新潟医療福祉大学、AIで水中運動の未来を拓く研究が文部科学省事業に採択

全国平均を上回る採択率で研究力を実証

この事業は、AI(人工知能)技術を活用して科学研究を加速・革新することを目的とした、競争的研究費制度です。全国での採択率がわずか3.7%という狭き門のなか、新潟医療福祉大学は21件の応募に対し1件が採択され、採択率は4.8%と全国平均を上回る成果を収めました。先行して実施された第1回公募でも、全国平均2.9%に対して20.0%という高い採択率を記録しており、大学の研究水準の高さと、先端医療・スポーツ科学とAIを融合させる研究開発能力が示されています。

看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉の総合大学 新潟医療福祉大学

採択された画期的な研究とは

今回採択された研究課題は、健康スポーツ学科の准教授である下門 洋文氏による「10年分の実測PIVデータとPINNの融合によるヒト水中推進デジタルツインの構築とロボティクス基盤への展開」です。

この研究は、水中で人間がどのように動いているかをAIで詳細に分析し、未来のスポーツやリハビリ、さらにはロボット技術に応用することを目指しています。

専門用語を分かりやすく解説

  • PIVデータ(粒子画像流速測定法): 水中や空気中の流れを、微細な粒子を追跡して可視化し、その速度や方向を数値データとして捉える技術です。例えば、水泳選手の手の動きが水の抵抗にどう影響するかなどを、目に見える形で詳細に分析できます。

  • PINN(物理情報ニューラルネットワーク): AIの一種で、単にデータからパターンを学ぶだけでなく、物理学の法則(例えば、水の流れの法則など)を学習プロセスに組み込むことで、より正確で信頼性の高い予測やシミュレーションを可能にする技術です。

  • デジタルツイン: 現実世界の物体やシステム(この場合は水中で動く人間の体)を、そっくりそのままデジタル空間に再現する技術です。デジタルツインを使えば、現実では難しい様々な条件でのシミュレーションや分析が、コンピューター上で可能になります。

  • ロボティクス基盤: ロボットを開発・制御するための基本的な技術やシステムのこと。今回の研究で得られるデジタルツインのデータは、水中ロボットの設計や動きの最適化に応用される可能性があります。

研究が拓く未来

この研究は、過去10年間にわたる実際のPIVデータとPINNを組み合わせることで、水中で動く人間の「デジタルツイン」を構築しようとしています。これにより、水泳選手がより効率的に泳ぐためのフォーム改善や、水中でのリハビリテーションの効果を高めるための最適な運動方法の発見につながる可能性があります。さらに、将来的には、この技術が水中探索ロボットや水中作業ロボットの設計・制御の基盤となることも期待されます。現在は研究段階ですが、水中運動の科学的な理解を深め、新たな技術開発へと発展させる可能性を秘めています。

AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)とは

「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」は、文部科学省がAI技術を活用して科学研究の高度化・高速化を図る新しい取り組みです。革新的な研究アイデアを短期間で実証し、将来的な大型研究へと発展させることを目的としています。

新潟医療福祉大学は、看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部16学科を有する医療系総合大学です。今後も、AIと各専門分野との融合による先進的な研究を推進し、社会課題の解決に貢献する研究開発に取り組んでいくとしています。