サフランの香気成分「サフラナール」に食後中性脂肪上昇抑制効果を発見!未利用花部に新たな価値

高級スパイス「サフラン」の未利用部位に新たな可能性

世界で最も高価な香辛料の一つとして知られるサフラン(Crocus sativus L.)。パエリアやブイヤベースといった料理の彩りや風味付けに用いられるだけでなく、そのめしべは生薬としても利用されてきました。しかし、めしべ以外の花部はこれまで十分に活用されず、廃棄されることも少なくありませんでした。

近畿大学薬学総合研究所などの研究グループは、サフランの香気成分である「サフラナール」が、食後の血中中性脂肪の上昇を抑える効果を持つことを発見しました。この研究成果は、これまで未利用だったサフランの花部に新たな価値をもたらし、機能性食品素材としての応用や、サフラン産業の高付加価値化に貢献すると期待されています。

サフラナールが食後中性脂肪上昇を抑制するメカニズム

研究グループは、まずマウスにオリーブ油を投与して食後の血中中性脂肪(血漿トリグリセリド:血液中の脂質の一種で、食後にその値が上昇します)を急激に上昇させました。そこにサフラナールを投与したところ、中性脂肪の上昇が有意に抑制されることが明らかになりました。

この作用の詳しい仕組みを調べた結果、サフラナールは食べ物に含まれる脂質を分解する消化酵素である膵リパーゼの働きを直接阻害するわけではないことが分かりました。代わりに、食べ物が胃から腸へ送られる速度をゆっくりにする「胃排出遅延」という現象を引き起こすことで、脂質が小腸へ移行するのを緩やかにし、結果的に食後の中性脂肪の急激な上昇を抑えていることが示唆されました。これは、消化酵素の働きを妨げずに脂質の吸収をコントロールできる、ユニークな作用機序と言えるでしょう。

未利用の花部に秘められた価値

サフランの精油成分を分析したところ、サフラナールは、香辛料や生薬として利用されるめしべよりも、花全体に高い割合(めしべの精油全体で16.4%に対し、花全体では34.0%)で含まれていることが判明しました。これは、これまで手作業でめしべを取り出した後に廃棄されることが多かった花弁にも、サフラナールが豊富に含まれていることを意味します。

この発見は、サフランの未利用部位の有効活用や、収穫後の加工処理の省力化につながる可能性があります。サフラナールを豊富に含むサフランの花部が、食事由来の脂質吸収を抑制する新しい機能性食品素材として活用できる未来が期待されます。

今後の展望

今回の研究はマウスでの実験段階であり、サフラナールが持つ機能性食品素材としての詳細な作用機序の解明や、人に対する臨床的な効果を評価するためには、今後さらなる研究が必要です。しかし、この発見は、これまで価値が見出されていなかった植物資源の有効活用という観点から、サフラン産業に新たな価値を創出する大きな一歩となるでしょう。

近畿大学薬学総合研究所の森川敏生教授は、「本研究により、サフランの香気成分『サフラナール』に、食事性の脂質の吸収を抑制する機能性を発見しました。今後の、機能性食品素材への応用・展開をめざして研究を進めたいと考えています」とコメントしています。

論文情報

本件に関する論文は、天然物科学に関する学術雑誌「Natural Products: Chemistry, Pharmacology and Nutrition」にオンライン掲載されました。

  • 掲載誌:Natural Products: Chemistry, Pharmacology and Nutrition

  • 論文名:Anti-hyperlipidemic activity of safranal and comparison of chemical composition of essential oils from the whole flower, petal, and pistil parts of Crocus sativus L. originating in Oita prefecture, Japan(大分県産サフランの花・花弁・めしべ由来精油成分の比較分析およびサフラナールの血中中性脂肪上昇抑制作用)

  • URLhttps://www.npracademy.com/npcpn/articles?month=2026-08

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