重症下肢虚血(CLI)とは? 足の切断と命の危機に直結する病
重症下肢虚血(CLI)は、現在は「慢性肢虚血切迫(CLTI)」とも呼ばれる、末梢動脈疾患(PAD:心臓から離れた手足の血管が動脈硬化によって狭くなったり詰まったりする病気)の最も重い段階です。足への血流が極端に悪くなることで、安静にしていても強い痛みが生じたり、治りにくい潰瘍(傷)や壊疽(組織が死んでしまうこと)ができたりします。これは単なる「足の血行不良」ではなく、足の切断や、さらに心筋梗塞や脳卒中といった他の心血管イベントによる死亡のリスクも高める、全身性の重篤な血管疾患です。
主なリスク因子としては、糖尿病、喫煙、高血圧、高脂血症などが挙げられます。特に糖尿病の患者では、末梢動脈の障害に加えて神経障害や感染のリスクも重なるため、潰瘍から切断へと進行しやすい傾向があります。
世界の現状:約1億人が影響、高齢化が加速する患者負担
世界では、2021年時点で約1億1,370万人がPADに罹患しているとされ、そのうち約5~10%がCLI/CLTIに相当するとされています。この病気は年齢とともに発症率が急激に増加し、特に60歳を超えると有病率が急上昇、70~84歳で最も大きな負担となると考えられています。人口の高齢化が進む中で、CLIの患者数は今後も増加する可能性が高いと予測されています。
国別に見ると、米国では成人人口の約1.3%がCLIを有し、40歳以上では約200万人が影響を受けていると推定されています。英国では、CLTIが人口100万人あたり年間約500~1,000人で診断され、主に60歳以上に集中していることが報告されています。
治療の最前線:血管内治療から未来の再生医療まで
CLIの治療目標は「肢救済」、つまり足の切断を回避し、機能を維持することにあります。現在の主な治療法は、血流を回復させる「血行再建」です。これには、カテーテル(細い管)を血管に通し、バルーン(風船)で血管を広げたり、ステント(金属製の筒状の網)を留置したりする「血管内治療」や、患者自身の血管や人工血管で詰まった部分を迂回する「外科的バイパス術」があります。
また、血流を改善するだけでなく、虚血性潰瘍の適切な「創傷ケア」も非常に重要です。感染がある場合は抗菌薬やデブリードマン(壊死組織の除去)が行われます。薬物治療としては、血栓を防ぐ抗血小板薬、脂質を管理するスタチン、血糖値をコントロールする薬剤などが用いられ、禁煙などのリスク因子管理も不可欠です。
さらに、近年では、血管の再狭窄(再び狭くなること)を減らすことを目指した「薬剤コーティングバルーン」や「薬剤溶出デバイス」といった、より進んだ血管内治療技術も注目されています。そして、将来的には「再生医療」や「細胞ベース治療」といった革新的なアプローチが、既存の血行再建が困難な患者の新生血管形成(新しい血管を作ること)や組織修復を促し、切断回避に貢献する可能性を秘めていると期待されています。これらの技術はまだ研究段階であり、確立した標準治療となるにはさらなる研究開発が必要です。
2035年を見据える市場予測:切断回避が鍵
2026年から2035年にかけて、CLI/CLTIの患者数は高齢化や世界的な糖尿病患者の増加、そして診断技術の向上によって増加すると予測されています。これにより、市場は拡大するとみられますが、その成長は「切断が増えること」によってではなく、「切断を回避するための早期診断、血管内治療、創傷ケア、薬物治療」の拡大によって牽引されると考えられます。
CLIの治療は、血管造影、手術、創傷ケア、リハビリテーションなど多くの医療資源を必要とし、患者一人あたりの医療負担が極めて大きいことが特徴です。そのため、長期的なフォローアップも欠かせません。
未来への展望:多角的なアプローチで下肢と命を救う
このレポートは、CLI/CLTIを「足の切断と心血管死亡の双方に高いリスクを持つ重篤な動脈硬化性疾患」と位置づけ、その管理における中心的な課題を提示しています。それは、PAD患者が重症虚血に進行する前、あるいは早期の段階で疾患を認識すること、糖尿病・喫煙・高血圧・脂質異常症といったリスク因子を積極的に管理すること、迅速な血行再建を行うこと、創傷・感染管理を並行して行うこと、そして従来の治療が困難なケースでは再生医療などの新規治療を含めた肢救済戦略を検討することです。
2026年から2035年にかけては、CLIを「切断直前の末期PAD」として受け身で捉えるのではなく、早期診断、迅速な血行再建、創傷管理、全身的な心血管リスク低減を一体化し、可能な限り下肢と生命の双方を守る疾患として管理することが、臨床的にも市場的にも重要なテーマになるとまとめられています。
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※本記事は、株式会社マーケットリサーチセンターのプレスリリースに基づき作成されたものです。レポートの詳細内容や個別の数値については、同社にお問い合わせください。



