針を使わない革新的技術で内耳疾患治療に光
医療分野における新たな薬剤送達技術として注目される「針なしジェットインジェクション技術」が、デリケートな内耳疾患の治療に応用される可能性が示されました。株式会社ダイセルの針なしジェットインジェクション技術を用いた研究成果が、国際科学誌「Otology & Neurotology」に8月31日に公開され、mRNA医薬の内耳への低侵襲(体への負担が少ないこと)な薬剤送達デバイス開発への期待が高まっています。
針なしジェットインジェクション技術とは?
「針なしジェットインジェクション技術」とは、その名の通り、注射針を使わずに薬剤を体内に送り込む技術です。高圧のジェット噴流で薬剤を微細な液滴として噴射し、皮膚や粘膜を介して組織に到達させます。この技術の最大の利点は、針による痛みや恐怖感を軽減し、感染リスクを低減できる点にあります。

mRNA医薬と内耳疾患治療への応用
今回の研究では、新しい創薬モダリティ(治療薬の考え方や手法)として注目される「mRNA医薬」(特定のタンパク質を作る設計図となるメッセンジャーRNAを利用した新しいタイプの薬)を用いた治療薬を、針なしジェットインジェクター(開発中)で内耳に投与する応用可能性が検証されました。
「内耳疾患」とは、耳の奥にあり、聴覚や平衡感覚を司る「内耳」に起こる病気の総称です。内耳は非常にデリケートな器官であるため、薬剤を安全かつ効果的に届けることは大きな課題でした。
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)臨床生命工学チームの位髙啓史教授と、東京大学医学部耳鼻咽喉科の山岨達也名誉教授(現 東京逓信病院 病院長)らの研究グループは、株式会社ダイセルの技術を用いて、モルモットの「鼓室」(中耳の空間)内へ薬剤を投与する実験を行いました。この際、従来の注射針による投与法と比較し、薬剤の送達性能と安全性が評価されました。
その結果、針なしジェットインジェクターは、薬剤の送達性能を維持しながら、「鼓膜」(音の振動を伝える膜)の損傷と聴覚機能への影響を低減できる可能性が示されました。これは、内耳への薬剤投与における、より患者に優しい、つまり低侵襲な治療法への道を開く重要な一歩となるでしょう。
将来への期待
この研究成果は、mRNA医薬を用いた内耳疾患治療において、患者さんの負担を大幅に軽減できる、より安全で効果的な薬剤送達デバイスの開発に繋がるものです。現在、この技術は研究段階にありますが、将来的に難聴など、これまで治療が困難とされてきた内耳疾患に対する新たな治療選択肢を提供し、多くの患者さんの生活の質の向上に貢献することが期待されます。
論文情報
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掲載誌: Otology & Neurotology
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論文名: A Needle-Free Jet Injection System for Safe and Effective Intratympanic Delivery
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著者名: Yuki Terai 1、2, Toshihito Sahara 3, Takashi Hasegawa 4, Atsushi Danno 4, Teru Kamogashira 3, Tatsuya Yamasoba 5 , Keiji Itaka1,2,6
本研究内容の詳細は、大阪大学が2026年9月14日に発表したプレスリリースをご参照ください。



