熱を使わずに病変組織だけをピンポイントで破壊する「非熱的組織アブレーション技術」として注目を集めています。
Research Nester Inc.の調査によると、日本のヒストトリプシー・システム市場は、2025年の90万米ドルから、2035年末には1,480万米ドルにまで成長すると予測されています。この期間における年平均成長率(CAGR)は27.8%と、非常に高い伸びが期待されています。

ヒストトリプシーとは?その「すごさ」を解説
ヒストトリプシー(Histotripsy)は、高強度の集束超音波を用いて、体内の悪い部分(病変組織)を機械的に破壊する治療技術です。従来の治療法では、熱を使って組織を焼いたり、外科手術で切除したりすることが一般的でした。しかし、ヒストトリプシーは熱を使わないため、周囲の健康な組織へのダメージを最小限に抑えられます。
この技術の最大のメリットは、メスを使わない「非侵襲的」な治療であることです。つまり、皮膚を切開することなく、体の外から超音波を当てるだけで治療が可能になります。これにより、患者さんの体への負担が大幅に軽減され、回復期間の短縮にもつながると期待されています。
市場成長を牽引する研究開発と投資
日本のヒストトリプシー・システム市場がこれほどまでに成長すると予測される背景には、充実した研究インフラと、先進的な治療法の導入への意欲があります。
具体的には、肝細胞癌や転移性肝癌の治療を目的としたヒストトリプシーの安全性や有効性を検証する臨床試験が、大阪公立大学医学部附属病院で実施されています。これは、新しい治療法が実際に患者さんに役立つかを慎重に確かめるための重要なステップです。2026年3月には、小型の肝細胞がんおよび転移性肝がんを対象とした第1/2相介入試験が行われ、グンゼメディカル株式会社が支援しています。
また、この技術への期待は投資家からも寄せられています。2026年7月には、MPower Partners Fund IIがヒストトリプシーを開発するHistoSonics社に出資しました。これは、高齢化が進み、がん患者数が増加している日本が、将来的にこの技術の重要な市場になると見込まれているためです。
医療現場と地域の連携が成長を加速
病院が中心となる理由
ヒストトリプシーのような高度な医療技術が普及する上で、病院は中心的な役割を担います。Research Nesterの分析によると、日本のヒストトリプシー・システム市場において、2035年には「病院」がエンドユーザー区分の中で67.6%と最大の市場シェアを占めると予測されています。
これは、病院が高度な診断・治療設備を備え、多様な専門医や医療スタッフが連携して治療にあたる体制が整っているためです。例えば、国立がん研究センター中央病院では、患者さん一人ひとりの遺伝子情報に合わせて最適な治療法を選ぶ「プレシジョン・メディシン(精密医療)」や、革新的な臨床試験を推進しており、新しい技術を導入する能力が高いことが示されています。
東京がイノベーションの拠点に
地域別に見ると、東京が2035年末までに日本のヒストトリプシー・システム市場において大きなシェアを獲得すると予測されています。
東京は、医療技術の事業化や、大学・研究機関と企業が協力して新しい技術を生み出す「産学連携」の拠点としての役割を担っています。日本医療研究開発機構(AMED)のような機関が、非臨床研究から実用化まで、革新的な医療機器の開発を支援するプログラムを推進していることも、東京が中心となる理由の一つです。AMEDは、AIやIoTを活用した医療機器の研究開発を推進し、高度な診断・治療やQOL(生活の質)の向上を目指しています。
東京には、日本の医療機器エコシステムに関わる主要な機関や団体が集積しており、技術開発者、医療提供者、規制当局といった多様な関係者間の連携を促進する環境が整っています。このような環境は、ヒストトリプシーのような新興技術の製品開発、市場参入、そして最終的な普及を強力に後押しすると考えられます。
将来への期待
ヒストトリプシーは、従来の治療法に比べて患者さんの負担が少なく、健康な組織への影響も小さいという大きな可能性を秘めています。現在、主に肝臓がんを対象とした研究が進められていますが、将来的には他のがん治療や、さまざまな病変組織の治療に応用されることが期待されます。
この技術がさらに進化し、より多くの医療機関で利用できるようになれば、多くのがん患者さんにとって、より優しく、効果的な治療の選択肢が提供されることでしょう。日本の充実した研究開発体制と、東京を中心とした医療産業の連携が、この未来を現実のものとすることに貢献してくれるはずです。
より詳しい市場調査レポートは、以下のリンクから入手可能です。


