AIBTRUST、医療AIの信頼性を担保する「TRUST基盤」で米国市場へ挑戦!J-StarXプログラムFoundationalコースに採択

AIBTRUST、「J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラム」Foundationalコースに採択

医療AIの発展が目覚ましい現代において、その根幹を支えるデータの信頼性は極めて重要です。この度、AIBTRUST株式会社が、医療データの出所や利用履歴を記録することで信頼性を担保する独自の「TRUST基盤」を評価され、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)が実施する「J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラム」のFoundationalコースに採択されました。

J-StarX US Healthcare Breakthrough Program Foundational コース 採択 AIBTRUST

J-StarX US Healthcare Breakthroughプログラムとは?

J-StarXは、経済産業省が主導する起業家育成・海外派遣プログラムです。その中でも「US Healthcare Breakthroughプログラム」は、ジェトロと米国の医療機関であるMayo Clinic Platformが連携し、日本のヘルスケアスタートアップが米国市場へ進出するための事業開発、実証実験、パートナー探索、商業化を支援するものです。

AIBTRUSTが採択されたFoundationalコースは、特に米国特有の規制理解や知識習得、戦略策定、そして科学的根拠(エビデンス)の構築を実践的に支援し、グローバルに活躍するヘルスケアスタートアップの創出を目指しています。

医療AIにおける「学習データ汚染」の深刻なリスク

近年、生成AIが医療分野に導入される中で、新たな脅威として「データポイズニング(学習データ汚染)」が指摘されています。これは、AIが学習するデータに意図的に誤った情報を混入させる行為を指します。

2025年に学術誌Nature Medicineで発表された研究では、医療分野に特化した大規模言語モデル(医療LLM)において、学習トークン全体のわずか0.001%を汚染させただけで、有害な回答が増加したと報告されています。これは、1,000億トークンのうち100万トークン、おおよそ2,000本分の記事に相当する量です。さらに、汚染されたモデルが通常の性能評価では汚染されていないモデルと同等のスコアを示すことも明らかになり、一般的な方法では汚染の有無を判別しにくい可能性が示唆されています。

医療AIの出力は、診断支援や文書作成など、医師の重要な判断に関わる場面で利用されます。そのため、学習に用いられるデータの適正性を事前に確認できる仕組みが不可欠となっています。

匿名加工情報の限界とデータ来歴追跡の必要性

これまで医療データをAI開発に利用する際は、プライバシー保護のために「匿名加工情報」が用いられてきました。匿名加工は個人が特定できないように情報を加工するためプライバシー保護には有効ですが、加工の時点でデータの出所が特定できなくなります。

このため、もしデータに誤りが判明しても、本人に照会して訂正したり、汚染された特定のデータを特定して除外したりすることが非常に困難でした。AIBTRUSTは、AI開発に利用する医療データには、プライバシー保護に加え、そのデータの出所を証明できる仕組みが求められると考えています。

匿名加工情報では、データの来歴を追跡できない

AIBTRUSTの革新技術「TRUST基盤」とは

AIBTRUSTは、「医療データが循環する社会を日本から世界へ広げる」というビジョンを掲げ、医療データの信頼性を担保する「TRUST基盤」(特許第7498999号ほか)を開発しています。この基盤は、カルテ情報が医療機関内に保持されたまま、患者本人だけが持つ鍵によって利用を制御する設計となっており、以下の6つの点を担保します。

  1. 出所の証明: どの医療機関で、どの医師が診断し、いつ発生した情報かをデータ1件ごとに記録します。
  2. 本人同意の証明: 誰が、どの目的に、いつ同意したかを、検証可能な記録として保持します。
  3. 改ざん不能な利用ログ: 誰がいつ何に利用したかをブロックチェーンに記録し、事後の改ざんを防ぎます。
  4. トラストの否定: 誤りや同意の撤回が判明した際に、当該データの信頼を取り消し、その無効化情報を下流のAIモデルへ伝播させます。これにより、学習データ汚染への対策として機能します。
  5. 非匿名化のまま利用: 患者本人の同意を前提に、データはメモリ上で非匿名化のまま利用されます。国内完結で「3省2ガイドライン」に準拠しています。
  6. FHIR準拠: 返却情報を国際標準規格であるFHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)形式へ自動変換し、国内外の医療システムとの連携を容易にします。

特に「トラストの否定」は、学習データ汚染問題に対する重要な対処手段となります。誤情報の供給元を特定してそのデータのみを無効化したり、患者本人の同意撤回をその後の利用に反映させたり、診断の訂正を利用先に伝播させたりといった対応は、データの来歴が正確に記録されているからこそ可能になります。

TECHNOLOGY TRUST基盤が担保する6つの証明

AI監査に必要な5つの証跡

AIの判断根拠を後から検証するためには、学習や推論に用いられたデータを1件ずつ遡って確認できる必要があります。AIBTRUSTのTRUST基盤では、出所・本人同意・加工・学習・推論利用の5項目について証跡を記録できる設計となっています。このうち本人同意と推論・利用については、医療機関向けシステム「ヘルスインタビュー」において、同意の記録を改ざんできない形で保全し、AIへの質問と回答をログとして記録しています。

匿名加工情報を用いた場合、出所・本人同意・加工・推論利用といった重要な項目を記録できません。学習に用いたデータの適正性を証明できることが、医療分野におけるAI活用の前提となると考えられます。

世界の医療データ利用動向とAIBTRUSTの展望

米国では、患者自身が医療情報にアクセスし、その利用方法を決定できる制度の整備が進んでいます。例えば、「21st Century Cures Act(Cures Act)」は患者が自身の電子医療情報に「特別な努力なく」アクセスできることを国の政策目標としており、情報ブロッキングを違法化しました。また、「CMS-9115-F最終規則」により、Patient Access API(FHIR)が義務化されています。

欧州でも、「欧州医療データスペース規則(Regulation (EU) 2025/327)」が2025年3月26日に発効し、本人のアクセス・訂正・データ可搬の権利、および二次利用へのオプトアウト権が定められています。

一方、日本では2026年7月10日に改正個人情報保護法が成立し、統計作成などを目的とする場合に限り、要配慮個人情報についても本人同意なく第三者提供できる特例が新設されました。

AIBTRUSTのアプローチは、本人の同意に基づき来歴を証明できるデータでAIを開発するものであり、このような国内外で異なる規制環境下においてもその有効性が評価され、今回の採択に至りました。

米国市場での具体的な取り組みと未来

AIBTRUSTは本プログラムを通じて、以下の4点に取り組みます。

  1. 米国規制・制度の理解: HIPAA(米国の医療保険の携行性と責任に関する法律)、Cures Act、CMS(米国の医療保険制度を管轄する機関)規則など、日米で異なる医療データの取り扱いを把握し、TRUST基盤へ反映させます。
  2. エビデンスの構築: 来歴を伴うデータがAIの品質および監査可能性に与える効果を、米国市場で求められる形式で整理します。
  3. 事業戦略の策定: ターゲット領域、提供価値、パートナーシップ方針を具体化します。
  4. 現地パートナーとのネットワーク構築: 本プログラムを通じて得られる関係機関との対話を通じて、協業機会を探索します。

J-StarX US Healthcare Breakthrough Program 本プログラムでの取り組み

AIBTRUSTは、本プログラムで得た知見を国内のプロダクト開発や導入拡大にも還元していく予定です。国内医療機関での実装を進めながら、海外展開に向けた体制整備を並行して進め、患者、医療機関、研究開発の三者に価値が還元される医療データ流通基盤の実現を目指しています。

関連情報