なぜ今、この技術が必要なのか?
新宿駅は「世界で最も利用者の多い駅」として知られ、駅構内、地下街、周辺ビルが立体的に繋がる非常に複雑な構造をしています。しかし、これまでの人流分析の多くは、屋外の地上空間を平面で捉えるものが中心でした。地下街や駅構内、ビルの上層階を含む「立体的な人の流れ」を都市全体で連続的に把握することは、これまで非常に困難でした。
また、建物単位ではBIM(Building Information Modeling:建物の3次元形状と属性情報を統合したデータモデル)による屋内シミュレーションが進む一方で、都市単位のGIS(地理空間情報システム:地図情報と様々なデータを結びつけて分析・表示する技術)や3D都市モデルとは扱うデータやスケールが異なり、駅と街をまたぐ全体像を同じ画面で確認できる環境は限られていました。
スペースデータは、広範囲のデータ処理に強みを持つデジタルツイン技術と、BIM・屋内地図・3D都市モデルを統合することで、この課題を解決することを目指しています。
「People Flow Simulator」の主な特徴
この新しいシミュレーターは、都市のレジリエンス(都市が災害や混乱から回復する力)を「人の流れ」の面から支えるための重要な一歩と位置づけられています。

1. 地上・地下・屋内をまたぐ、階層別の人流シミュレーション
屋上から地下4階までのフロアを切り替えながら、屋内地図や地下鉄の軌道、周辺700棟以上の建物の各フロアが切り替わり、人の流れの描写と密度が階ごとに変化します。例えば、1階では約6.4万人相当、屋上階では約4,500人相当と、実際の状況に近い形で階ごとの人口差を表現しています。
2. 実在する歩行動線に基づく、数万体規模の歩行者エージェント
新宿駅周辺の実際の街路やコンコースを結ぶ17本のOD回廊(出発地と目的地を結ぶ人の通り道)に沿って、数万体もの仮想の人間が移動します。平常時のシミュレーションに加え、東側・西側出入口の閉鎖やバリアフリー動線の制約、テロによる地下空間の被害など、特定のシナリオを設定することで、通行可能な経路の変化に応じた人流の集中や迂回(うかい)の状況を再現できます。
3. PLATEAU・地下街3Dによる、都市データの多層重畳
国土交通省が推進する3D都市モデルプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」の建築物モデル(新宿区・渋谷区+周辺8区)と地下街の3Dモデルを重ね合わせ、地下を表示する際には地表を半透明化して地下構造を立体的に確認できます。3D表示、ワイヤーフレーム表示、そして地下の人流を横から見る断面ビューの切り替えにも対応しています。
4. 実測データとの重畳比較
SNS投稿から得られた実測の人流サンプルを重ねて表示することで、シミュレーションで生成された人流の傾向が実際のデータとどの程度合致しているかを確認できます。
今後の展望と未来への活用
現在のデモンストレーションでは、公開されている統計データの傾向をもとに推計された人流データを使用していますが、このシミュレーション基盤は様々な入力データに対応できる設計です。今後は、通信キャリアの人口動態データや交通系ICカードの乗降データといった実測データと連携することで、より精度の高い人流デジタルツインへと発展させることが可能になります。
これにより、駅や地下街、大規模施設での混雑対策、イベント運営計画、都市開発における歩行者動線の検討、さらには防災訓練や避難計画の検討など、「駅と街をまたぐ人の流れ」を可視化・分析する多様な用途での活用が期待されます。
スペースデータは今後、人流データや施設データを保有する事業者、BIM・まちづくり分野のパートナーとの連携を通じて、都市デジタルツインの高度化と活用領域の拡大を進めていく方針です。
この「People Flow Simulator」の詳細やデモンストレーションのご希望については、下記のお問い合わせフォームより連絡できます。
株式会社スペースデータについて
株式会社スペースデータは、「宇宙を誰もが活用できる社会へ」というビジョンのもと、宇宙とデジタル技術を融合させることで新たな産業や社会基盤を創造するテクノロジースタートアップです。
地球や宇宙環境を精密に再現するデジタルツイン技術を活用し、宇宙開発から都市開発、防災、安全保障まで、未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を目指しています。また、宇宙ロボットや宇宙ステーションの運用基盤開発にも取り組み、宇宙社会の実現に向けて活動しています。
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