世界のエネルギー問題を解決へ!持ち運び可能な“黒い液体”の正体と、日本の未来を拓く新技術
長引く電気代の高騰や不安定な国際情勢、そして地震や台風といった自然災害による停電リスクなど、日本のエネルギー問題は私たちの暮らしに直結する重要な課題となっています。
東京大学 先端科学技術研究センター 水素エネルギー分野 河野研究室が行った18歳以上の男女を対象とした「日本人のエネルギーに対する認識」に関する調査では、回答者の約8割が日本のエネルギー・電力の将来に不安を感じていることが明らかになりました。

不安を感じる理由としては、「石油など化石燃料の輸入依存」(66.7%)が最も多く、「電気代の高騰」(62.5%)、「国際情勢(燃料価格や供給への影響)」(54.1%)が続いています。これらの結果から、多くの人がエネルギーの安定供給への懸念と、日常生活への経済的負担に不安を抱いていることがうかがえます。
「電力が不足している」は誤解?日本の電力事情と余剰電力の現実
電気代が高いと感じる人が約7割に上る一方で、日本の電力供給の実態については、意外な事実が知られていないことが調査で判明しました。

「日本の電力について、イメージに近いのはどちらか」という問いに対し、「電力は不足している」と回答した人が46.2%と最も多く、一方「電力は余っている」と回答した人は13.1%に留まりました。しかし実際には、特に太陽光による発電量が多い晴れた日には、発電した電力を使いきれずに、一部を意図的に抑制する「出力制御」(電力が供給過多になるのを防ぐために、発電量を一時的に減らすこと)が行われることがあります。これは、電気を大量に長期間保存することが難しく、常に需要と供給のバランスを保つ必要があるためです。
つまり、再生可能エネルギーの課題は「発電できないこと」ではなく、「発電した電気を貯めて、必要な場所で活用できないこと」にあると言えます。

この「晴れて太陽光による発電量が多い日には、作った電力の一部が使われずに捨てられている」という事実を知っていたか尋ねたところ、約6割の人が「知らなかった」と回答。日本の電力事情に関する認知が十分に浸透していない現状が浮き彫りになりました。
再生可能エネルギーに対しては、「将来の日本に必要だと思う」(52.2%)という期待がある一方で、「天候に左右される」(31.2%)、「発電量が安定しない」(29.3%)といった課題も認識されています。

このような状況の中、人々が最も魅力的だと感じているエネルギー技術は「発電した電力を無駄なく活用する技術」(28.0%)でした。また、廃棄電力の再利用技術が実用化された場合、期待する効果として「電気代の負担軽減」(50.3%)、「エネルギーの安定供給」(43.8%)、「日本のエネルギー自給率向上」(34.6%)などが挙げられています。
世界初!常温・常圧で「持ち運べる水素」が拓く未来
こうした期待に応える技術の一つとして、東京大学 河野研究室は画期的な研究を進めています。

この黒い液体が入った容器を見て、何が入っていると想像するでしょうか?調査では「燃料」「ガソリン」「化学薬品」といった回答が多くを占めました。しかし、この容器の中身は「持ち運べる水素」なのです。
何がすごいのか?従来の水素と何が違うのか?
河野研究室が開発したこの技術の最大のポイントは、水素を「常温・常圧で運べる液体」に変え、水素の「つくる・ためる・運ぶ・使う」までを一貫して実証した点にあります。これは世界初の試みです。
従来の水素は、運ぶために特別な設備が必要でした。
-
高い圧力で圧縮する
-
マイナス253℃まで冷やして液化する
これらの方法では、コストがかかり、安全面での課題も伴いました。しかし、今回の技術では、これらの課題を克服しています。
- 常温・常圧で運べる:特別な高圧タンクや超低温設備が不要になるため、より手軽で安全に水素を保管・輸送できる可能性を秘めています。「常温・常圧」とは、特別な冷却や圧縮をせず、私たちが普段生活しているような温度と圧力の状態を指します。さらに、この液体は水系で燃えにくく(不燃性)、高圧ガスや危険物にも該当しないため、取り扱いが非常に容易です。
- エネルギーを無駄にしにくい:一般的な水素の運搬方法では、水素を別の物質に変換したり、元に戻したりする過程で多くのエネルギーが失われます。しかし、この新技術では、水素を液体として直接蓄え、その液体から直接発電できるため、エネルギーをより効率的に利用できます。
- 再生可能エネルギーをもっと活用できる:太陽光や風力発電は、天候によって発電量が変動し、使いきれない「余剰電力」が発生することがあります。この余った電気を水素として長期間保存し、必要な場所・必要なタイミングで電気として使えるようになるため、再生可能エネルギーを無駄なく最大限に活用できるようになります。
将来どう役立つのか?
この技術はまだ研究段階ですが、実用化されれば、私たちの社会に大きな変革をもたらすことが期待されています。
-
再生可能エネルギーの普及促進:余剰電力を効率的に利用できることで、太陽光や風力発電の導入がさらに進むでしょう。
-
災害時の非常用電源:持ち運びやすく安全な水素は、災害時における電力供給の確保に貢献するかもしれません。
-
電気の長距離輸送:発電地から離れた場所へも効率的にエネルギーを運べるようになります。
-
カーボンニュートラルの実現:CO2を排出しない水素エネルギーの活用は、地球温暖化対策に大きく寄与します。
-
水素社会の実現:水素が社会の主要なエネルギー源となる「水素社会」の到来を加速させるでしょう。
まとめ:身近な不安の先に見えた、日本のエネルギー課題と新たな可能性
今回の調査からは、多くの日本人が日本のエネルギー・電力の将来に不安を感じていること、そして「発電した電力を無駄なく活用する技術」に高い関心を寄せていることが明らかになりました。
東京大学 河野研究室が開発を進める「持ち運べる水素」は、まさにこうした期待に応える可能性を秘めた次世代エネルギー技術です。余剰電力を新たな価値へと変え、安全かつ効率的に貯蔵・輸送できるこの技術は、再生可能エネルギーの普及を加速させ、持続可能で安心できるエネルギー社会の実現に大きく貢献することが期待されます。
調査概要
-
調査名称:「日本人のエネルギーに対する認識」に関する調査
-
調査期間:2026年6月26日(金)~2026年6月28日(日)
-
調査方法:PRIZMA(https://www.prizma-link.com/press)によるインターネット調査
-
調査人数:1,075人
-
調査対象:調査回答時に18歳以上の男女と回答したモニター
-
調査元:東京大学 先端科学技術研究センター 水素エネルギー分野 河野研究室(https://www.h2.rcast.u-tokyo.ac.jp/)
-
モニター提供元:サクリサ



