電動二輪車市場の未来を読み解く
持続可能な交通手段として世界的に注目を集める電動二輪車。その市場は現在、どのような状況にあり、未来に向けてどのように進化していくのでしょうか。市場調査レポート「電動二輪車:市場シェア分析、業界動向と統計、成長予測(2026年~2031年)」から、その未来像を読み解きます。

市場規模と成長予測
Mordor Intelligenceの予測によると、電動二輪車市場は2026年の246億3,000万米ドルから、2031年には415億1,000万米ドルに成長すると見込まれています。この期間の年平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は11.59%と予測されており、今後も力強い市場拡大が期待されます。
セグメント分析:車両タイプ
2025年時点では、電動二輪車市場の94.71%をスクーターが占め、圧倒的な存在感を示しています。ステップスルー設計やシート下収納、軽量フレームといった特徴が、混雑した都市部の移動や宅配業務に最適であるためです。配送プラットフォームでも、ライダーが素早く乗り降りでき、サービス時間を短縮できることからスクーターが好まれる傾向にあります。
一方、オートバイは市場シェアこそ小さいものの、年平均成長率(CAGR)11.61%で拡大しています。パフォーマンスを重視するライダーが高速道路での利用やアグレッシブなスタイルを追求する動きが背景にあります。Revolt社のRV400やEmflux社の水冷式ONEといったモデルが、この高出力化のトレンドを象徴しています。
将来的には、市場は二極化すると見られています。2031年までは、大衆市場ではスクーターが引き続き主流を占めるでしょう。しかし、プレミアム層の顧客は、0-100km/h加速4秒未満や実走行距離100km以上といった高性能モデルに対して、追加費用を支払う意欲があると考えられます。バッテリーコストの低下が進めば、スポーツやツーリングカテゴリーにおける内燃機関の伝統を持つブランドも電動化市場に参入し、そのブランド価値を活用する可能性があります。
セグメント分析:モーター出力
2025年には、1.1~3.0 kW(キロワット)クラスのモデルが販売台数の39.78%を占めました。これは、コスト、車両重量、都市部での走行性能のバランスが取れているためです。60km未満の日常的な通勤に適しており、価格を重視する層にとって定番の選択肢となっています。
しかし、最も急速に成長しているのは5.0 kWを超えるクラスで、年平均成長率(CAGR)は11.67%を記録しています。これは、ASEANやラテンアメリカの規制当局がライセンシング基準を統一し、高出力スクーターが自動車と同様に幹線道路を走行できるようになったことが、この成長を後押ししています。Ather社の「450 Apex」はその代表例で、航続距離を犠牲にすることなく、信号待ちの際にもほぼ瞬時にトルク(物体を回転させる力)を提供する魅力を実証しています。
かつて中国の農村部で人気だった1.0 kW以下の低出力モデルは、バッテリー価格の下落によりコストメリットが薄れ、その存在意義が薄れつつあります。中出力(3.1~5.0 kW)セグメントは、エントリーモデルからの乗り換えを検討しつつも、大型バッテリーの価格や重量増をまだ受け入れられないライダーにとって、過渡的な選択肢となりつつあります。kWh(キロワットアワー)あたりのバッテリーコストが90米ドルを下回るにつれて、市場全体の出力クラスはさらに上位へとシフトしていくでしょう。これにより、OEM(Original Equipment Manufacturer:完成品メーカー)各社は、大衆市場の価格帯を超えずに、より大容量のバッテリーパックを搭載できるようになると予想されます。
セグメント分析:電圧
2025年時点で、60ボルトシステムが電動二輪車市場シェアの37.73%を占めていました。これは主に、その構成要素(コントローラー、充電器、バッテリーモジュール)のエコシステムが成熟しており、コスト面でも最適化されているためです。
一方、72ボルトのプラットフォームは年平均成長率(CAGR)11.71%で成長しており、3 kWの電力を供給し、最短約90分で充電完了するDC急速充電器の普及がこれを支えています。Gogoro社は、高頻度な使用に対応するため、50.4 Vのバッテリーパックを直列接続して100.8 Vを実現するなど、モジュール式構成の柔軟性を示しています。
公共充電スポットの密度向上も、電圧選択に大きな影響を与えています。これは、所有者が互換性のあるハードウェアの可用性を基準に車両を比較検討するようになったためです。かつて鉛酸バッテリーからの転換で主流だった48Vアーキテクチャは、リチウム電池技術の進化により、従来の電圧上限が解消されたことで、その地位を低下させています。実験段階にある96Vおよび120Vのプロトタイプは、まだ規格が確立されていないため、ニッチな存在にとどまるでしょう。
将来の展望
電動二輪車市場は、スクーターを中心とした手軽な移動手段としての普及と、高性能・高出力なオートバイへの需要の高まりという、二つの大きな流れの中で進化を続けています。バッテリー技術の進歩とコスト低下、そして充電インフラの整備が、この市場のさらなる成長を後押しするでしょう。
消費者の多様なニーズに応えるため、メーカー各社は航続距離だけでなく、車両の形態(フォームファクター)の拡大にも注力していくことでしょう。都市部の短距離移動から、長距離ツーリングまで、電動二輪車が活躍するシーンは今後ますます広がっていくと期待されます。
詳細レポート
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