岡山大学、文部科学省「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」で20課題採択 – AIが拓く科学の未来

AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)とは

SPReAD(Supporting Pioneering Research through AI for 1,000 Discovery challenges)は、文部科学省が推進する「AI for Science」の取り組みの一環です。「AI for Science」とは、人工知能を科学研究に活用し、研究の進め方を効率化・高度化する新しいアプローチを指します。この事業は、AI利活用経験の少ない研究者も含め、人文学・社会科学から自然科学まで、あらゆる分野の研究者がAIを用いて科学研究を高度化・加速化することを目的としています。

支援は「迅速な支援」「AI導入に必要な伴走支援」「独創的研究の芽出し支援」の3つの柱で行われ、研究資金に加え、AI利活用に関するサポートや研究者コミュニティの形成も行われます。

文部科学省 SPReAD 事業概要

全国から多数の応募があったこの事業において、第1回公募では15,868件中456件(採択割合2.9%)、第2回公募では17,914件中656件(同3.7%)が採択されました。岡山大学からは、第1回公募で266件の応募から5件、第2回公募で378件の応募から15件が採択され、合計20課題という実績を残しています。特に第2回公募における同大学の応募件数は全国の研究機関の中で10番目に多く、幅広い研究分野でAIを活用し、新たな研究の可能性を追求しようとする意欲の高さがうかがえます。

SPReAD 研究計画の例

採択された注目すべき研究課題

今回採択された20課題は多岐にわたりますが、その中からいくつか代表的な研究を紹介します。これらの研究は、AIが私たちの未来にどのように貢献しうるかを示しています。

  • 医療分野の進化:岡山大学病院の井上博文臨床検査技師は、「肺癌病理画像からの核酸収量対応データセットの構築―核酸収量予測AI導入基盤の創出―」という研究で採択されました。AIが病理画像(病気の組織の顕微鏡写真)を解析することで、肺がんの診断や治療方針決定の精度が向上し、より個別化された医療の実現につながる可能性があります。

  • 植物科学と食料問題:学術研究院 環境生命自然科学学域の牛島幸一郎教授は、「塩基修飾パターンの深層学習解析による植物セントロメア構造の種間比較と6mA谷構造の検証」で採択されました。深層学習(大量のデータから特徴を自動的に学習するAI技術)を用いて植物の遺伝子構造を深く理解することで、将来的に食料問題の解決に貢献する新たな品種改良技術の開発が期待されます。

  • ロボット技術の高度化:学術研究院 環境生命自然科学学域の戸田雄一郎准教授は、「ロボット身体性に応じた3次元点群疑似ラベル生成とトポロジカルクラスタリング設計支援」に取り組んでいます。3次元点群(物体の表面を点の集まりで表現したデータ)を活用し、ロボットがより複雑な環境で賢く、自律的に動作するための基盤技術を開発します。

  • 人文学研究の新しい扉:学術研究院 ヘルスシステム統合科学学域の吉葉恭行教授は、「歴史文書群のデジタル画像化とAIによる高精度テキスト化・テキストマイニング分析法の開発」で採択されました。これにより、膨大な歴史資料をAIが解析し、これまで見過ごされてきた歴史的知見やパターンを発見するなど、人文学研究に新たな視点をもたらすでしょう。

  • 医療現場の効率化:岡山大学病院の安井雄一医員は、「働き方改革下の消化器外科におけるマルチモーダル生成AIを用いた術後管理補助システムの開発と検証」で採択されました。マルチモーダル生成AI(テキスト、画像、音声など複数のデータを統合して学習し、新しい情報を生成するAI)を活用することで、多忙な外科医の術後管理を支援し、患者ケアの質向上と医療現場の負担軽減が期待されます。

岡山大学のAI for Science推進と今後の展望

岡山大学は、長期ビジョン2050「地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学」の実現に向け、文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」や「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」などの事業を通じて、研究力・イノベーション創出力の強化を進めています。今回のSPReAD採択を契機に、AIと各研究分野との融合をさらに促進し、学生や教職員がAIを積極的に活用して新たな研究課題に挑戦できる研究環境の整備や支援を推進していく方針です。

那須保友学長は、「AI for Scienceの波は、私たち高等教育機関のみならず、人類全体に大きな影響を与えるものと感じています。科学を推進する時、人とAIの組み合わせで実施するというのが既に当たり前となっている時代において、今回のSPReADをはじめとした事業でさらに加速すると思います。他方で心理的な面も含めた安全性や科学的な正しさの検証など、課題もあります。研究開発の根幹を支える一つの組織である私たちは、事業を推進するとともにAIマネジメントにもしっかりと注力していく必要があると思います」とコメントしています。

那須保友学長

岡山大学は、AI for Scienceを通じた研究の高度化・加速化を一層推進し、開かれた地域中核・特色ある研究大学としての取り組みを継続していくとしています。

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