日本のグリーン水素市場が急成長へ、2035年には160億ドル規模に拡大予測 – 脱炭素化の切り札となるか

日本のグリーン水素市場、2035年に160億ドル規模へ急拡大の予測

地球温暖化対策の切り札として注目される「グリーン水素」(再生可能エネルギーを使って水を電気分解して作られる、製造過程でCO2を出さない環境に優しい水素)の市場が、日本で急速な拡大を見せています。SDKI Analyticsの最新調査によると、日本のグリーン水素市場は2026年には約4.7億米ドル、そして2035年には約160億米ドルもの規模に達すると予測されています。この期間における年平均成長率(CAGR)は約38.7%と、非常に高い成長が見込まれています。

日本のグリーン水素市場の調査結果

なぜ今、グリーン水素が注目されるのか?

この驚くべき成長の背景には、主に3つの大きな要因があります。

1. 政府による強力な後押しと大規模投資

日本政府は、化石燃料中心の経済・社会・産業構造をクリーンエネルギー中心へ転換する「GX(グリーントランスフォーメーション)」を推進しています。その一環として、初期投資を支援する約20兆円規模の「GX経済移行債」を呼び水に、今後10年間で官民合わせて150兆円を超えるGX投資を動員することを目指しています。水素やアンモニアのサプライチェーン構築も、この広範な移行計画の重要な柱の一つです。政府からの長期的な資金供給や規制措置が、国内での低炭素水素生産や関連インフラ整備を力強く後押ししています。

2. エネルギー自給率の課題解決への期待

日本はエネルギー資源に乏しく、資源エネルギー庁の報告によると、2024年度のエネルギー自給率はわずか16.4%にとどまっています。石油、石炭、LNGといった輸入化石燃料への依存度が高く、特に原油輸入の90%以上を中東地域に頼るなど、エネルギー安全保障上の課題は深刻です。このような状況において、再生可能エネルギー電力で生み出される国産のグリーン水素は、輸入化石燃料への依存を減らし、より強靭なエネルギーシステムを構築するための戦略的な意義を持つと期待されています。

最新技術と実証の進展

日本のグリーン水素市場の成長を支えるのは、研究開発の進展と実用化に向けた大規模な実証プロジェクトです。

高効率な水素製造技術の開発

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2026年2月に「グリーンイノベーション基金」の対象として、固体酸化物形電気分解(SOEC)技術の規模拡大を目指す新たなプロジェクトを選定しました。SOEC(エスオーイーシー)は、高温で水蒸気を電気分解して水素を製造する技術で、従来の電気分解よりも高効率が期待されています。このプロジェクトでは、大型電気分解装置の開発や新材料の採用を通じて、水素製造コストの低減と技術の実用化・普及を促進することを目指しており、現在は研究開発の段階にあります。

大規模なグリーン水素製造の実証

さらに、NEDOは2025年10月に山梨県北杜市にある「グリーン水素パーク白州」で、大規模な実証運転を開始しました。この施設には、国内最大級となる16MWのPEM(ピーイーエム、固体高分子形)電気分解装置が採用されており、連続運転時には年間約2,200トンものグリーン水素を製造する能力を持っています。製造された水素は、近隣のサントリー白州蒸溜所で天然ガス熱源の一部代替として利用されており、再生可能エネルギー由来の大規模な水素製造と、それを用いた産業分野での商業的利用が実証されています。これは、小規模な試験段階から、大規模な製造および産業利用へと移行する画期的な一歩と言えます。

将来、グリーン水素が社会でどう役立つのか

生産と供給の多様化

グリーン水素の生産は、電気分解(PEM、アルカリ、SOEC)が中心となり、2035年までに市場シェアの約65%を占めると予測されています。特に、高効率なSOECや応答性の高いPEM電気分解といった技術の進化が、クリーンな水素生産を加速させるでしょう。

また、水素を効率的に運ぶためのサプライチェーンも進化しています。市場では、アンモニア輸入が予測期間中に約60%のシェアを占めると見込まれています。アンモニアは水素を大量に貯蔵・輸送するのに適しており、日本はすでに2024年に約227.3百万kgの無水アンモニアを輸入するなど、国際的なパートナーシップを通じて安定供給の確保を進めています。

産業の脱炭素化を牽引

最終用途アプリケーション別では、工業分野(鉄鋼、化学など)が2035年までに約50%と最大のシェアを占めると予測されています。鉄鋼や化学といった重工業は、多くの二酸化炭素を排出するため、水素を燃料や原料として活用することで、大幅な排出削減が期待されます。企業の「ネットゼロ」目標や、政府のグリーン・トランジション政策が、産業界における水素への需要をさらに高めることでしょう。将来的には、工場での熱源や化学製品の原料としてグリーン水素が広く使われることで、私たちの身の回りの製品がより環境に優しくなることが期待されます。

日本のグリーン水素市場を牽引する主要企業

SDKI Analyticsの調査レポートには、以下の企業が日本のグリーン水素市場における主要なプレーヤーとして記載されています。

  • Toyota Motor Corporation

  • Toshiba Energy Systems

  • Panasonic Corporation

  • Kawasaki Heavy Industries

  • JERA Co., Inc.

調査レポートの詳細はこちら

日本のグリーン水素市場に関する詳細な洞察は、以下のSDKI Analyticsのレポートでご覧いただけます。

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これらの動向から、日本がグリーン水素を通じて、エネルギー安全保障の強化と脱炭素社会の実現に向けて大きく前進しようとしていることがうかがえます。未来のエネルギー源として、グリーン水素がどのような変革をもたらすのか、今後の展開に注目が集まります。