なぜ今、フィジカルAIが求められるのか
日本の製造業では、熟練の職人が減少し、さらに多種多様な製品を少量ずつ生産するニーズが増えています。これまでの産業用ロボットは、あらかじめ決められた動きを正確に繰り返すのが得意でしたが、力加減が必要な作業や、接触を伴う繊細な組立作業など、人手に頼らざるを得ない工程が多く残っています。
こうした状況を解決するために期待されているのが、フィジカルAIです。特に、双腕ロボットが製造組立作業を行うためのデータやAIモデルは、これまであまり例がなく、日本の製造業にとって重要な空白領域でした。
視覚・触覚・言語・動作を統合する「VTLAモデル」
ugoが開発を進めるのは、VTLAモデル(Vision-Tactile-Language-Actionモデル)と呼ばれるAIモデルです。これは、ロボットが「見る(Vision)」「触れる(Tactile)」「指示を理解する(Language)」「動く(Action)」という4つの情報を統合的に処理し、より賢く、人間に近い動きを実現するための技術です。
本事業では、製造業の組立作業に特化し、以下のプロセスをすべて国内・自社で一貫して行います。
- 触覚データを含むデータ収集キットの開発:ロボットの動作や周囲の環境だけでなく、触覚(接触による力加減など)の情報を集めるための特別な装置を開発します。
- 大規模データ収集:ugoの自社ロボット製造ラインを使い、約30万エピソード(一連の作業記録)もの高品質な製造組立データを集めます。
- VTLAモデル構築:収集したデータをもとに、視覚、触覚、言語を統合し、ロボットの適切な行動を生成するVTLAモデルを開発します。
- 双腕セミヒューマノイドへの実装・実証:開発したAIモデルを、人間に近い形をした双腕のロボット(セミヒューマノイド)に搭載し、実際の環境でその性能を検証します。
この垂直統合型の開発体制により、ugoは実用的な自律作業の実現を目指しています。

人がいない工場「ダークファクトリー」が描く未来
ugoは、自社工場での実証を足がかりに、双腕セミヒューマノイドが製造業の組立作業を自律的に行う「ダークファクトリー」の実現を目指しています。ダークファクトリーとは、少人数・省エネルギーで稼働し続ける生産ラインのことで、照明を必要としないことからその名が付けられています。
日本の製造業では、2040年には生産工程従事者で約198万人もの人手不足が推計されています。また、産業部門の電力需要は増加傾向にあり、電気料金も上昇しています。こうした人材とエネルギーをめぐる課題に対し、ダークファクトリーは限られた人員とエネルギーで生産性を維持・向上させる重要な解決策となるでしょう。
この技術はまだ開発・実証の段階ですが、将来的には他の製造業の工程にも応用され、国内製造業全体の生産性向上とGX(グリーントランスフォーメーション:気候変動問題への対応と経済成長を両立させる変革)推進に貢献することが期待されています。
国家プロジェクト「GENIAC」とugo株式会社
今回の事業は、経済産業省とNEDOが推進するGENIACプロジェクトに採択されました。GENIACは、国内の生成AIの開発力強化と社会実装の促進を目的とした国家プロジェクトであり、基盤モデルの開発に必要な計算資源やデータセットの蓄積などを支援しています。
ugo株式会社は、国産AIロボット「ugo」シリーズやロボット統合管理プラットフォーム「ugo Platform」を提供し、人手不足が深刻な現場での自動化・省人化を支援してきました。同社は、人間の動作をロボットに模倣学習させる「AIロボット向け模倣学習キット」などを通じて、フィジカルAIの社会実装に向けた取り組みを加速させています。

ugo株式会社の代表取締役CEOである松井健氏は、「製造業の現場では、人手不足と多品種少量生産への対応が待ったなしの課題になっています。本事業で得られた成果をAIロボティクスの社会実装に貢献してまいります」とコメントしています。
この取り組みが、日本の製造業が抱える課題を解決し、新たな生産のあり方を築く一歩となるでしょう。
関連リンク
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NEDOの採択結果公表ページ:https://www.nedo.go.jp/koubo/CD3_100434.html
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ugo株式会社:https://ugo.plus/


