建設業界が直面する課題への挑戦
米国の建設業界では、2031年までに現在の労働力の約41%が退職年齢に達するか、それに近づくと予測されており、人材不足が深刻化しています。また、フロリダ州では12万1,000戸以上の住宅が不足し、ハリケーン被災地域の復興にも時間を要するケースが見られます。
「Autodesk Design and Make Laboratory」は、こうした課題に対し、テクノロジーを活用して、より迅速で安全、かつ効率的な建設手法の実現を目指します。研究チームによる初期段階の試験では、このラボで開発されたロボットを活用することで、従来数カ月を要していた複数住宅の骨組み施工を、週末の間に完了できる可能性も示されています。これはまだ研究段階ですが、将来の建設現場に大きな変革をもたらすかもしれません。
工業化建築に特化したロボティクス研究
この施設は、Autodeskのエグゼクティブ バイス プレジデント兼最高執行責任者(COO)であり、フロリダ大学の卒業生でもあるスティーブ・ブルーム氏による100万米ドルの寄付によって開設されました。アラジン・アルウィシー博士が率いる「Smart Industrialized Design and Construction(IDC)Lab」の新たな拠点となり、フロリダ大学のCollege of Design, Construction and PlanningとHerbert Wertheim College of Engineeringの両組織にまたがる研究活動を進めます。
多くの大学研究施設が建設ロボティクスを研究する中で、フロリダ大学の新施設は「工業化建築」に特化している点が特徴です。工業化建築とは、建設現場での作業を減らし、工場で部品を製造・組み立ててから現場で設置する建築手法のことです。
ここでは、協働ロボット(コボット)が壁の骨組み施工やパネル組立といった重量物を扱う反復作業を担当します。これにより、人間は品質管理や判断、実践的な専門知識を必要とする作業に集中できるようになり、将来の建設従事者が特に負傷リスクの高い作業を担う必要性を減らすことを目指しています。

この取り組みは、多機能ロボット、デジタルツイン(物理的なモノやプロセスの正確な仮想モデル)、オフサイト建設およびモジュール建築向けのBIM(Building Information Modeling)技術など、アルウィシー博士が6年間にわたって進めてきた人とロボットの協働に関する研究が基盤となっています。
大学院研究員のフランク・シエ氏は、Autodesk Fusion®でモデル化したデジタルツインを活用したコンピュータービジョンシステムを開発しており、ロボットが建設設計を「見て」、実世界での組立作業へと変換できるようにする研究を進めています。この研究はまだ初期段階ですが、新施設でより多くの学生がこうした技術に触れることで、今後の研究開発のさらなる加速が期待されます。

次世代の建設人材を育成し、業界のスキルギャップに対応
工業化建築は、ロボティクス、デジタルツイン、モジュール組立などを活用し、住宅建設の工程を工場環境へ移行する手法であり、労働力が減少する中でも建設能力を高められるアプローチとして期待されています。
Autodeskの「AI Jobs Report 2026」によると、学生の66%以上が「ものをつくる仕事」や「自分の手を使う仕事」に就きたいと回答しており、2024年から6ポイント増加しています。一方で、Autodeskの「2025年度版デザインと創造の業界動向調査」では、専門家の61%が「適切な技術スキルを持つ新入社員の確保が困難」と回答し、58%が「熟練人材の不足が企業の成長を妨げている」と回答しています。
「Autodesk Design and Make Laboratory」は、こうしたスキルギャップの解消に向け、学生に先進技術を使った実践的な学習機会を提供し、2兆米ドル規模の米国建設業界で求められる新たな役割を担う人材の育成を支援します。
今回の寄付は、Autodeskが2024年に行った150万米ドルの投資に続くものです。この投資は、フロリダ大学が先駆けて設置したIndustrialized Construction Engineering(工業化建築工学、通称「ICon」)学位プログラムの立ち上げを支援したもので、同プログラムは2026年秋に第1期生を迎える予定です。
また、Autodeskは2026年6月に、次世代の人材育成と教育を支援するため、3年間で3億5,000万米ドルを投じる取り組みを発表しています。この取り組みでは、新たに6,000万人の学生と教育関係者にAutodeskのプロフェッショナル向けテクノロジーを無償提供するほか、約100万人を対象にAIを活用したワークフローのトレーニングを実施し、20万人以上による業界認定資格の取得を支援します。今回のラボ開設も、未来の仕事に備える学生への継続的な投資の一環です。
工業化建築工学プログラムは、2026年秋に第1期生を迎えます。同プログラムでは、業界の専門知識、AIを活用した技術スキル、実践的なトレーニングを組み合わせ、建設分野の専門性とデジタル技術を使いこなす能力を兼ね備えた、新たなハイブリッド職種を担う人材の育成を目指します。アルウィシー博士は、今後数年間をかけて、同ラボで研究する技術を実際の建設現場への導入に近づけていく考えです。
Autodeskについて
1982年に設立されたAutodeskは、米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社を構え、現在世界約40カ国・地域で事業を展開する「デザインと創造」のプラットフォームカンパニーです。建設、製造、メディア&エンターテインメント業界における業務の効率化・自動化を促進するソリューションを提供し、より良い未来を築くべく、新たな可能性に挑戦するすべてのイノベーターを支援しています。
詳細については、Autodeskのウェブサイトをご覧ください。



