テラヘルツ波で「光スキルミオン」を自在に操作!次世代通信と新技術への扉を開く

テラヘルツ波で「光スキルミオン」の生成と制御に成功

千葉大学大学院融合理工学府の三上 修作氏、伊東 莉那氏(研究当時)、同大大学院工学研究院の宮本 克彦教授らの研究グループは、テラヘルツ(THz)波を用いて、トポロジカルな偏光構造をもつ特殊な光状態「光スキルミオン」の生成と制御に成功しました。この成果は、次世代情報通信やスピントロニクスなどへの応用が期待されるテラヘルツフォトニクスの新たな展開につながるものです。

テラヘルツ波による光スキルミオン生成の概念図
*テラヘルツ波が位相制御素子や偏光制御素子を通過し、光スキルミオンを生成する光学系の概念図。

この研究成果は、2026年7月28日に学術誌『APL Photonics』に掲載されました。

「光スキルミオン」と「テラヘルツ波」の可能性

近年、光の強度や位相だけでなく、偏光(光の振動方向)まで自在に制御する「構造化光」の研究が進んでいます。その中でも「光スキルミオン」は、磁性体中のスキルミオンに似たトポロジカル(連続的な変形では変わらない幾何学的な性質)な構造を持つことから、情報通信や光と物質の新しい相互作用を実現する光として注目されています。

一方、「テラヘルツ(THz)波」は、電波と光(赤外線)の中間に位置する電磁波で、周波数は約0.1~10 THzです。物質を透過しやすい性質を持つため、非破壊検査や次世代無線通信、医療・バイオ計測などへの応用が期待されています。

しかし、光スキルミオンを生成するには、位相や偏光などを同時かつ高精度に制御する必要があり、利用できる光学素子が限られるテラヘルツ波領域での実現は大きな課題となっていました。

画期的な技術で光スキルミオンの生成と制御を実現

研究グループは、この課題を解決するため、独自の光学システムを開発しました。

  1. 独自のシステム開発: 周波数可変テラヘルツ光源と二光路干渉システムを独自に開発。
  2. スキルミオンの生成: 通常の光であるガウシアンビームと、らせん状の波面を持つ「光渦(軌道角運動量を持つ光)」を重ね合わせることで、異なるトポロジーを持つNéel型とAnti型という2種類の光スキルミオンを生成しました。
  3. 安定性の確認: 生成した光スキルミオンについて、光の偏光状態の詳細な解析と、トポロジー(ねじれ具合や巻き付き方)を表す「スキルミオン数」による定量評価を実施。テラヘルツ波においても安定したスキルミオン構造が形成されていることを確認しました。
  4. 動的な制御: 二つの光の位相差(波のタイミングのずれ)を変化させることで、光スキルミオンの偏光構造が回転する様子を観測することにも成功。これにより、光スキルミオンの生成だけでなく、その動的な制御が可能であることを実証しました。

未来を拓くテラヘルツフォトニクスへの期待

今回の研究で実証された光スキルミオンは、光の位相、偏光、そして軌道角運動量といった複数の自由度を同時に利用できるため、将来的に「大容量な情報通信」や「高感度なセンシング技術」への応用が期待されています。これらの技術は現在研究段階であり、実用化にはさらなる開発が必要です。

また、テラヘルツ波は磁性体や分子振動と強く相互作用することが知られています。この特性を活かすことで、これまでにない「光と物質の相互作用の解明」や、新しい「スピントロニクス技術(電子のスピンを利用する技術)」、「分光技術(物質の性質を光で分析する技術)」の創出につながる可能性も秘めています。

論文情報

  • タイトル: Generation of terahertz optical skyrmion by interference system.

  • 著者: Shusaku Mikami, Rina Ito, Yuto Yoneda, Kaito Sato, Aoi Yamashita, Rihito Tamura, Wataru Senzaki, Katsuhiko Miyamoto

  • 雑誌名: APL Photonics

  • DOI: 10.1063/5.0337349

研究プロジェクトについて

本研究は、以下の支援によって実施されました。

  • 日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業(JP23K23248,JP24KK0108,JP22K18979,JP23K04567)

  • JST FOREST Program JPMJFR2036 など