軽くて強い「夢の素材」CFRP、そのリサイクルという課題
航空機や自動車の軽量化に欠かせない素材として注目されているのが、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)です。炭素繊維と樹脂を組み合わせたこの素材は、非常に軽くて丈夫という特徴を持っています。しかし、その優れた特性の一方で、使用後にリサイクルすることが難しいという課題がありました。特に、CFRPに使われる「マトリックス樹脂」(炭素繊維などの強化繊維をつなぎ合わせ、複合材料の形を保つ樹脂成分)のうち、一度固まると再加熱しても溶けない「熱硬化性樹脂」は、再利用が困難でした。このため、使用済みCFRPが増えるにつれて、効率的なリサイクル技術が求められていました。
AIが材料開発を加速!リサイクル性と強度を両立する新技術
東レは、このCFRPのリサイクルに関する長年の課題に対し、画期的な材料設計技術を開発しました。この技術の最大のポイントは、「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」(機械学習などの情報科学技術を使って材料開発を効率化する学問分野)の「機械学習」(AIの一種で、データからパターンを学習し、予測を行う技術)を活用している点です。
従来の材料開発では、リサイクルしやすさ(マテリアルリサイクル性)と、軽さや丈夫さといった「力学特性」を両立させることは非常に難しく、多くの時間と試行錯誤が必要でした。しかし、東レが開発した新しい予測モデルでは、樹脂の分子構造とリサイクル性、力学特性との関係をデータとしてAIに学習させることで、この両立を可能にするマトリックス樹脂の候補を、高精度かつ効率的に選定できるようになりました。

この予測モデルは、従来の特性予測モデルと比較して、予測精度(モデルが実際のデータのばらつきをどれくらい説明できているかを示す決定係数)を最大で約25%向上させることに成功しました。これにより、CFRP材料設計の初期段階で効率的に候補材を絞り込むことができ、実験やシミュレーションによる候補材料の評価件数を数千~数万規模で削減できると期待されています。これは、材料開発の期間を大幅に短縮し、より迅速に高性能なCFRPを市場に投入することを可能にします。
未来への貢献:循環型社会と幅広い応用
東レは現在、この新技術を活用した材料開発の実証を進めている段階です。将来的には、マテリアルリサイクルが容易なCFRPの社会実装を目指し、航空機、自動車、一般産業など、幅広い分野への展開を検討しています。この技術が普及すれば、CFRPの製造から廃棄、そして再利用までの一連のプロセスがより持続可能になり、資源の有効活用と環境負荷の低減に大きく貢献することでしょう。
なお、この技術の一部は、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「サーキュラーエコノミーシステムの構築」の一環として実施されています。
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総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)は、内閣総理大臣のリーダーシップのもと、国の科学技術・イノベーション政策を総合的に企画立案する会議です。
- 詳細はこちら: https://www8.cao.go.jp/cstp/
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戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は、府省庁の枠を超えて、社会課題解決と経済成長に貢献する研究開発を推進するプログラムです。
東レは今後、アカデミア(大学などの研究機関)をはじめとした多様なパートナーとの連携を強化し、マテリアルリサイクル性を向上させたCFRP材料の社会実装を推進していく方針です。同社は「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」という企業理念を具現化し、社会貢献とともに持続的な成長拡大を目指しています。



