日本曹達とアクティブファーマが「連続フロー法」で抗リウマチ薬製造に革新!持続可能な医薬品生産の未来へ

はじめに:医薬品製造の新たな地平

日本曹達株式会社と三谷産業グループのアクティブファーマ株式会社は、東京大学の小林修特任教授らの研究チームと共同で、抗リウマチ薬「イグラチモド」の新しい製造プロセスを開発しました。これは、環境負荷を抑えつつ効率的な医薬品製造を可能にする「連続フロー法」と、金属を使わない「有機触媒」を組み合わせた画期的な技術です。この研究成果は、化学分野の国際学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載され、持続可能な医薬品生産に向けた大きな一歩として注目されています。

この取り組みは、2023年に締結された日本曹達と三谷産業グループによる「医薬・農薬製造における連続フロー法の実用化・事業化に向けた技術提携」のもとで進められた共同研究の成果です。

イグラチモドの連続フロー合成プロセス

なぜ今、新しい製造法が必要なのか?

イグラチモドは関節リウマチの治療薬として広く使われており、近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化抑制への応用も報告されるなど、その重要性が増しています。しかし、従来のイグラチモド製造プロセスは、多くの工程と大量の有機溶媒を必要とし、環境への負荷や製造効率の面で課題を抱えていました。

このような背景から、医薬品の有効成分(原薬)を製造する現場では、より環境に優しく、効率的なプロセスの確立が強く求められています。

革新的な「連続フロー法」とは?

今回の研究で中心となった「連続フロー法」は、次世代の環境低負荷型合成法として期待される技術です。これは、複数の反応装置を連結し、原料を途切れることなく流し込みながら化学反応を連続的に進める方法を指します。一度に大量の原料を仕込んで反応させる従来のバッチ式(回分式)と異なり、生産効率が高く、反応の制御がしやすいため、安全性も向上します。

特に、不均一系触媒(固体の状態で化学反応を促進し、反応後に容易に分離・回収できる触媒)と組み合わせることで、さらに効率的かつ環境に優しい製造が可能になります。

本研究では、金属を使わずに化学反応を進める有機触媒の一種である「NHC触媒」(N-ヘテロ環状カルベン触媒)をポリスチレン樹脂に固定化して使用しました。この触媒は、高い反応性と環境への負荷が低いという特長を持っています。

小林教授らが構築した連続フロー法

研究の具体的な成果とポイント

1. 高耐久性固定化触媒の開発と長時間安定運転

研究チームは、独自に設計したポリスチレン担持NHC触媒を開発し、従来の固定化触媒を大幅に上回る耐久性を実現しました。この触媒を用いることで、最適化された条件下で24時間の連続運転に成功し、約1.8gのイグラチモド前駆体を安定的に得ることができました。

また、インラインNMR(反応装置に接続し、化合物の構造や量をリアルタイムで分析する技術)を導入することで、原料の流量や温度といった反応条件を精密に制御し、長時間の安定運転を可能にしています。

2. 簡便な後処理による医薬品原薬の取得

連続フロー反応の後、酸洗浄、N-ホルミル化、再結晶といったシンプルな操作のみで、目的とするイグラチモド原薬を取得しました。出発原料からの総収率は75%に達し、医薬品原薬製造プロセスとしての有効性が実証されました。

不均一系NHC触媒とカラム反応器を用いた合成プロセス

未来への展望:持続可能な製造技術の確立へ

本研究で確立された「不均一系有機触媒×連続フロー合成」の技術は、医薬品原薬の持続可能な製造を実現するための基盤技術となることが期待されています。現在は研究段階ですが、今後、触媒のさらなる長寿命化や、スケールアップ(実験室レベルから工場での大量生産へと規模を拡大すること)に向けた検討が進められる予定です。

この技術は、イグラチモドだけでなく、他の医薬品原薬や農薬原体など、幅広い化学品の製造に応用される可能性を秘めています。この技術が実用化されれば、製造現場における廃棄物の削減、製造コストの低減、そして作業の安全性向上に大きく貢献することでしょう。

論文掲載情報

本研究成果は、アメリカ化学会(ACS)が発行する学術誌「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」に掲載されました。

論文情報:
Sustainable and Atom-Economical Continuous Flow Intramolecular Stetter-Type Reaction for the Synthesis of 3-Aminochromone Scaffold

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