シェアサイクルの「あるべき台数」をデータで導く新手法
「使いたいときに自転車がない」「返したいのに満車で置けない」。シェアサイクルを利用していて、このような経験はないでしょうか。これは、各ステーション(駐輪場所)の自転車の台数が需要と合っていないために起こる「機会損失」と呼ばれる問題です。この課題を解決するため、東京大学と三井不動産株式会社、OpenStreet株式会社の研究グループが、シェアサイクルの車両再配置を効率化する新しい手法を開発し、その効果を実証運用で明らかにしました。
現場の知恵とデータの力が融合した「ハイブリッド型」
これまでのシェアサイクル車両の再配置は、スタッフの経験や勘に頼るか、大規模なコンピューター最適化計算で厳密な巡回ルートを指示するかのどちらかが主流でした。しかし、厳密なルート指示は現場の急な状況変化に対応しづらく、大規模な計算はコストがかかるため、中小規模の事業者には導入のハードルが高いという課題がありました。
今回開発されたのは、この両者の良い点を組み合わせた「ハイブリッド型」の手法です。具体的には、
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中央(データ分析): 千葉市内約510のステーションから過去の貸出・返却データを分析。需要パターンを5種類に分類し、2時間ごとの自転車の増減を予測します。そして、将来の空車や満車を防ぐための「目標台数」と、その再配置の「優先順位」を簡便な計算で導き出します。
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現場(スタッフの裁量): 中央から送られてくる目標台数と優先順位のリストを見て、現在の台数と比較。何台の自転車をどこに動かすかを判断し、巡回ルートや順番は現場スタッフが自由に決めます。これにより、渋滞や急なステーションの状況変化にも柔軟に対応できます。
この手法のポイントは、「どこに何台動かすか」という方針をデータで示し、「どうやって動かすか」は現場に任せる点にあります。大規模な最適化計算を必要としないため、計算コストを抑えつつ、日々の業務に組み込みやすいのが大きな特徴です。

千葉市での実証運用で効果を実証
この新しい手法は、OpenStreet株式会社が運営する「HELLO CYCLING」の千葉市内ネットワークで2週間にわたる実証運用が行われました。評価指標として用いられたのは、「再配置1台あたりの機会損失回避」です。これは、再配置した自転車1台あたり、移動後6時間以内に空車や満車によって借りられなかったり返せなかったりする失敗をどれだけ防げたかを示す指標です。

実証運用の結果、提案されたハイブリッド型手法は、返却側で0.583台/回、貸出側で0.563台/回という結果を示しました。これは、従来の運用(それぞれ0.305台/回、0.071台/回)やランダムな再配置(同0.027台/回、0.104台/回)を大きく上回るものです。特に、この一覧表の指示に従って実行された再配置に限ると、さらに高い効果(返却側0.719台/回、貸出側0.732台/回)が確認されました。

この成功は、需要環境の違いによるものではなく、データに基づいた的確な指示が、これまで見過ごされがちだったステーションへの作業を促した結果であると考えられます。実証期間中の指示遵守率は76%でした。
地域交通への貢献と将来の展望
この「ハイブリッド型」の再配置支援手法は、特定の事業者だけでなく、電動キックボードやEVバッテリー交換ステーションなど、ステーション型のシェアモビリティ全般に応用できる可能性を秘めています。「いつでも借りられ、いつでも返せる」状態に近づけることで、地域住民の移動利便性を高め、シェアモビリティサービスの持続的な運営に貢献することが期待されます。
今後は、対象ステーションの拡大や季節変動への対応、さらに利用者へのインセンティブ設計との組み合わせなど、さらなる発展が課題として挙げられています。
本研究は、東京大学と三井不動産株式会社による産学協創の枠組み「三井不動産東大ラボ」の支援のもと実施されました。
論文情報
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雑誌名: Transportation Research Part A: Policy and Practice
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題名: Data-driven rebalancing support for station-based bike sharing: A hybrid centralized–distributed deployment in Chiba city
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著者名: Takahiro Ezaki*, Shin Kenjo, Akira Tazawa, Keiji Yamada, Kazuhiro Fujitsuka, Naoto Imura, Katsuhiro Nishinari



