EVバッテリーの常識を覆す:電力変換器を内部に統合する新設計
電気自動車(EV)の普及が進む中、航続距離や車両性能の向上は常に重要なテーマです。この課題に対し、韓国のINFAC社と米国Vicor社が協力し、EVのバッテリーシステムに画期的な変化をもたらす新技術を発表しました。高電圧バッテリーから車載システムへの電力供給方法を根本的に見直し、航続距離の延長と車両性能の向上を実現するものです。

従来のEV電力供給システムの課題
これまでのEVでは、バッテリーの800V(ボルト)や400Vといった高電圧を、車内のさまざまな電子機器が使える48Vや12Vといった低電圧に変換する装置「DC-DCコンバータ」が、バッテリーパックの外部に配置されるのが一般的でした。この配置にはいくつかの課題がありました。
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複雑な配線と重量: 高電圧の電力を車内各所に送るためには、太くて重い高電圧ケーブルやコネクタが大量に必要でした。
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二重の冷却システム: DC-DCコンバータは発熱するため、バッテリーパックとは別に専用の冷却システムが必要となり、これがコストや重量の増加につながっていました。
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スペースの制約: DC-DCコンバータを外部に設置することで、車両全体の設計の自由度が制限されることもありました。
これらの課題は、EVの軽量化やコスト削減、そして航続距離の延長を妨げる要因となっていました。
バッテリーパック内部へのDC-DCコンバータ統合という革新
INFAC社は、この従来の課題に対し、DC-DCコンバータをEVバッテリーパックの内部に直接組み込むという画期的な設計を採用しました。この設計は、Vicor社の高電力密度電源モジュールを活用することで実現しました。

この新設計の「何がすごいのか」「今までと何が違うのか」を専門外の読者にも分かりやすく説明します。
- 電力変換の「場所」を変える: 従来のEVでは、バッテリーから出た高電圧が車内を長く移動してからDC-DCコンバータで降圧されていました。INFAC社の新設計では、バッテリーパックを出る前に、すでに48Vの「安全特別低電圧(SELV)」に変換されます。SELVとは、感電の危険性が極めて低いと定められた電圧のことで、これにより車内配線の安全性が大幅に向上します。
- 「ゾーンアーキテクチャ」の実現: 変換された48Vの電力は、車両をいくつかの電力供給エリア(ゾーン)に分けて配電される「48Vゾーンアーキテクチャ」に利用されます。これは、高電圧ケーブルの必要性を大幅に減らし、配線をシンプルにする設計思想です。
- 冷却システムの統合: バッテリーパックには、すでにバッテリーセルを冷却するための高性能な液冷システムが搭載されています。DC-DCコンバータをバッテリーパック内部に置くことで、この既存の冷却システムを共有できるようになりました。これにより、DC-DCコンバータ専用の冷却システムが不要となり、コストと重量を削減できます。
この革新は、Vicor社の高電力密度DC-DCコンバータ「BCM6135」とレギュレータ「PRM3735」によって可能になりました。「高電力密度」とは、小さな体積で大きな電力を扱える能力のことで、これにより厳しいスペース制約のあるバッテリーパック内部への統合が実現しました。
新設計がもたらす未来のEV像
このバッテリー統合型DC-DCコンバータの設計は、EVに多くのメリットをもたらします。
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航続距離の延長: 車両全体の軽量化と電力効率の向上により、EVの航続距離が伸びます。
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コストと重量の削減: 高電圧ケーブル、コネクタ、ブラケット、筐体、そして重複する冷却部品が不要になることで、製造コストと車両重量が大幅に削減されます。
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設計の簡素化と安全性向上: 配線がシンプルになり、液漏れや電気的故障のリスクが低減されます。
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製造効率の向上: 外部インターフェースが減ることで、製造プロセスが高速化し、品質の安定化にもつながります。
この技術はすでに実用化されており、将来のEVにおいて、バッテリーパックが単なるエネルギー源ではなく、電力管理と配電の中心的なハブとなることを示唆しています。INFAC社は、この48Vゾーン電源アーキテクチャへの移行という自動車業界全体の流れに適合したバッテリーパック設計を実現しました。
関連情報
INFAC社のバッテリーパックに関する詳細なケーススタディは、以下のリンクから参照できます。
この技術は、EVの性能と効率をさらに高め、より持続可能なモビリティ社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。



