日本のバイオガス市場、未来へ加速:高付加価値化で2035年には36億ドル規模へ
日本におけるバイオガスプラント市場が、大きな変革期を迎えています。株式会社マーケットリサーチセンターが発表した調査資料によると、日本のバイオガスプラント市場は2025年時点で20億9,000万米ドル規模と評価されており、2026年から2035年の予測期間には年平均成長率(CAGR)5.70%で拡大し、2035年には36億4,000万米ドルに達すると見込まれています。
この市場成長の背景には、バイオガスが単なる発電燃料から、より高付加価値な製品へと生まれ変わる技術の進展があります。今までのバイオガスプラントは主に発電に利用されていましたが、これからはバイオメタン、輸送用燃料、さらには化学中間体といった、より多岐にわたる用途への転換が進むことで、事業の収益源が多様化し、新たな投資を呼び込む市場環境が形成されつつあります。
今までと何が違うのか?バイオガスの高付加価値化
バイオガスは、生ゴミや家畜のふん尿といった生物由来の有機物(バイオマス)を発酵させて生成されるガスです。これまでは主に発電に利用されてきましたが、系統接続の制約や電力価格の変動といった課題がありました。
現在の市場の動きは、これらの課題を乗り越え、バイオガスをより価値の高い形に変えることにあります。具体的には、バイオガスから不純物を取り除き、天然ガスと同等以上の純度まで高めた「バイオメタン」を製造したり、これを輸送用燃料や化学品の原料として活用したりする取り組みが加速しています。
最先端技術が拓くバイオガスの未来
高純度バイオメタンの製造
技術面では、バイオガスを精製し、品質を高める「アップグレーディング」の進化が注目されています。例えば、旭化成は2025年に倉敷市の児島下水処理場で、高度バイオガス精製技術の実証に成功したとされています。この技術により、99.5%を超える回収率と97%のメタン純度を達成。下水由来のバイオガスから高品質なバイオメタンを製造し、都市ガスの導管へ注入したり、圧縮燃料として利用したりすることが可能になります。旭化成は2027年からのグローバルライセンス展開も視野に入れており、この技術が世界中で活用される未来が期待されます。
バイオ由来化学品の生産
廃棄物から化学品を生み出す動きも市場成長を支える重要な要素です。三菱ガス化学は2024年6月、新潟工場で消化ガスを原料とする国内初の商業規模バイオメタノール生産を開始しました。このバイオメタノールは、持続可能性認証を取得しており、化学産業やエネルギー分野における低炭素原料・燃料として利用できます。これは、バイオガスの価値を単なる燃焼用ガスから高付加価値な化学品へと引き上げる画期的な取り組みです。
多様な原料が支える持続可能なエネルギー
バイオガスプラントの原料は多岐にわたります。都市系バイオ廃棄物(食品廃棄物、下水汚泥など)、農業残渣(家畜ふん尿、農作物残渣)、そしてエネルギー作物などが主な供給源です。
特に都市系バイオ廃棄物は、予測期間中に年平均成長率(CAGR)6.5%で成長すると見込まれており、身近な食品廃棄物や下水汚泥を安定的なバイオガス原料として利用する動きが広がっています。例えば、相模原のバイオガス発電施設では、食品廃棄物などの都市系有機廃棄物を活用し、再生可能電力を生産するモデルが採用されています。
また、農業残渣の活用も進んでいます。2025年7月には、スズキが国連工業開発機関(UNIDO)の協力のもと、酪農関係者と連携して牛糞由来バイオガスの生産・供給体制を構築する取り組みを発表しました。これにより、農畜産廃棄物の商業利用がさらに進むことが期待されます。こうした多様な原料の活用は、特定の原料への依存を減らし、プラントの年間を通じた安定稼働を可能にします。
消化槽の方式では、含水率の高い原料に適した「湿式嫌気性消化」と、固形分の高いバイオマスに適した「乾式嫌気性消化」があります。乾式嫌気性消化は、食品残渣や紙類など高固形分原料を効率的に処理できるため、予測期間中にCAGR 6.4%で成長すると見込まれています。ORIX環境資源マネジメントの寄居バイオガスプラントでは、食品や紙を含む一般廃棄物を処理する大規模な乾式発酵施設が稼働しています。
エネルギーから燃料、そして化学品へ:広がる用途
バイオガスの用途は、発電や熱利用だけでなく、輸送用燃料としての利用が最も高い成長率(CAGR 6.9%)を示すと予測されています。高純度化したバイオメタンは、天然ガス車向けの燃料や都市ガスの代替として利用できるため、発電以外の新たな大規模需要を開拓できる可能性を秘めています。
国際的な連携も活発です。2025年12月には、TotalEnergies、TES、大阪ガス、東邦ガス、伊藤忠商事が、米国ネブラスカ州で「Live Oak」e-NGプロジェクトを共同開発する契約を締結しました。これは厳密にはバイオガスとは異なるe-メタン(再生可能エネルギー由来の電力とCO₂から合成されたメタン)のプロジェクトですが、日本のガス事業者がカーボンニュートラルガスを積極的に取り込む姿勢を示すものであり、バイオメタンを含む低炭素ガス市場全体の拡大を後押しする動きと言えるでしょう。
未来を担う企業群と競争環境
日本のバイオガスプラント市場では、単にプラントを建設するだけでなく、原料調達、バイオガス生成、ガス精製、バイオメタン化、そして燃料や化学品への転換までを一体的に提供できる事業者が優位に立つ傾向にあります。主要企業としては、TOYO ENERGY SOLUTION CO., LTD.、HoSt Holding B.V.、SAGAMIHARA BIOGAS POWER、Weltec Biopower GmbHなどが挙げられます。
これらの企業は、自治体や電力・ガス事業者、食品・農業事業者などと連携し、原料の長期的な確保と、発電、熱、輸送、化学品という複数の収益源を持つ事業モデルを構築しています。政府支援を活用した実証プロジェクトを通じて新技術のリスクを低減し、成功事例を他地域へ展開する戦略も一般的です。
まとめ
日本のバイオガスプラント市場は、廃棄物処理と再生可能エネルギー生産を同時に実現する従来型モデルから、バイオメタンやバイオメタノールなどの高付加価値製品まで含む総合的な「再生可能ガス・資源循環市場」へと進化しています。都市系有機廃棄物の活用、乾式嫌気性消化の拡大、輸送用バイオメタンへの転換は、市場平均を上回る成長が期待される分野です。発電専用モデルから複数用途を組み合わせた高収益モデルへの転換が進むことで、2035年に向けて市場の事業性と投資魅力はさらに高まると見込まれています。
詳細情報
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