なぜ今、秘密暗号計算が必要なのか
近年、AI技術の急速な進化により、防衛・安全保障の分野でも衛星データやデジタルツインによるシミュレーション、AI解析といった大量のデータ活用が意思決定の鍵を握るようになりました。しかし、従来の暗号技術では、データを分析する際に一度暗号を解除(復号)する必要があり、その過程で情報漏洩のリスクが常に付きまとっていました。
さらに、将来的な量子コンピュータの実用化は、既存の暗号技術が持つセキュリティを脅かす可能性も指摘されています。このような背景から、機密情報を徹底的に守りながらも、その価値を最大限に引き出して活用できるデータ基盤の確立が、国家の安全保障と経済安全保障において喫緊の課題となっています。
暗号化したまま計算できる「秘密暗号計算」の衝撃
EmotionXが提供する「秘密暗号計算」は、データを暗号化した状態のまま計算や分析ができる画期的な技術です。特に、この技術の核となる「完全準同型暗号(FHE:Fully Homomorphic Encryption)」は、その中でも最も高い秘匿性を誇り、量子コンピュータの脅威にも耐えうるとされる次世代の暗号技術として、世界中で注目を集めています。
この技術はキオクシアの先端技術研究所で長年培われた研究成果を基に生み出されました。しかし、FHEは非常に秘匿性が高い反面、暗号化されたデータの量が元のデータの数千〜数万倍にも膨れ上がり、計算時間も数十万倍に増大するという実用化の大きな壁がありました。
EmotionXはこの壁を突破するため、アルゴリズム開発から専用半導体の開発までを一貫して行いました。その結果、従来約150分かかっていた秘密暗号計算処理を、現在約10分へと大幅に短縮することに成功しています。同社は今後、さらに高度な専用チップを開発することで、計算時間を数秒以下にまで短縮することを目指しており、この研究成果は2025年に米国電気電子学会(IEEE)の国際専門誌に論文として採択される予定です。
スペースデータの技術と秘密暗号計算の融合
スペースデータは、地球と宇宙を精密に再現する「デジタルツイン」技術とAI技術を基盤としており、防衛省・自衛隊の先端技術関連プログラムにも採択されるなど、防衛・安全保障領域での事業を本格化させています。同社は、情報セキュリティと秘密保護を経営上の最重要事項と位置づけています。
今回の協業では、スペースデータのフィジカルAIやデジタルツインによるシミュレーション基盤に、EmotionXの秘密暗号計算技術を統合します。これにより、機密データを暗号化したまま解析・共有できる情報環境の実現を目指し、運用ルールだけでなく技術レベルからも情報セキュリティ・秘密保護体制を強化していくとのことです。
協業の具体的な内容

両社は今回の覚書に基づき、以下の領域で協業を進めていきます。
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秘密暗号計算(完全準同型暗号)技術を活用した、防衛・安全保障分野向けセキュアデータ分析基盤の共同検討
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フィジカルAIやデジタルツイン・シミュレーションへの秘密暗号計算適用に関する技術実証
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情報セキュリティ・秘密保護体制の高度化に向けた秘密暗号計算の適用
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政府機関・防衛関連企業等に対する共同提案の検討
日本発の技術で切り拓く安全保障の未来
この協業を通じて、スペースデータは防衛・安全保障分野における情報セキュリティ・秘密保護の水準を高め、「機密情報を守りながら活かす次世代のインテリジェンス基盤」の構築に取り組みます。将来的には、陸・海・空・宇宙・サイバー・電磁波といったあらゆる領域の機密情報を、安全かつ横断的に利用できるような防衛課題への適用も視野に入れています。
フィジカルAI・デジタルツイン・シミュレーションと、国産の次世代暗号技術という日本発のテクノロジーが結集することで、わが国の安全保障と経済安全保障の強化に大きく貢献することが期待されます。
EmotionX株式会社について
EmotionXは、キオクシアの先端技術研究所で開発された完全準同型暗号(FHE)技術の実装と市場開拓を目的として、キオクシアからカーブアウトして設立されたスタートアップです。FHEの高速処理技術を核に、準同型暗号計算のクラウド基盤と専用ハードウェアを開発し、金融、ライフサイエンス、宇宙、半導体など幅広い領域で、安全かつ効率的なデータ活用の実現を目指しています。
株式会社スペースデータについて
株式会社スペースデータは、「宇宙を誰もが活用できる社会へ」という理念のもと、宇宙とデジタル技術の融合によって新たな産業や社会基盤を創造するテクノロジースタートアップです。地球・宇宙環境を精密に再現するデジタルツイン技術を活用し、宇宙から都市開発、防災、安全保障まで、次の未来を支えるデジタルプラットフォームの構築を目指しています。また、宇宙ロボットや宇宙ステーションの運用基盤開発を通じて、宇宙社会の実現に向けて取り組んでいます。
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